「人を殺すことだってできるから。検察なめんなよ!」 恫喝『取り調べ映像』法廷で再生 冤罪の裏側に『最高検』の指示 方針変えた地検特捜部 大声で怒鳴り 机を叩いた特捜検事 供述を変えた元部下 生まれた元社長の冤罪【プレサンス元社長冤罪事件】 2024年12月23日
プレサンスコーポレーションの社長だった山岸忍さんが無罪確定後に国を提訴してから3年近く経った20日、ついに冤罪を生んだ問題の取り調べ映像が大阪地裁の法廷で公開された。
【検事】「お試しで逮捕、起訴とかありえないんだよ」 「人の人生狂わせる権利持ってるから!人を殺すことだってできるんですから、私たちは」 「だから慎重に証拠そろえてやってるんですよ。命かけてんだよ!検察なめんなよ!!」 「あなたたちみたいに金かけてるんじゃねーんだよ。かけてる天秤の重さが違うんだ、なめんじゃねーよ。あんたの人生預かってんの私なんだ!」
『最強の捜査機関』とも言われ、数多くの政治家汚職事件や大型経済事件の立件で注目を集めてきた検察の特捜部。
一方で、その捜査手法には問題があると長年指摘されてきた。
ただ、結局は密室での取り調べでその実態は謎が多いままだった。
今回、その実態が初めて明らかになる。
特捜部検事が大声で恫喝したり、机を叩きつけている取り調べ映像が初めて公に出てきた。
■事件の背景に検察組織の権力構造 特捜部の「文化」
なぜ強引な取り調べをするに至ったのか。
関西テレビは検察関係者らを新たに取材。
明らかになったのは、事件の背景にあった検察組織の権力構造と、脈々と受け継がれてきた『特捜部の文化』だった。
【元検事(特別刑事部)西山晴基弁護士】「トップ(部長・主任検事)が決めたストーリーで、トップがこういう(供述)調書を取ってこい、と」 「その調書を取ってくるまでは毎日朝から夜遅くまで、取り調べから帰ってくるなと」
■プレサンス元社長山岸さん 当時の部下Kから提案され 学校法人に18億円貸しつけ 学校の理事長となる女性が使い果たす
2016年、山岸さんは、学校法人の土地購入の話を当時の部下Kから提案され、その準備に必要な費用として学校法人に18億円を貸し付けた。
しかし、このお金は後に学校の理事長となる女性が、その職を得るため等に使い果たされる。
そして、女性は学校のお金21億円を横領したとして逮捕起訴される。 話はここで終わらなかった。
大阪地検特捜部は、山岸さんは初めから事情を知っていて女性個人に貸し付けていたのではないかと疑った。
そして、逮捕し勾留していた山岸さんの元部下Kらを、何日にもわたって取り調べを行う。 その結果、元部下Kは当初の供述を変更し、山岸さんの関与について嘘の供述をした。 大阪地検特捜部は、Kの供述を大きな柱として、山岸さんを逮捕・起訴した。
裁判になると、取り調べに問題があったことが明らかとなる。
密室で行われた取り調べは、恫喝的なものだった。
密室での取り調べなのになぜ『恫喝的』だと分かったのか。
それは、Kの取調べを担当した田渕大輔検事が「検察なめんな」と大声で怒鳴ったり、机を叩く姿が録画されていたからである。
■「なめんじゃないよ!」机を叩く検事
以下は、田渕検事による取り調べの一幕。このやり取りは、20日の法廷で再生されるまで、映像として世に公開されることはなかった。
【田渕検事】 「どんな功績があるんだよ。どこにあるんですか」
【Kさん】 「ちょっと今、勘違いしました」
【田渕検事】 「なめんじゃないよ!」(机をたたく) 「いい加減なこと言っちゃダメだろ!なんでそんないい加減な説明するんですか!」
【Kさん】 「そこは勘違いしてました」
【田渕検事】 「勘違い?違うでしょ、場当たり的な弁解をしているだけじゃないか!」
机を叩き、怒鳴り続ける検事。
このような取り調べは、およそ50分間にわたって続くこともあった。
この少しのやり取りだけでも、恫喝的な取り調べが行われたことがうかがえる。
■18時間分の取り調べ映像の提出 命じた地裁
このやり取りを、文字で読むのではなく、映像と音声で視聴した場合にどれくらい印象が変わるだろうか。
2022年3月、山岸さんは、国を相手に民事裁判を起こした。
検事の違法な取り調べによって冤罪が作られたと訴えている。 山岸さんは、大阪地裁に取り調べ映像を証拠として見てほしいと主張した。
2023年9月、裁判の審理を進めていた大阪地裁(小田真治裁判長)はおよそ18時間分の取り調べ映像を証拠として提出するよう国に命じた。
