派閥の政治資金パーティーの問題をめぐり、自民党では、不記載が明らかになった85人のうち39人を処分の対象にすることを明らかにしました。
しかし、処分するかしないかの「線引き」に波紋が広がっています。
■不記載85人中処分は39人 境界は「過去5年間で500万円以上」
派閥の政治資金問題で、自民党の党紀委員会の開催が、今週中に迫る中で開かれた2日の衆議院本会議。
沈黙を守り、静かに座っていたのは和歌山県選出の二階元幹事長です。二階元幹事長は次の選挙に出馬しないと表明したことから、処分の対象にはなっていません。
自民党の政治資金問題で不記載が明らかになった議員と支部長は85人ですが、茂木幹事長は1日、39人を処分対象とすると明かしました。
【自民党 茂木敏充幹事長】「派閥の幹部の立場にありながら、適切な対応を取らなかったと考えられる者、および不適切な記載の金額が、過去5年間で500万円以上と多額に上った者、計39名としたい」
その39人の中には、5年で1408万円の不記載があった大阪13区の宗清議員や、836万円の不記載があった兵庫3区の関議員など、関西選出の国会議員と支部長8人が含まれています。
しかし、茂木幹事長は39人に絞るにあたり、500万円という金額だけで区切ったわけではないと強調。
不記載が続く状況を改善できなかった「幹部の管理責任」なども検討するこということで、不記載額が1542万円に上る和歌山選出の世耕前参院幹事長に「離党勧告」という重い処分の方向で調整が進むと同時に、不記載額が100万円の兵庫9区の西村前経済産業大臣も、処分の対象として名前が挙がっています。
処分対象となった1人は関西テレビの取材に対し、「私は選挙管理委員会に修正申告して認められているのに、なぜ処分されなければならないのか。岸田さんも当初は自分も処分対象だと言っておきながら、結局、党本部の判断で処分されないことになったことも納得がいかない」といった不満をあらわにしました。
党本部への不信感も渦巻く中、関係者によると自民党は今回の処分をめぐり、「離党勧告」に応じない場合、最も重い「除名」にする方針を固めました。
■「線引き」 金額と世論の反応を見て決めたか
政治資金問題の当事者の処分内容の最終調整が行われているようです。
安倍派のキックバックについて協議した4人のうち、塩谷元文科相と世耕前参院幹事長については「離党勧告」とする可能性が出てきています。
非常に重い処分ですが、一方で「5年間で500万円以上の不記載」を基準にした処分で「処分なし」になるのは500万円未満の45人に及びます。この45人は「注意」にとどめる方針で、多くの国民にとって納得できるものとは言えません。
これについて、2日の関西テレビ「nwesランナー」でコメンテーターの大阪大学大学院教授・安田洋祐さんは次のように話しました。
【安田洋祐教授】「世論を考えると、なぜ処分がないのかと不満がたまると思います。一方で、処分対象の自民党の議員の中から、扱いが不公平ではないかという不満が上がっている。対世論を意識すれば、金額関係なく全員なんらかの処分が求められる、一方である程度、党内でも納得のいく処分の重さを付けていかないと、党内での求心力をさらに失ってしまう。その辺のせめぎ合いの中で出てきた案という印象です」
金額で線引きしたのには、岸田総理の狙いがあるのでしょうか?
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「全体で85人もいて、全員を処分する案も一時ありましたが、それはさすがに、党内のバランスとしては難しいということで、最初は1000万円で線を引こうという話が出たようです。そうすると、85人中19人しかいないので、これは少なすぎるという話があったようです。500万円というラインで線を引けば、39人でほぼ半数になります。85人のうち半分ぐらいを処分したら、ある程度の処分した感は出るというところで、おそらく500万円というのは、人数的に、世論の反応を見ながら、この辺りが妥当だという所で線が引かれたという見方があります」
松野前官房長官、橋本元五輪大臣、萩生田前政調会長は不記載額が1000万円以上なのですが、そのあたりの処分の線引きはあるのでしょうか?
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「客観性が必要なので、額によって処分の重い軽いをつけるという案もあったようですが、とりあえずは、この500万円という線で客観的な要素を含んで、処分の線を引いたということになるようです」
ただ不記載額があるという事実は変わりません。国民は本当に納得できるのでしょうか?
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「国民が確定申告をしている時期に、500万円って金額としては大きいですよね」
形だけの処分は国民も望んでいません。
(関西テレビ「newsランナー」2024年4月2日放送)