9月5日から始まった京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判。青葉被告本人に対する被告人質問が11日も行なわれました。犯行動機に直接影響した「闇の人物」について詳細に語られました。
■京アニ作品を見て小説を書き始めた
【弁護人】
「小説を書き始めた目的は何ですか?」
【青葉被告】
「仕事がその都度不安定で、小説に全力を込めれば、暮らしていけるのではないかと思いました」
京都アニメーション放火殺人事件の裁判。青葉真司被告(45)本人への被告人質問が9月11日も行われ、青葉被告が犯行に至るまでの経緯が少しずつ見えてきました。
4年前、京都市伏見区の京都アニメーション第1スタジオにガソリンをまいて放火し、36人を殺害した罪に問われている青葉被告。逮捕された時には犯行の動機について京アニに自分の書いた「小説を盗まれたから」と語っていました。
11日の裁判で青葉被告は職を転々とした後に無職になり、生活保護を受給していたと話し、何に対してもやる気が起きない中で、小説を書き始める出来事があったと明かしました。
【弁護人】
「1日をどう過ごしていましたか?」
【青葉被告】
「昼夜逆転の生活になり、あの時に京都アニメーションのアニメを初めて見て、小説を書き始めました」
【弁護人】
「そのアニメは?」
【青葉被告】
「涼宮ハルヒの憂鬱です」
【弁護人】
「1日のうちに小説を書く時間は?」
【青葉被告】
「考える時間は24時間365日です」
京アニの作品をきっかけに小説家を志したという青葉被告。その後、自らが書いた小説を京アニのコンクールに応募しようと考えたといいます。
【青葉被告】
「京アニ大賞がまだ立ち上がったばかりで、ある程度意見として出せるはずなので、自分で前例を作れる、足跡を作れると思いました」
強まっていく京アニへの思い。
しかし、その思いが徐々に変化していきます。青葉被告はインターネットの掲示板でやり取りを重ねた人を京アニの監督だと思い込みます。 そして、その人物とインターネット上で口論するようになり、下着を盗むなどして逮捕された前科を指摘され、「これ以上小説は書けない」と悲観的になった末、コンビニ強盗事件を起こしたと明かしました。
■犯行動機につながる? “闇の人物”
さらに今回の犯行動機に直接影響した「闇の人物」という存在を認識するようになった経緯も青葉被告の口から語られました。きっかけは自分の過去の行動を知る人が刑務所にいたことなどから、「警察の公安部に後をつけられていたのではないか」と思ったという話からでした。
【弁護人】
「公安部に指示したのは誰ですか?」
【青葉被告】
「闇の人物。ナンバー2。闇の世界に生きているようなフィクサーみたいな人です。海外に人脈があって、ハリウッドとかシリコンバレーに人脈がある世界で動いているような人。官僚とかそういうレベルにも人脈がある人」
青葉被告を監視するため“闇の人物”が糸を引いていたという自分自身の考えを語りました。
弁護側は初公判で事件の犯行動機として、「この事件は青葉被告をもてあそぶ闇の人物への反撃」と主張し、当時は妄想による影響で責任能力がなかったなどと主張しています。
またこの闇の人物と直接関係があるのか問われると…
【弁護人】
「(闇の人物を)見たことがありますか?」
【青葉被告】
「一度だけちらっとあります」
【弁護人】
「どこで見ましたか?」
【青葉被告】
「刑務所の中に紛れ込んでいました。詳しいことは分からないのですが、知らない人がいるので誰なんだろうと思った記憶があります」
一方で検察側は、妄想に支配された犯行ではなく、「小説のアイデアが盗まれたと一方的に思い込み、筋違いの恨みによる復讐」として責任能力があったと主張しています。 弁護側の被告人質問は、13日も続き、事件当時の状況などが語られるとみられています。
■記者リポート 身振り手振りを交えて話す青葉被告
–Q:青葉被告の様子は?
【越後みなみ記者リポート】
「午後4時前に裁判が終わりました。裁判の最後で青葉被告が小説を盗まれたと主張している部分について、実際に京アニ作品の映像が流され、青葉被告が確認する場面もありました。きょうの弁護側の2回目の被告人質問では、青葉被告は終始、身振り手振りを交えながら話していて、証拠が示されると、やけどで自由が利かない手ながらもタブレットを持つ様子も見られました。証言台ではいきいきと話していた一方で、職員に車いすを押されて移動するときには少し下の方を見つめ検察側や傍聴席に目をやることはなく、人と目を合わせないようにしているのではないかといった印象を持ちました」
「被告人質問で、小説を書き始める前後の生活状況などについて問われると、青葉被告は当時の経済情勢や時事についての豊富な知識を交えながら饒舌に話していた一方で、何が事実でどこから彼の妄想なのかわからない回答も多くありました」
–Q.きょうの被告人質問では何か事件につながるような発言はありましたか?
【越後みなみ記者】
「弁護側は冒頭陳述で、犯行動機に影響したとされる“闇の人物”の存在をあげています。弁護側は、事件は『被告の人生をもてあそんだ闇の人物への反撃だった』と主張しているんですが、青葉被告本人の口から初めて、この存在について話す機会がありました。闇の人物は海外に人脈があり、警察の公安部に指示できるような人物と話していて、刑務所に入っていた時に『闇の人物』を見たことがあるという話もしていたのですが、見た目など具体的な部分は出てきませんでした」
今後、この人物がどう事件に関わっていくのか今後の裁判でも注目されます。
■「闇の人物」言及にある弁護側の意図とは
11日の京アニ放火殺人事件の裁判で、青葉被告は犯行動機の一部となった“闇の人物”について、「海外に人脈があって、ハリウッドとかシリコンバレーに人脈がある世界で働いているような人。闇の世界で生きているフィクサーみたいな人」だと話しました。
–Q:このような発言を法廷でするというのはどのような意図があるのか?
【関西テレビ 神崎博報道デスク】
「普通に考えると、ちょっと理解できないというか意味が分からないことがあると思うんです。これは実は弁護側の戦術の一つで、弁護側としては、この青葉被告の責任能力がないよ、妄想に支配されて犯行に及んだので、全く責任能力がないので“無罪”ですよ、というのを主張しているわけです。法廷の中で、特に裁判員に向かって、理解できない、辻褄が合わないようなことを主張させていって、『被告に責任能力はないんだな』という印象をつけないといけないので、弁護側としては、こういった意味の分からないことを続けるというのが一つの戦術としてあると思いますね」
検察側の質問は14日から予定されています。
(関西テレビ「newsランナー」2023年9月11日放送)