しかし、これに『待った』をかけたのが高裁だった。 2024年1月の大阪高裁第2民事部(三木素子裁判長、池上尚子裁判官、田中俊行裁判官)は、裁判の証拠として調べる映像は48分間で足りるとして、地裁の決定を認めなかった。 この48分間の中には、「検察なめんな」という暴言や机を叩く田渕検事の姿は録画されていない。 高裁は2つの理由をあげている。1つは、検事の口調や取り調べの雰囲気は、映像の反訳(すなわち、文字起こし)で把握できるので、映像を見る必要性は高くないこと。 もう1つは、映像が開示されると、取り調べを受けた元部下のプライバシーが侵害するおそれが完全に払拭できないという理由だった。
■「映像は格段に多くの情報含む」最高裁が高裁の決定を覆す
山岸さんは最高裁に不服を申し立てた。 最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は、映像は反訳や法廷での証言と比べて格段に多くの情報を含んでおり、正確性もあると認定。
さらに、元部下のプライバシー侵害のおそれも(映像の提出を認めない)理由にはならないと指摘。 そもそも元部下はモザイク処理等の配慮があれば映像の提出に同意していた。
高裁が理由としてあげていたプライバシー侵害の「弊害が発生するおそれはない」と判断した。
すでに山岸さんの提訴から2年半が経っていた。
最高裁決定が出たことを受け会見を開いた山岸さんの代理人・中村和洋弁護士も現状の制度に対し苦言を述べるのを忘れなかった。
【中村弁護士】「取り調べの違法が問題になっており、それを検証するための録音録画があるのですから、証拠として認められるのは当たり前のこと。当たり前のことにここまでの手間と時間がかかったことには課題が残っていると思っています」
かくして、問題部分が録画された取り調べ映像も裁判の証拠となり、国民の目にも届くことになった。
■20日の法廷で特捜検事の「取り調べ映像」再生
20日、大阪地裁の法廷で特捜検事の取り調べの実態が記録された映像が、初めて公開された。
国賠訴訟の中で、検察は「文字起こしで足りるので、映像を見る必要がない」と公開に抵抗し続けた。
なぜ、かたくなに抵抗を続けたのか。 映像を見れば『一目瞭然』となるだろう。
20日の法廷で再生された映像には、とにかく威圧しようとする田渕検事の言動があった。
【田渕検事】「今の嘘じゃなかったら何が嘘なんですか。嘘ついたよね」 「反省しろよ少しは!何開き直ってんだ!!なんでそんな悪びれもなくそんなこと言えるのか!」 「大ウソじゃないか!!どういうことなんですか。口裏合わせじゃないか、ふざけるな!!」
「あなたは家族に誓って嘘つかないといったのに酷いじゃないか。こんなあからさまに嘘ついてなんで平気な顔していられる」
【元部下K】「事実を変えてるわけじゃないのです、、、」
【田渕検事】「変えてるじゃないですか!!」 「なんでこんなもの共有されてるんですか」
【元部下K】「会社で共有してない、、、」
【田渕検事】「してるじゃないか!なんで見え透いた嘘つく」 「どういう神経してるんですか!」
【田渕検事】「こっちは命かけてるから、この仕事!お試しで逮捕、起訴とかありえないんだよ」
「どうなるかわかんねーから、しゃべったら起訴とかじゃないんだよ。人の人生狂わせる権利持ってるから!」
「人を殺すことだってできるんですから、私たちは。だから慎重に証拠そろえてやってるんですよ。命かけてんだよ!検察なめんなよ!!」
「あなたたちみたいに金かけてるんじゃねーんだよ。かけてる天秤の重さが違うんだ、なめんじゃねーよ。あんたの人生預かってんの私なんだ!」
【田渕検事】「あなたの顔写真なんてテレビとかで流れてるんだよ!どんな気持ちで奥さんが毎日過ごしていると思う?」
「それでいて、まだこんな弁解続けるのか!」
「あなたにとって何が一番大事なんですか?一番最初に私、聞きましたよね。あなたにとって一番大切なものは何なのかと」
「それでもあなた家族よりも、今回一緒にやった事件の仲間や自分の方が大事なんですか」
「なんなの!答えてよ!あなたにとって何が大事なんですか」
【元部下Kさん】「家族です」
【田渕検事】「家族を守るために、今のあなたがすべきことは何なの」
家族のことを持ち出し、Kさんに対し大声で怒鳴り続ける田渕検事。 田渕検事がここまで「必死」になるのはなぜなのか。
■『特捜部という場所はブラックボックス』と元検事
この異様な取り調べを生む背景には、いったい何があるのか。 大阪地検の元検事は『特捜部という場所はブラックボックスだ』と証言した。
