ジャニーズ性加害問題から考える「男性の性被害」の実態とは… 男性の7割以上が相談できていない現状 『性別問わず”対等ではない関係”の中で行われる性的言動はすべて性暴力』と専門家 2023年07月31日
ジャニー喜多川元社長による性加害問題をめぐり、国連が被害を訴える人たちから聞き取りを行いました。
この問題を通して「男性の性被害」の実態について考えます。
男性の性被害のカウンセリングを行っている臨床心理士の西岡真由美さんに詳しく伺います。
■13歳の時から被害に…元被害者が証言
かつてジャニーズ事務所に所属し、ジャニー喜多川氏からの性被害を受けたと訴える、大阪府豊中市の二本樹顕理(にほんぎ あきまさ)さん。
今回、二本樹さんは関西テレビの取材に対し、過去のつらい体験をお話しくださいました。
男性の性被害の実態を考えていく上で、まずは西岡さんに提言をいただきたいと思います。
【臨床心理士・西岡真由美さん】
「男性の性被害について、社会には”思い込み”があるということです。男性は性被害に遭わない、被害に遭ってもそれほど傷つかない、または抵抗ができたりする。被害を受けて気持ちよさを感じたら、それは”被害者が自ら進んで参加してる”というような思い込みがあります。これらは全て間違いです。このような間違った認識が社会にあることで、問題が明らかになりにくかった現実があると思います」
男性が男性から、あるいは女性からも性被害を受けることがあるということを理解した上で、改めて、二本樹さんがお話してくださったわけですけれども、その証言を見ていきます。
二本樹さんによりますと、13歳で被害に遭い10回ほど繰り返されたということです。
被害に遭った翌朝、ジャニー喜多川社長から1万円が渡され、それ以降、仕事が優遇されることもあったそうです。
ジャニーズJr.の中では性被害が常態化しており、つらかったが感覚がまひしていた、という話をされていました。
■女性以上に打ち明けにくい、男性の70.6%が相談できていない現状
この二本樹さんの証言を聞かれていかがですか?
【臨床心理士・西岡真由美さん】
「証言をされたこと自体、非常に心痛む体験であっただろうと思います。ご本人が証言しておられたように、断ると事務所にいられなくなる…ということがあって、とても断れない状況。嫌だったけれども拒めない状況があって、自分をまひさせながら、そういう体験を受け入れざるを得なかったのではないかと思いました」
男性の性被害の特徴を西岡さんに伺いました。
まずは、女性以上に周囲には打ち明けにくい。男性の70.6%が相談できていない現状です
【臨床心理士・西岡真由美さん】
「実際のカウンセリングの現場でも、『あの男性ですけど…』という前置きをして相談される方がいらっしゃったり。あと『ワンストップ支援センター』にも、男性は全体の10パーセントしかいないという状況があります。男性はとても相談しにくい状況があることが感じられます」
“男性だから…”という偏見があると、被害を訴えても理解してもらえないと思ってしまうのでしょうか?
【臨床心理士・西岡真由美さん】
「そうですね、”男性だったら抵抗できるだろう”というような思い込みがあって、相談をしても信じてもらえない、笑われてしまうとか。傷つくようなことを言われてしまうんじゃないか…とか。『2次被害』と言うのですが、そういう恐れがあって相談できないという現実があると思います」
二本樹さんの場合はどうなのでしょうか?
【関西テレビ 加藤さゆりデスク】
「20代後半になって初めてカウンセリングを受けたそうです。それまでは親も含め、誰にも相談できなかったそうです。『男性だから強くなきゃいけない』という思いがあるので、被害を言うことは許されないんじゃないか、という空気感を感じて言えなかったと。あと、トラウマを抱えておられるので、取材中も時折、体をこわばらせるといいますか…、表情も固くなられて本当につらい経験をされたんだなということが、ひしひしと伝わってきました」
ジャニーズ事務所の性加害問題は今後、どうなっていくのでしょうか。
国連は今回のヒアリングを経て会見をする予定です。
政府は、今回の問題を受け9月をメドに「男性・男児のための性暴力被害者ホットライン」「文化・芸術分野で活動する子どもら対象の相談窓口」をスタートさせる予定です。
そして、ジャニーズ事務所は、「再発防止特別チーム」の提言をうけ日程などは不明ですが、今後の対応について、会見を行う予定です。
二本樹さんはジャニーズ事務所に対しては、どのような対応を望んでおられますか?
【関西テレビ 加藤さゆりデスク】
「現時点で、被害者への事実認定や謝罪がないので、まずはそこをやってほしい、その上で救済措置を取ってほしい。なによりもウヤムヤにしないでほしい、ということでした。名前を出して訴えていらっしゃるのでその勇気も分かってほしいと思いますし、『ほんとに真摯な対応をしてほしい』とおっしゃってました」
西岡さんは、事務所にはどう対応してもらいたいですか?
【臨床心理士・西岡真由美さん】
「まず事実認定ですね。社会的な影響力の大きい企業ですので。どういう経緯で、何が起こったのかということを明らかにして、それを公表する。同時に、当事者の方の思いも尊重しながら進める必要があるかなと思います」
神崎デスクは、いかがでしょう。
【関西テレビ 神崎博デスク】
「週刊誌報道が出て、裁判にもなり、一部性被害が認定されています。メディア側も被害の実態をより早く知っていれば、ここまで被害が拡大していなかったのかもしれません。この事実に事務所がどう向き合うのか?発表を待つ形にはなりますけども、今後、私たちの対応も考えていかないといけないと思います」
■”対等ではない関係”の中で行われる性的言動はすべて性暴力
ここで視聴者の皆さまから質問が届きました。
Q.どこからが性被害なのかのラインがよく分からないのですが、基準・線引きなどはあるのですか?
【臨床心理士・西岡真由美さん】
「本当に性別問わず、”対等ではない関係”の中で行われる性的言動はすべて、性暴力という風に考えていいと思います」
もう一つ質問が届きました。
Q.性被害に遭ってしまった男の人は、大人になった時、恋愛などで悩むことがあるのでしょうか?
【臨床心理士・西岡真由美さん】
「これまでの研究などで明らかになっていますが、例えば加害者が男性であった場合に、(被害を受けた男性は) 自分の性志向について悩んだりすることがあると言われています。あとは人と深い関係を持つこと自体に二の足を踏んでしまうっていうことがあります」
今、まさに男性の性被害で悩んでおられる方は、「性犯罪被害者のためのワンストップ支援センター」にご相談ください。
全国共通で#8891です。
ここにかけると、最寄りのセンターにつながるそうです。
【臨床心理士・西岡真由美さん】
「あなたは悪くありません。 個別性の大きい問題ではありますが、一人で抱えずに、お話しできる人やワンストップセンターなどにご相談いただければと思います」