能登半島地震から1週間となる8日。避難生活が長引く中で、被災地は衛生環境の悪化という問題に直面しています。
【池口亮医師】「避難所を見ていても(感染症が)広がり始めていると感じます。下痢とか嘔吐とかを契機に広がるようなノロウイルスとか感染症もかなり注意が必要だと思います」
避難所には、想定されていた収容人数以上の人が身を寄せています。水がないため手洗いができていないなどといった理由で、すでに感染症が広がりを見せています。
■避難所では「トイレ」が大きな問題に
また「トイレ」が大きな問題になっています。
【被災者】「初めて、断水なんか。はよ(復旧)してほしいわ。トイレの関係もあるしね」
【被災者】(Qトイレはどうしている?)「とりあえず外でやっています」
避難所となっている輪島市の鳳至公民館でも、断水の影響でトイレの水が流せなくなっています。便器の中にゴミ袋を敷いて用を足し、なんとかしのいでいる状況です。
(Q今、トイレ掃除をされているのですか?)「はい」
(Q衛生面で不安を感じることはありませんか?)「あります。ルール守らない人がいますので…」
■トイレ不足が「エコノミークラス症候群」など災害関連死につながる恐れも
劣悪なトイレ環境は、災害関連死につながります。
【仮設トイレ製造会社 ビー・エス・ケー 三谷彰則社長】「トイレに行くのが嫌やなと感じると、飲まず食わずとか。和式だとお年を召した方とか、便器の上に座って、感染してしまって病気になるとか」
警鐘を鳴らすのは、大阪市の仮設トイレ製造会社の三谷社長です。2016年の熊本地震でも被災者がトイレに行く回数を減らすために水分をとらないことで、「エコノミークラス症候群」になり、亡くなりました。 この仮設トイレ製造会社は国からの要請を受け、先週、輪島市と珠洲市の公民館などに10基の仮設トイレを設置しました。国からはさらに携帯トイレ10万回分の発注を受け、6日、あらたに石川県に向けて発送しました。
【仮設トイレ製造会社 ビー・エス・ケー 三谷彰則社長】「トイレがあるだけじゃだめなんで。快適に被災者が安心してできるトイレを設置しないと、私は意味ないと思っています」
避難所の中には、なんとかトイレ問題を解消しようという動きもみられました。
【避難所運営を支援 菅原健介さん】「今、被災地に一番必要なのは、トイレの環境をよくすることなんです」
7日、支援団体が簡易トイレの設置を行った避難所があります。簡易トイレの名前は「ラップポン」といいます。排せつの前に凝固剤を入れるようになっており、便器の中にラップが設置されていて、用を足した後に自動で排せつ物が密封されます。ラップ包装されることで、汚物などの二次感染の予防となり、においがもれる心配もなくなるということです。このラップポンは、支援団体によって、各地の避難所への設置が進められているところです。
【避難所運営を支援 菅原健介さん】「衛生環境を保ちながらトイレをするっていうのが一番大事で、それがなかなかできていないのが今回の被災地の現状で、災害が起きていない時でも、常に一つアウトドア用などに持っておくことが、災害時の被害が少し減るんじゃないかと感じています」
地震大国である日本。支援団体は、被災していない地域でもこうした簡易トイレの常備を進めてほしいと話します。
■現地の切迫した衛生事情を生リポート
トイレを我慢して水分をとらないことで、「エコノミークラス症候群」の恐れがあるといいます。
【関西テレビ 神崎報道デスク】「東日本大震災や熊本地震では車中泊をされる方が多くいて、エコノミークラス症候群による健康被害が出ました。トイレに行かないように、お年寄りなどが水分をとらないこともありますが、そうすると脱水症状になり、例えば脳梗塞とか心筋梗塞になる恐れもあります。水分をとることはもちろん大事ですし、同時に塩分やミネラルもとることも脱水症状を避けるために必要です。夏の熱中症予防の塩あめなどを同時にとっていただくと、健康被害の予防になるかと思います」
災害が発生する前からできるトイレ問題への対策として、簡易トイレを準備しておくことがあげられます。折り畳み式で、保管する時は薄く、組み立てるといすの形になるものなどがあります。
災害への備えとして、災害用グッズセットや水などを備蓄されている方は多いと思います。LINEでアンケートをとったところ、防災グッズを備蓄している方は62パーセントでした。しかし簡易トイレを備蓄している方は34パーセントで、十分とはいえない状況がみえます。被災地でも必要となっている簡易トイレですが、メーカーによると商品によっては在庫が十分にあるとのことですので、被災地以外の方が購入して準備するのも有効です。
今、被災地で求められていることを、現地で取材している吉原キャスターがあらためて報告します。
【吉原功兼キャスター】「被災している方、そして避難者の方の大変さをお伝えしてきました。そういった被災者・避難者をサポートする職員、スタッフの方も本当に過酷な状況に追い込まれています。1月1日から出動していて、ご自身も被災されている中で被災者を支援していて、1日2~3時間ほどしか睡眠時間がなく、なかなか休みも取れないという方もいました。被災者を支えるスタッフの人員確保も、被災地の課題だと感じています」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月8日放送)