宝塚歌劇団の劇団員が死亡した問題で、遺族代理人が会見を開き、劇団側が多くのパワハラを認めたことを明らかにしました。
■劇団側は当初「証拠となるものを、お見せ頂くようにお願いしたい」
【遺族側代理人 川人博弁護士】「『行為の多くがハラスメントに該当する』と阪急・劇団側は、私ども(遺族の)代理人には説明をしている。3月中に合意締結に至るよう、しっかりと遺族側に向き合って対応するよう、求めているところであります」
3月中に遺族と合意し謝罪するよう、劇団側に強く訴えた遺族側の代理人。
宝塚歌劇団をめぐっては2023年9月、宙組に所属する劇団員の女性(当時25)が死亡しているのが見つかりました。自殺とみられています。
遺族側は長時間労働に加え、上級生からヘアアイロンを額に押し当てられるなどのいじめや、執拗に繰り返し叱責されるなどのパワハラが自殺の要因となったと主張していました。
これに対し、劇団は…。
【宝塚歌劇団 村上浩爾理事長(当時:専務理事)】「ヘアアイロンの件につきましては、そのようにおっしゃっているのであれば、その証拠となるものを、お見せ頂くようにお願いしたい」
劇団は過密なスケジュールなどが原因で、劇団員に心理的負荷がかかっていた可能性を認めた一方、”いじめ”や”パワハラ”については確認できなかったとしました。
■ハラスメントに該当することを認める意向を示す
しかし、その後の遺族側との協議の中で、再度、上級生への聞き取りをするなど事実上の再調査を実施し、1月に行われた3回目の遺族との面談のなかで、パワハラがあったことを認め、謝罪する意向を伝えていました。
27日、遺族側代理人は、劇団側が遺族が主張している15項目のパワハラ行為について、多くがハラスメントに該当することを認める意向を示したと明らかにしました。
【遺族側代理人 川人博弁護士】「問題となっている15項目の問題につき、行為の多くがハラスメントに該当すると、阪急劇団側は私どもに説明している。具体的にどの行為がハラスメントに該当すると判断し、どの行為はハラスメントに該当しないと考えているか言及していません。ただ、ハラスメントに該当しない行為も、阪急劇団側の言い分によればあるということですが、それらについても、少なくとも不適切であったと考え、それらが被災者に心理的負荷を与えたと考えていると、そのように私ども代理人は理解している」
しかし、謝罪文の内容や、合意締結の際の公表の仕方についてへだたりがあり、まだ協議が続いているということです。
■宝塚歌劇団は「日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界」
そしてこんな苦言も…
【遺族側代理人 川人博弁護士】「劇団幹部や問題となっている行為を行っていた上級生から、事情聴取を行ったと話をしている。ただ、その結果として、特に聴取した上級生の言い分を、そのまま受け入れ、それを劇団側の主張とする傾向が強い、色濃く出ている。しっかりと事実に基づき、阪急劇団として独自に判断して、決して上級生の弁解、言い分をそのまま代弁するかのような対応をすべきではない」
そして、亡くなった女性の妹のコメントが読みあげられました。
【妹のコメント】「宝塚歌劇団は日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界です。その世界に今まで在籍してきた私から見ても、姉が受けたパワハラの内容は、そんなレベルとは比べものにならない、悪質で強烈にひどい行為です。劇団は『誠意を持って』、『真摯に』という言葉を繰り返して、世間にアピールしていますが、実際には現在も遺族に誠意を持って対応しているとは思えません。これ以上、無駄に時間を引き伸ばさないでください。大切な姉の命に向き合ってください」
■遺族側に「交渉が進まないことへのいら立ち」
先ほど行われた記者会見で遺族の代理人は「上級生によりやけど」、「深夜に及ぶ労働」、「上級生による呼び出し・詰問」、「幹部による威圧的言動」といった、15のパワハラ行為の多くを歌劇団側が認めるも、まだ溝は埋まっていないようです。
問題を取材している松浦記者に聞きます。
遺族側はなぜこのタイミングで会見を開いたのでしょうか?
【松浦記者】「背景には『交渉が進まないことへのいら立ち』があり、遺族側はもともと2月中に交渉をまとめることを目指していましたが、うまくいきませんでした」
なぜ交渉がうまくいかない、折り合いがつかないのでしょうか?
【松浦記者】「そもそも芸事という特殊な世界で、さらに当事者が亡くなっているという前提の中で、パワハラの事実認定について、劇団側も慎重に確認をすすめているということです」
■当初は双方の主張が対立 劇団側は「故意ではない」「証拠がない」
食い違っている双方の主張を改めてみていきます。
2021年8月、上級生がヘアアイロンで団員の髪を巻きやけどしましたが、これに対して上級生からの謝罪はありませんでした。宝塚歌劇団は「故意ではなく、ハラスメントはなかった」と主張していました。
2023年2月、週刊誌報道について上級生4人が団員を呼び出し、約25分間問い詰め、その後、団員が過呼吸で倒れたと訴えましたが、劇団側は「客観的証拠がなく、あったかどうか判断できず」としています。
これはあくまで一例ですが、このように双方が対立する主張がありました。
■謝罪の意向 ただし15項目すべてのパワハラ認定は難しいか
宝塚歌劇団の聞き取りは現状、どうなっているのでしょうか?
【松浦記者】「劇団は、いま遺族側から出された新しい証拠などをもとに、上級生らにヒアリングを重ねていますが、まだ15のパワハラの認定には至っていません。きょうの会見でも弁護士は、劇団側は上級生の話をうのみにする傾向があると苦言を呈していました」
2月中には和解をしたかったということですが、叶わなさそうという中で、5回目の協議が3月に行われる予定となりました。
宝塚歌劇団側は今後、歌劇団の親会社である阪急阪神ホールディングスの角和夫会長が、遺族に直接謝罪する意向を示しているということです。
ただ取材をしてみると、劇団の幹部は「15全てのパワハラ認定は難しいのではないか」ということです。
【松浦記者】「まず劇団側は謝罪とパワハラは別だという考えです。最初の面談の中で、不適切な言動行動があってことは劇団が認めて、遺族側がパワハラという言葉にこだわっているから、パワハラを認めたというのが、取材で見えてきました。事実認定自体が、15全てのパワハラがあったかどうかということに関しては、まだ調査中で、きょうの会見でも多くを認めたと主張していましたが、当事者の方が亡くなられているいま、全ての事実をもう一度検証するのは、なかなか難しいのではないか、というのが劇団幹部の意見です」
遺族側としては、15全ての認定を求めているという状況です。
■なぜ劇団側からの公表ではなく、遺族側からなのか?
これまでパワハラ認定に関して、15全てのものに関して認定していませんでしたが、部分的であれ、認めたということは大きな動きだと思います。
本来であれば、それを伝え聞いた遺族側が会見で明らかにするのではなく、劇団側親会社側から公表して行くべき話なのではないでしょうか?
【松浦記者】「劇団の幹部によると、まず謝罪する事項を、全てお互いに合意できてから、謝罪をしたいという意向です。遺族サイドと劇団サイドの双方で、パワハラの認定、事実認定について相違があるうちは、まだ謝罪はできない。それが終わった後は謝罪したいと話しています」
これをみると双方の溝が埋まるのかというと、まだ難しい状況が続きそうです。3月にも行われる協議で溝が埋まるのか注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」2024年2月27日放送)