26日午後1時すぎ、滋賀県長浜市野瀬町の多目的施設にある屋外プールで、小学1年の田中大翔くん(6)が溺れ、意識不明の状態で病院に搬送されましたが、死亡しました。
大翔くんはこの日、学童クラブの活動でプールを訪れていました。プールで遊ぶのをとても楽しみにしていたという大翔くん。悲しい事故は、一体なぜ起きてしまったのか。26日、学童クラブ側が会見を開きました。
【放課後児童クラブ キッズパーク 大谷琢央園長】
「大変なことになってしまい、ご家族の皆様、そして関係者の皆様に心より深くお詫びを申し上げます」
会見で、事故当時の状況についても少しずつ分かってきました。午後1時、引率の職員4人の監視のもと、44人の子どもがプールに入ります。
遊び始めてからわずか8分後。1人の子どもが、「大翔くんの様子がおかしい」と職員に伝えました。そのとき、大翔くんはロープに覆いかぶさり、すでに意識を失っていたということです。
【放課後児童クラブ キッズパーク大谷琢央園長】
「(当時は)プールに入った直後で子どもたちも自由に遊んでいました。全体を見るようにしていましたが、ただプールのロープ上で(大翔くんが)動いていないということは完全に見れていませんでした」
■身長と同じ深さのプール なぜ入った
会見の中で質問が集中したのが、大翔くんが遊んでいたプールの「深さ」です。大翔くんの身長はおよそ120センチで、プールは、深さ60センチのエリアと、120センチ前後のエリアに分かれていました。事故がおきたエリアの深さは、大翔くんの身長とほぼ同じでした。学童クラブ側は、身長や、泳ぎの経験に応じてプールの深さを分ける対応はとっていなかったということです。
【放課後児童クラブ キッズパーク 大谷琢央園長】
Q.泳げない子どもは足のつくところで遊ばせるのが適切な対応だったのでは?
「おっしゃる通りで、プールでは浮輪を持参してもいいので(どちらのプールで泳ぐかは)個人の意思に委ねていました。例年このスタンスでやっていたからいけるやろうという、自分の中の甘えがこのような大きい事件を招いてしまった。申し訳なくて…」
■水の事故防止のポイント 「子どもは静かに溺れる」
水難事故の専門家は、子ども一人一人の状態を事前に把握すべきだったのではないかと指摘します。
【明治国際医療大学 木村隆彦教授】
「子どもたちそれぞれ身長が違いますから、大プール小プールという区分の中で足が立つ人・足が立たない人がいます。大プールに入るのが適切かどうか、きちんと考えて調査をしてというのは必要だったんじゃないかなと思いますね」
夏の思い出になるはずが、起きてしまった悲しい事故。繰り返さないために、安全な楽しみ方をしっかり考えなければなりません。
今回の事故、どうすれば事故を防ぐことができたのでしょうか。ポイントのひとつが、「子どもは静かに溺れる」ということです。
溺れる人は、バシャバシャと音を立ててもがくものだというイメージを持つ人が多いと思います。しかし、水難学会の木村隆彦明教授(治国際医療大学)によりますと、これは、ある程度泳ぐことができる人が、もがいているような状況だということです。
泳げない子どもなどは、声を出すことも、もがくこともなく「一瞬で、静かに溺れてしまう」そうです。
今回の事故で亡くなった男の子は、泳げていたのかどうか、分かっていませんが、一瞬の出来事だとしたら、周りの大人が気付くのは難しかったのかもしれません。 では、このような事故をどうすれば防ぐことができるのでしょうか。水難学会の木村教授は、こう指摘します
「“監視”は“見る”だけじゃない、専門的な研修が必要」
木村教授によると、単に監視員がいるだけではダメで、監視の際にはどこを見るのか、どうやって危険を察知するのかといった専門的な知識を理解した上で行わなければなりません。子供が遊ぶプールの監視を行う人には、そういった専門的な研修が必要なのではないかということです。
今回はプールの中に2人、外に2人という監視体制で44人の子どもを見ていたということです。十分だったとは言えません。
連日続く暑さとともに水の事故が相次いでいます。子どもが水に入って遊ぶ場合は、周囲の大人が知識を持ち、余裕をもって見守る必要があります。
(関西テレビ「newsランナー」7月27日放送)