放火事件から4年 京アニを代表する女性アニメーターも犠牲に 小6の息子が少しずつ受け入れ始めた「母の死」 裁判を前に青葉被告に言いたいこと「新聞に載っている被害状況だけじゃない」 2か月後に初公判 2023年07月17日
36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件から7月18日で4年となりました。
アニメーターの妻を亡くした夫と小学6年になる長男を取材。2カ月後に始まる裁判を前に4年間の想いを聞きました。
■ 妻を亡くした父子 2人きりで過ごす日々
京都府宇治市のアジサイ園で仲良く写真を撮る親子。妻を亡くした男性は小学6年の長男と2人で暮らしています。
この日は久しぶりのアジサイ園。以前、2人きりになったばかりの時も、この場所を訪れていました。
【妻を亡くした男性】
「大雨でどうでもいいって、アジサイ見て回って綺麗だったな。(気持ちが)沈んでいたっていうわけではないでしょうけど、知らず知らずのうちに1年間は“どよん”としていた」
アジサイ園は、落ち込んでいた2人の気持ちを晴らしてくれた思い出の場所です。
2019年7月18日、京都アニメーション第一スタジオが放火され、36人が死亡、32人が重軽傷を負いました。
スタジオ内でガソリンをまいて火をつけたとして、青葉真司被告が殺人などの罪で起訴されました。
青葉被告は調べに対し、「小説を盗まれたから火をつけた。京アニに恨みがあった」という趣旨の供述をしています。
■ 事件から数日後に知らされた“死”
アニメーターで、男性の妻の池田晶子さんも犠牲になりました。
人気アニメ作品「涼宮ハルヒの憂鬱」のキャラクターデザインを手がけるなど、京アニを代表するアニメーターでした。
事件から数日後、2人は晶子さんの死を知りました。夫と当時小学2年の長男は、突然降りかかった現実を受け入れられませんでした。
【池田晶子さんの夫】
「ママにお別れするために何かちょっと手紙を書いて、お供えしにいこうって。(息子は)いろいろ書いていました。『ママありがとう』とか言って。僕がもう『ごめんね』っていう一言しか」
■息子は小学6年に 少しずつ受け入れる「母の死」
あれから4年。両親が健やかに成長するよう願っていた長男は、小学6年になりました。
取材した日、親子で訪れた寺で、長男が「お願いごと」をしていました。
-Q:なにをお願いしたの?
【晶子さんの長男】
「洛南(中学校に)いけますようにって。医学部通って、人を助けられるような優しいお医者さんになるために勉強してる。ママがいなくなってからすぐは2人だけで寂しかったけど、今はもう勉強とかでパパに教えてもらって、息抜きもして…。今は楽しいかな」
長男は晶子さんの作業机で勉強するようになりました。母親の死を少しずつ、受け入れるようになったのです。
事件の後、長男が隠れて布団の中で泣いている日もありました。
晶子さんとの思い出を話すことができるようになるのにも、長い年月がかかったのです。
【晶子さんの夫】
「普通の状態に戻るまで、結果的に4年かかってしまった。もっと早くデフォルトの状態に戻るだろうと思っていたけれど、そうはいかなかった」
■まもなく始まる裁判…青葉被告に遺族が伝えたいこと
2カ月後、事件から4年あまりが経ち、ようやく青葉被告の裁判が始まります。
関係者によると、「刑事責任能力」の有無などが争点になるとみられ、法廷で青葉被告の口から何が語られるのか注目されます。
晶子さんの夫は被害者参加制度を使い、遺族として意見を述べようとしています。青葉被告にどうしても伝えたいことがありました。
【晶子さんの夫】
「あなたがやったことっていうのは数十人を殺しただけでなく、その周りの人に対しても殺してはいないけど、それに近い影響を与えているのだよ。自分のやったことは新聞に載っている被害状況だけじゃないよ。再発しないために何もできないかもしれないけれど、せめて真実を説明しなさいって」
長男は家事を手伝ってくれるようになりました。得意料理は出し巻き卵です。
【晶子さんの夫】
「手先器用なのかなあ 母親似なのかね」
さっそく、出来上がった出し巻き卵を2人で食べてみます。
【晶子さんの夫】
「(出し巻き卵の)ふわふわ感もよし。巻き巻き感もよし。味もよし。パパ100点だ、よう頑張った。自分では?」
【長男】
「100点かな」
【晶子さんの夫】
「甘いな、自分での点数づけが。かっこよく『90点』とか言っておくもんよ。でもほんまにおいしかった、ごちそうさん」
京都アニメーションが放火された事件から4年。親子は前を向いて歩み続けています。
(2023年7月17日 関西テレビ「newsランナー」放送)