2017年に大阪市東淀川区の自宅で、2歳の娘の頭に何らかの暴行を加えて死亡させた罪などに問われ、一審で実刑判決を受けた父親の二審の第3回公判が26日に大阪高裁で開かれました。
頭蓋内出血の原因をめぐり、法廷で証言した検察側と弁護側双方の放射線科医2人の間で、意見が分かれました。
今西貴大被告(34)は2017年12月、大阪市東淀川区の自宅で、当時2歳4か月の義理の娘・希愛(のあ)ちゃんの頭部に何らかの方法で暴行を加え死亡させた傷害致死罪などに問われ、一審(2021年)で懲役12年の判決を受けています。
一審から主に争われているのは、希愛ちゃんの死因が揺さぶりなどの強い外力(すなわち暴行)によるものか、それとも心臓突然死などによる病死だったかです。
希愛ちゃんの頭蓋内には出血があり、救急搬送の時点で心肺停止状態でした。検察側は、頭部に暴行が加えられた結果として、心肺停止状態に至ったと主張。
一方、弁護側は、「心筋炎」などによって生じた心肺停止が先で、その結果として頭蓋内で出血したと主張しています。
どちらの主張がより医学的に合理的に説明できるのかが議論になっています。 一審判決は、強い外力(暴行)によって心肺停止になったと認定。決め手とされたのは、検察側医師の証言でした。頭部CT画像などから「大脳の深い部分に多くの打撲による血腫がある」とした上で、「脳の深部にある脳幹が損傷している」等と診断。こうした症状は、「交通事故並みの」衝撃が頭に加わった結果であるとの証言が採用されました。
26日に開かれた二審の第3回公判では、一審判決の根拠となった頭部CT画像の解釈の当否を巡って、新たに放射線科医2人の証人尋問が行われました。頭部CT画像は、基本的には出血箇所は白く映るとされていますが、その解釈を巡っては、専門医の間でも意見が分かれることがあります。
最初に証言台に立った弁護側の放射線科医は、「客観的にCT画像を解析する方法を用いて分析したら、大脳の深い部分に血腫は存在しない。脳幹損傷を示すような所見もない。確認できる出血も虐待に特徴的なものでもない」と証言。頭蓋内出血の原因については、「低酸素状態の影響で血管が脆くなったところに、心肺蘇生を行ったことでしみ出した可能性が考えられる」と話しました。
続いて証言台に立った検察側の放射線科医も、「大脳の深い部分にある打撲による血腫」については弁護側の医師と同じく「CT画像上で指摘することは難しい」と証言しました。ただ、「画像上は隠れていて、目で見えない場合も診断はできる。急性硬膜下血腫とクモ膜下出血があるので、外傷(外力)を第一に考えるのが定石」だと証言しました。
公判終了後、会見を開いた秋田真志弁護士は、「検察側医師もCT画像から大脳の深い部分に血腫が点在すると読み取れないと認めざるを得ず、一審判決の根本部分が崩れたことになる。次回の証人尋問で、脳幹損傷もなかったことが明確になるのではないかと考えている」と話しました。
次回は、11月30日に、検察側の法医学者と弁護側の小児科医に対する証人尋問が行われる予定です。
(関西テレビ 2023年10月26日)