森友学園に関する公文書の改ざんを指示されたことを苦に近畿財務局の職員が自殺し、職員の妻が財務省の佐川元理財局長に損害賠償を求めている裁判の控訴審で、大阪高等裁判所は妻の控訴を棄却しました。この判決の後、妻は佐川元理財局長に宛てた手紙を公開しました。
■国は「認諾」 佐川氏を被告とする裁判のみ継続
大阪府豊中市の国有地が8億円以上値引きして売却された、いわゆる「森友学園問題」で、財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さん(当時54)は、公文書の改ざん・破棄を指示されたことを苦に、うつ病を発症し自殺しました。
妻の雅子さんは、改ざんを指示したとされる佐川宣寿元理財局長を相手取って、損害賠償を求める裁判を争ってきました。
この裁判をめぐっては、雅子さんは当初、国と佐川元理財局長を被告として、訴えを起こしていましたが、おととし、国が雅子さん側の請求をすべて認める「認諾」という手続きを取り、国を被告とする裁判を強制的に終結させたため、佐川元理財局長に対する裁判のみが継続しています。 去年11月には、大阪地裁(中尾彰裁判長)が「国家賠償法上、公務員が他人に損害を与えた場合は国が賠償すべきであり、佐川被告個人は損害賠償の責任を負わない」として訴えを棄却したため、雅子さんは控訴していました。
■佐川氏らの尋問請求を却下 控訴も棄却
これまでの裁判で雅子さんは、公文書改ざんの事実関係を明らかにするために、佐川元理財局長と財務省の職員4人の尋問を求めてきましたが、地裁・高裁ともにこの請求を却下。「佐川さんに話を聞きたい」という雅子さんの願いは認められませんでした。
19日午後3時から言い渡された控訴審判決で、大阪高裁の黒野功久裁判長は「最高裁の一連の判決を否定すべきとは言えない」として雅子さんの控訴を棄却。 雅子さん側が佐川元理財局長に説明や謝罪を求めていることについても、「法的義務はない」として、請求を退けました。
■「佐川さんにお願いがあります」
赤木さんは19日、判決前に佐川宣寿元理財局長に宛てて手紙を出したことを明らかにし、その内容を公開しました。
佐川宣寿様
私は夫、赤木俊夫がなぜ死ななければならなかったのかを知りたくて裁判を起こすことになりました。それを知ることができれば裁判を続ける必要はなくなります。
佐川さんにお願いがあります。
・夫の墓前か自宅の祭壇に手を合わせてください。
・私に改ざんの経緯をお話しください。
私はこの二つのお願いが叶えば裁判はすぐにやめます。恨んだりしません。
よろしくお願いします。
赤木雅子
赤木さんは、この手紙を弁護士を通じて佐川元理財局長に送りましたが、返事などはなかったということです。 赤木さんは19日の判決を受け、上告する意向を固めています。
(関西テレビ 2023年12月19日)