「室内だから安全」は間違い 後遺症の恐れも 油断しないで「室内の熱中症」 対策は適切なエアコンの使用と水分補給 「のどが渇く前にこまめに水を飲む」 2023年08月03日
連日の暑さに伴い増えているのは熱中症の救急患者です。 先週、熱中症で救急搬送された人の数は、全国で1万1765人。その半数以上が高齢者でした。注目すべきは、全体の4割を超える人が「住居」にいたことです。
だからこそ、室内の熱中症にも十分注意していただきたいと思います。
何で危険なのかも含めて、熱中症にならないための対策を兵庫医科大学病院の医師で熱中症について詳しい服部益治医師に説明してもらいます。
この命に関わるような、危険な室内熱中症ですが、なぜ室内なのに危険なのか見ていきましょう。
室内熱中症には2つの誤解があるということなんです。
■誤解① 日射病と熱中症は違う
まず一つ目の誤解は、室内だから大丈夫というものです。
大阪府では2022年、熱中症で亡くなった方のうち85.5%が自宅の中でなくなっているということなんです。そして、その内の約9割、ほとんどの方がエアコンを使っていなかったそうです。
このデータを見ても「室内だから安心」じゃないっていうことですよね。
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「そうですね。昔は 日射病と言って『太陽の下にいると危険ですよ』という時代が10年以上前にあったんです。 今は日射病ではなくて熱中症、熱に体が当たってしまってるという形になりますので、それは外じゃなく室内であっても、非常に危険な時代になったという認識が必要だと思います」
ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問です。
Q.扇風機だけの方が寝やすい けど エアコンはつけた方がいいですか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「地球温暖化ではなくて地球沸騰時代という言葉がありますよね。沸騰ということは、どういうことかと考えると、昔のライフスタイルは、今では通用しなくなっているのではないかと思う」
エアコンは必要ないよ、嫌いだよという方もいらっしゃるんですけど…
【関西テレビ 加藤報道デスク】
「ご年配の方が冷房をつけると、例えば体がだるくなるとか、昔、冷房病なんてよく言われましたが、実はエアコンの方も進化していて、例えば昔だったら結構、冷えすぎたりとかあったと思うんです。今はセンサーが発達しているので、部屋中がまんべんなく一定の温度が保たれます。乾燥を懸念される方もいますが、湿度も保たれるようになっています。電気代を心配される方も多いですが、10年前の機種と今の最新の省エネ機種と比べると、電気代は10%以上、今の機種の方がお得に、安くなっています。そのような新しい機種に買い替えたら、今、思ってることは変わるかもしれません」
適宜エアコンは使うようにしていただきたいです。
そしてもう一つ室内熱中症の誤解があるんです。
■誤解② 熱中症は咳、喉の痛みなどの症状はない
2つ目の誤解は熱中症になっているにも関わらず、風邪だから大丈夫と思ってしまうことです。倦怠感、頭痛といった症状は、熱中症と風邪で似ていますが、熱中症に咳や喉の痛み、鼻づまりなどの症状はありません。
室内でちょっと体調が悪いなと思ったら、風邪かなとまず思ってしまいます。
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「今、コロナの第9波で、まさに風邪の代表が流行っていますけど、これは明らかに喉の症状、喉が痛いとか咳が出るとか、ちょっと鼻水が出ることがあります。熱中症で咳が出る、 鼻水が出ることありませんので、その点で見極めたら良いと思います」
体調が悪い中にも、熱中症も可能性としてあるということを教えてくださいました。
さらに、この熱中症の危険性についてどうしても伝えたいことがあるということです。
■熱中症には怖い後遺症も
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「熱中症というのは、どこに一番ダメージが来るのかと言ったら、脳、なんですね。熱中症はもちろん 搬送されても助かる場合もありますけども、残念ながら亡くなる方もいらっしゃる。ただ、この両極じゃなくて 真ん中、助かったけども、脳の後遺症で麻痺を起こしたりして、元の生活に戻れないという。熱中症は、その真ん中もあるということはぜひ、認識していただきたいと思います」
当然、命に関わるものだけど、それだけではない。対策していかなければなりませんね。
どのような対策方法があるのかみていきましょう。
■対策① 暑さ指数を確認する
・熱中症計を使う。
気温や湿度などから暑さ指数を出して、警戒レベルを判定して危険だと教えてくれます。厳重警戒というところで目がグルグルしているマークがあったり、色で分かりやすくなっていたり、アラームで知らせてくれるものもあるそうなんです。安価なものですと1500円ぐらいから購入できます 。
熱中症っていうのは、暑さとかの感覚に頼るんじゃなくって、こういう客観的な指標があるといいよということなんですね。
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「そうですね。やはり、気温だけじゃなくて暑さ指数ですね。湿度も大事だし、場合によっては直射日光があるかないかも重要。熱中症計の数値で自分の今いる場所が安全、注意、危険というのを目で認識された方がいいと思う」
気温だけではなくて湿度なんかもあったりするんで、そのあたりでどれぐらい危険なのかを数字で出すと分かりやすいですよね。
■対策② こまめな水分補給をする
・こまめな水分補給が大切です。1時間おきにコップ1杯ほどの水を飲む。
・アルコールや緑茶などはあまり良くない。
・寝る時も夜寝る前と起きた後、朝に200mlの水を飲む。
たくさん飲まなきゃいけないかな っていう印象なんですけど これぐらい必要だっていうことなんですね。
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「こまめに飲むということが一番体にとって優しく水分が体に入るということですね。ですから、お昼ごはんを食べて、1時、2時、3時の時に、100mlくらいだったらご高齢者も割と飲めると思います。こまめに取っていただくとともに取った水分が体に残るというのが大事なんで、例えばカフェインがあったり、アルコールの入ったものは血液循環を良くして利尿作用、おしっことして出してしまう作用があるんですね。水とか、夏なので麦茶、麦茶はカフェイン入っておりませんので、100mlくらいであればすっと飲んでいただけると思うので、こまめに飲んでいただくと体に水分がしっかり残ります」
そして寝るときも大事なんですね。
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「我々は寝ている間に400ml~500mlくらい水分を失うといわれています。どこで失っているかというと、一番は汗ではなく息で失います。息を鏡やガラスに向かってはぁとすると曇るように、水蒸気が出ています。当然 寝てる間も息をしてますので、かなり水分を失います。寝る前にとりあえず200ml、起きたらすぐに200ml取ると、何とか400mlは確保できると。これを怠ると何が起きるかというと、寝てる時に熱中症、脳梗塞、心筋梗塞という本当に命に直結する状態を起こしてしまいます」
寝る前に飲むと”トイレ行く機会が増えるから嫌だな”とか思うんじゃなくて、もっと怖いことが待ってるよ って思った方がいいですよね。
ここでまた関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問です。
Q.のどが渇いていなくても水分補給は必要なんでしょうか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「乾いてから飲むということは、 少しずつ、水分補給が後回しになってきてるはずなんですね。時間を確認しながら、1時に飲んだら、次は2時、という感じで。こまめな水分補給だと水分が体に残りまして、その水分がいらなくなったら尿に出るので、腎臓にとっても非常に優しい飲み方です」
ご高齢の方に関わらず、室内で過ごしていても危険なんだという認識をもって、対策をしっかりと講じて暑さを乗り切っていただきたいです。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月2日放送)