8月、全国各地でコメが品薄となり「令和の米騒動」とも呼ばれましたが、実は新米の季節になって、「コメ泥棒」が相次いでいるということなんです。
番組では、関西で被害にあった方を独自取材。 盗まれた米はどこへ行ったのか、取材を進めると新たな背景も見えてきました。
ついにやってきた、新米の季節。
【フレッシュマーケットアオイ・内田寿仁社長】「9月の上旬から、だんだん入荷量が増えてきた。お米が全くなくなるという事態は、最近ではなくなりました」
8月には、全国各地で深刻なコメの品薄となり、こちらのスーパーでも、棚はからっぽの状態に。 一連の問題は、「令和のコメ騒動」とも呼ばれました。
9月に入って、少しずつコメの入荷が進んでいますが、一方で・・。
【買い物客】「高いですよ。新米はいってきても高いですよね。前、5キロが1500~1600円。(今は)倍以上になってる」
生産者に仮払いする「概算金」が、全国的に引き上げられていることもあり、新米の価格は高騰しています。
【フレッシュマーケットアオイ・内田寿仁社長】「去年と比べると、5割~8割高いという状況が続いている。下がるきざしが見えてこない」
専門家は、まだまだこの問題は解決していない、と話します。
【キヤノングローバル戦略研究所・山下一仁研究主幹】「まったく元通りになってないですよ。今年(市場)のコメは、本来、今年の12月から来年の9月までに消費する米なんですよ。今、先食いしてるだけなんですよ。だから来年の端境期、8月9月になると、また同じ事態が生じますよ」
そんな中でいま、「新米」をめぐってある事態が・・。
【被害にあった農家】「こういう風においておいたのが取られたんです」
「コメ泥棒」です。 京都有数のコメの産地、亀岡市の農家の女性は、9月16日から17日の間に、倉庫に置いていた出荷用の玄米30キロ入りの袋を5つ盗まれました。
【被害にあった農家】「当時はコンバインがもっとこっちにあって、シャッターが全部開いていた。ああもうやられたと思って、全部取られたと思った。そしたら出荷用のきれいな5袋だけとって」
被害は、奈良県でも。
【記者リポート】「こちらお米が保管されていた倉庫なのですが、シャッターに穴があけられ、鍵も壊されています」
【農家・岡田修さん】「前の日に夕方、これきちっと閉めたということは覚えてるし、鍵もきっちり閉めて帰って、あくる日の朝来たら、こうなってるし、あれ?と思ったらもう…」
奈良県山添村の農家の男性は、9月11日から12日の間に、倉庫の冷蔵庫で保管していた30キロ入りの玄米40袋、1.2トンを盗まれたといいます。
【農家・岡田修さん】「これ、ここにいっぱい、ここまでコメ入ってたんですよ、それがこんだけないさかい、これは盗まれたなって、すぐ110番した。1.2トンあるんやで。しんどいわな。お金ないよりも、相手のお客さんに迷惑かけるさかいな」
関西テレビが調べただけでも、8月末から関西各地でコメの盗難事件が相次いで発生。 新米を狙うコメ泥棒が現れているのです。 さらに9月23日、滋賀県高島市でも窃盗被害が発生。 農家の倉庫の軒下から、新米のコシヒカリ240キロが盗まれました。
被害が相次ぐ中、対策に追われる人もいます。 京都府・京丹後市で、2年前から父親の会社で農業を始めたという山岡さん。 今、まさに新米の稲刈りの時期を迎えています。
【久美浜観光園・山岡怜亜さん】「やっとここまで来たなっていう。まごころこめて作ってるんで。うちは特にお客さんのお米を管理していますので、そういった面ではより一層、警戒していかないといけないなと思います」
猛暑の中、丸1日作業は続きましたが…夜になっても、作業場の一角につくられた部屋の中に、山岡さんの姿が…。
一緒に働くお兄さんと、まごころ込めて作った新米を食べていました。
【久美浜観光園・山岡怜亜さん】「去年よりほんまにいいですね。粒も大きいし甘味があっていいです」
(Q家帰らないんですか?)「家帰らないです、朝までいて、そのまま仕事」
稲刈りの時期は、もともと、乾燥機の点検のために、作業場に泊まることもあるそうですが、ことしは「盗難対策」で毎日、従業員が泊まり込みで、異変がないかをチェックしているんです。
そして、部屋では、テレビをゆっくり見て…と思いきや、映っているのは、防犯カメラの映像! 常に作業場を見張り、コメ泥棒”がいないかの確認を行っていました。
【久美浜観光園・山岡怜亜さん】「いつそういうのがあってもおかしくない状況なので、集中ではないけど気持ちを切らさずっていうのはありますね」
各地で相次ぐ”コメ泥棒”。実は今回が初めてのことではありません。 およそ30年前、記録的な冷夏の影響でおきた「平成の米騒動」。
実はそのときにも、全国で数百件もの「コメ泥棒」事件が起きていたのです。
当時、警戒を呼びかけるこんなアナウンスも… 「冷夏による水稲の不作が伝えられる中、玄米30袋の盗難被害が発生しました、農家の皆さん、十分警戒をお願いします」
しかし、取材を進めると、平成の米騒動とは異なる、事件のある「背景」が見えてきました。 【久美浜観光園山岡怜亜さん】「(盗んだお米を)JAさんとかスーパーとかには売ることは、ほとんど無理だと思います。契約して販売しているので、違う人が販売するのはほとんど無理やと思います」
「JAならけん」によると、米を買い取る際は、相手が組合員であることを確認したり、契約書を交わしたりするため、取引の実績がない人から買い付けを行うことは、考えにくいとのこと。
では、盗まれたコメは、一体どこへいったのか?
警察は、同業者の犯行の可能性も含め、捜査していますが、京丹後市で被害にあった男性からは「新たなコメの売り方」についてこんな声が
【コメ泥棒”被害にあった人】「米不足で、ネットなんかでも高額で取引されているので。悔しいの一言ですね。1年間苦労して育てたのを盗られるというのは」
品薄の中で、いま、ネットショッピングでのコメの販売が人気を集めているといいます。
【久美浜観光園・山岡怜亜さん】「僕たちからしたら、考えられないくらいの値段で売られたりしている」
【キヤノングローバル戦略研究所・山下一仁研究主幹】「(ネットでは)注文してから届くまでにタイムラグがあるわけですから。(コメの)供給がふんだんにあれば、普通の米屋さんから買えばいいだけの話で。今は需給が逼迫してコメ不足だからネットで買うという人も出てきている」
「令和の米騒動」の中で、相次ぐ「コメ泥棒」。 かつてはなかった便利な手段が、大切なお米をおびやかす犯人によって、利用されているのでしょうか。
【久美浜観光園・山岡怜亜さん】「僕たちの苦労をこめて、お金を払って食べてもらうのが一番だと思う。なんの苦労も知らずに、とりあえず盗ってしまえっていうのは、味もおいしくないと思う。そういうのを分かったうえで、買って食べてほしいですね」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年9月23日放送)