【元大阪地検検事 大泉まどか弁護士】「普通に刑事部で捜査して身からすると、そんな取り調べするなんてあり得ないなっていうのが率直な感想ですね」
「私たちの世代が検察庁に入庁したときにはもうそういう取り調べは、一切NGなものとして教育されてきましたし、(被疑者の)権利を少しでも侵害の恐れがあるような調べは全部チェックされて、指導されるっていうような状況だったので」
「(特捜部は)どんな場所か全くわからない。どんなふうに捜査してるのか、何が行われているのか。(検察)内部にいても全くわからないっていう場所ではあるから。その特殊性、特捜の特殊性っていうのは、間違いなく絡んでくるんだろうなとは予想はしてます」
■トップが決めたストーリー「この調書が作れるまで取り調べはずっとしろ」 ヤメ検弁護士が明かす「検察の文化」
さらに、『特捜部』に準ずる組織として地方都市に置かれる『特別刑事部』で捜査の経験がある西山弁護士は、その独特の文化を明かした。
【元検事(特別刑事部)西山晴基弁護士】「特捜部、特別刑事部の特徴ではあるんですけど、トップ(部長・主任検事)が決めたストーリーで、トップが『こういう(供述)調書を取ってこい』と」
「その調書を取ってくるまでは毎日朝から夜遅くまで、取り調べから帰ってくるな、と」 「実際に特別刑事部にいたときに、この調書作れるまでは取り調べはずっとしろ。逆に、君が聞いたこの話のままでは、このままでは調書つくるなと」
特捜部は部長や主任検事をトップとする明確な上下関係の中で、一般の検事にチームの『駒』としての役割を求めるという。
【元検事(特別刑事部)西山晴基弁護士】「自分の取り調べが終わっていても、他の検事は取り調べをしているから、夜遅くなってもみんな帰れない」
「要はある意味、検察官自身も拘束されているような環境を作られて、解散命令っていうんですけど、解散命令が出るまで帰れない」
「もうどんな手段を使ってでも、この調書を取るためには話しをさせなきゃいけない」
検事自身も、身体的・精神的に追い詰められていく中で結果として取り調べがエスカレートしていくという実情があったのだ。
■地検特捜部は「山岸の逮捕は無理」という判断 異様な取り調べの裏側に 検察組織のトップ「最高検」からの指示
そして、関西テレビはプレサンス事件の捜査に関わっていた検察関係者にも独自に接触。 取材に対し、なぜ特捜部があのような取り調べをしてまで山岸さん逮捕にこだわったのか、その裏側を初めて明かした。
【プレサンス事件の捜査にかかわった検察関係者】「主犯格の女性らを逮捕する段階では、大阪地検特捜部としては山岸の逮捕は無理、という判断だった」
「しかし、最高検察庁から『この事件で一番得をしているのは山岸だ。山岸まで行くべきだ』と話があり、特捜部で再検討した」
「方針は変わり、山岸逮捕までたどり着くべく、その材料を得るために元部下らから改めて話を聞くようになった」
明らかになったのは検察組織のトップ、最高検からの指示。 組織の絶対的な権力図の中で、特捜部は何としても山岸さんを逮捕しなければいけなくなった。
その中で起きたのが、山岸さんの関与をKさんに認めさせようとする、あの取り調べだったのだ。
事件の捜査に関わった検察関係者は取り調べについて、こう振り返る。
【検察関係者】「田渕検事は東京が本拠地の検事。いずれ東京に帰るという中で、最高検の指示があった事件のプレッシャーと、いい結果を出したいという功名心はあったはず」
「このような取り調べが行われていることは、部長を含め、特捜部内では把握していた」
20日、大阪地裁で開かれた国家賠償請求訴訟。 法廷では、18時間分ある取り調べのうち恫喝的な部分を含むおよそ25分間の映像が流れた。
そして山岸さんの弁護士はこうした異常な取り調べが説得だと言えないことは一目瞭然だと指摘した。
【プレサンスコーポレーション元社長・山岸忍さん】「きょう皆さん映像を見て頂いたかと思いますけれど驚かれた方もいらっしゃると思います」 「あの取り調べは特捜部内でも共有されているはずなんです」
「だけどあれを見て問題視しないという特捜部という組織、田渕検察官一人の個人の問題じゃないと思うんですね。やっぱり組織改革していただかないと」
取り調べの録音録画が始まったのは2019年だが、その法改正のきっかけも大阪地検特捜部の郵便不正事件だった(2010年に起訴された厚労省元局長の村木厚子さんは無罪となり確定)。
この事件によって導入された取り調べの録音録画によって、検察特捜部のあり方が再び問われることになる。
(関西テレビ記者 赤穂雄大)