廃棄されるプラスチックを「炭」にすることで二酸化炭素をほとんど出さずに自然に戻す取り組みが行われています。「炭」に秘められた可能性とは…?
瀬戸内の美しい風景が広がる香川県さぬき市の海岸。海の水は澄んでいますが、波打ち際にはごみが目立ちます。
【樋口諒記者リポート】
「こちら流れ着いたものでしょうか、ペットボトルなどがたくさんありますね」
私たちの生活に深くかかわっているプラスチック。現在、焼却や埋め立てなどで処理していますが、その過程の中で、温室効果ガスが発生し、地球温暖化の原因の1つとなっています。
■地球温暖化の原因の1つ…廃棄プラスチックを「炭化」
この課題を解決しようと取り組んでいるのが、滋賀県大津市にある「大木工藝」です。企業から出るプラスチックなどのごみを「炭化」、つまり、炭にする事業を行っています。
【大木工藝・大木武彦社長】
「8割以上はなくなるんです。炭化すると。だからごみがなくなる。残った1割強は有効利用できる」
プラスチックは炭化するとおよそ2割だけが「炭」として残り、自然に戻すことができる状態になります。残りの8割はメタンやプロパンなどのガスになりますが、回収して発電などに再び利用することができます。
さらに…
【大木工藝・大木武彦社長】
「炭化というのはね、無酸素で蒸し焼きをするわけです。だから酸素がないということは燃えない。ということは、CO2は発生しない。温暖化緩和の1つの要因になります」
■家電や衣類がエアコンのフィルターや壁紙に
香川県さぬき市にある大木工藝の工場では、1日におよそ40キロの廃棄プラスチックを処理しています。企業から依頼を受け、衣類や傘、家電製品さらに自動車まで何でも「炭」にしています。
炭にしたものは細かく砕いた後、臭いを吸い取ってくれる活性炭にする処理が行われ、エアコンのフィルターや壁紙などの商品に生まれ変わります。
■新たなプロジェクト 炭でブルーカーボンを増やす
そんな中、新たなプロジェクトが…
【大木工藝・大木武彦社長】
「ブルーカーボンをとにかく増やすことによって、温暖化もかなり防げる」
ブルーカーボンとは、地球温暖化の原因である二酸化炭素を海藻などが光合成することで吸収し、ため込まれた炭素のことです。
しかし現在、海藻は急速に減少していて何も対策をしなければあと20年で失われてしまうと言われています。
【東京大学大学院・佐々木淳教授】
「日本って海に囲まれていますので、(炭素の)吸収源で言うと、森林だけでなく、海は二酸化炭素を吸収するということは、実は科学的には広く知られていて、世界的にも(炭素の)吸収源対策の強化ということが言われるようになり、“ブルーカーボンにも焦点を当てるべき”という流れになってきた」
■廃棄されるはずの車が地球を守る救世主に 課題は“お金”
そこで、大木工藝が東京大学と共同で取り組みを進めています。廃棄された車などを「炭」にして海に沈め、海藻が育つのに必要な鉄分などを含んだ場所を人工的に作り、ブルーカーボンを増やそうというものです。
廃棄されるはずの車が、地球を守る救世主にもなる…夢のような話ですが、課題もあるようです。
【大木工藝・大木武彦社長】
「課題はやっぱりお金だけでしょうね。社長まで(廃棄物の相談に)来るところも結構あるんですよ。それがどこに利益が出るんやと。だけどそんなもんね、もうけようと思ったらだめなんです」
避けては通れないプラスチックなどの廃棄物問題。持続可能な社会にするためには、技術だけでなくビジネスの視点も必要になりそうです。
持続可能な社会のために世界中で2030年までに達成しようと取り決められている17の目標をSDGsといいます。 今週は「カンテレSDGsウイーク」です。SDGsに関することを紹介しています。今回の「炭化プロジェクト」は、13番の「気候変動に具体的な対策を」にあたる取り組みとして取材しました。
(関西テレビ「newsランナー」2023年11月23日放送)