万博の延期について現役の閣僚が異例の発言です。高市大臣は被災地の復興を優先し、大阪関西万博の延期も検討すべきだと、岸田首相に進言したことを明らかにしました。
【高市早苗経済安全保障担当大臣 YouTubeより】「あの、万博の話です。やはり能登半島地震が起きて、私が心配しているのは、今は配電盤が足りない、電線が足りない、この資材不足が起きている。人手不足も起きている中で、両立できるかどうかをよく見極めて、延期や縮小もご判断いただけないでしょうかというお願いをいたしました」
高市早苗経済安全保障担当大臣は、27日、自身のYouTubeチャンネルを更新。「一自民党所属の国会議員としてのお願い」と前置きをした上で、能登半島地震の復興を優先するために、万博の延期を検討すべきだと岸田首相に進言したことを明らかにしました。
【高市早苗経済安全保障担当大臣 YouTubeより】「私も関西人ですので、万博を非常に楽しみにしていて、これを推進する議員連盟にも入ってるんです。日本の名誉にかけても堂々とやりきってほしいと、激励していたんですけれども、今いろんなことが起きている中で、総理が次々に判断されるのは難しいと思うんです。被災地が困らないように、復興を優先的にやってほしいなと、そう思っています」
■林官房長官「万博を遅らせる必要があるとは認識していない」
現役閣僚からの“踏み込んだ発言”を受けて、29日、林官房長官は…
【林芳正官房長官】「経済産業省からは、現時点において万博関連の資材調達等によって能登の復興に具体的に支障が生じるという情報に接していないと聞いております。令和7年4月に予定されている、大阪・関西万博の開会を遅らせる必要があるとは、認識をしておりません」
林官房長官は、高市大臣の発言が「閣内不一致にはあたらない」としたうえで、「万博を延期する考えはない」と明言。
■吉村知事「万博を延期すれば、それが進むのか…」
またこれまで、「被災地の復興と万博は二者択一の関係ではない」とコメントしてきた、大阪府の吉村知事は…
【大阪府 吉村洋文知事】「まずやはり、僕自身も被災地の復旧復興の支援が最優先だと思います。ただ、万博を延期すればそれが進むのかというと、そういう関係なのかなと思うところもありますし、調整しなければいけないところはどんどん調整して、優先順位は被災地の支援、僕はそう思っています」
「被災地の復興が最優先」としつつも、万博の延期には、否定的な考えをにじませました。
■復興と万博 「現時点ではなんとも言えない」と建設業界
被災地の資材・人手不足と万博の工事について、今の段階では、政府は関連を否定しているという状況です。 実際のところはどうなのでしょうか。
・業界団体の日本建設業連合会は、「復興に向け、どのような事業が行われるか、今のところ不明。万博工事に影響があるかは、現時点ではなんとも言えない」としています。
・関西の大手ゼネコンは、「東日本大震災よりもエリアが限定されているので、建設業者も絞られるのでは」ということでした。つまり復興と万博との関連はそれほど大きくないのではという意見です。
・住宅メーカーは、「復興の規模が見えていないので、正直何とも言えない」という立場です。
高市発言について、関西テレビ「newsランナー」コメンテーターで共同通信社編集委員の太田昌克さんは次のように話しました。
【太田昌克さん】「高市さんは総務大臣も経験されていて、地方行政に精通した政治家だと思います。現職の閣僚でありながら、一自民党議員として岸田首相にそこまで言うというのは、復旧に大変なコスト・時間を要するのではないか、そして被害実態が見えず、どこまで復旧復興を尽くすか全体像が見えない中で、少し万博について考慮した方がいいんじゃないかという、政治家としての助言だったと思うんです。
林官房長官が、『現時点においては延期する考えはない』と言っていたんですが、被害実態が見えてくるに従って柔軟に対応し、能登の皆さんも、関西の皆さんも、心から喜んでいただける万博をやることが大事です。もう一つ大事なのは、この万博が能登の皆さんにも希望の光となるような、新しい仕掛けづくりを考えること。そんな必要があるんじゃないかなと思いました」
■復興への影響 全ての情報を出して判断を
万博の工事が被災地の復興に影響を与えることはないという考え方もあります。アジア太平洋研究所の稲田義久研究統括は、「被災地でいま急がれるインフラ復旧は土木工事です。土木と建設の工事は全く違う。本格的に住宅復旧を進める時期と万博の建設工期は重複しないのでは」という見方を示しています。 このような見方をどう受け止めればいいのでしょうか。
【関西テレビ 神崎報道デスク】「全部情報を出した上で、どうするのか判断をするべきだと思います。このまま開催した場合、縮小した場合、延期した場合、それぞれで関西万博への影響と被災地への影響がどうなるのか、まず一度洗いざらい出して判断すべきだと思います」
万博開催が近づく中で、延期や縮小が本当に必要なのかどうか、事実にもとづく議論が必要になります。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月29日放送)