【独自入手】「検察なめんなよ!」恫喝「取り調べ映像」 冤罪の裏側に『検察トップ』の指示 「社長の逮捕は無理」判断覆した地検特捜部 検察内部の関係者が明かす「特捜部の闇」【プレサンス元社長冤罪事件】 2024年12月23日
■独自入手の映像『違法な』取り調べの実態明らかに
大阪地検特捜部が大手不動産会社の社長を21億円の横領事件で逮捕・起訴し、その後の裁判で無罪になった事件。
関西テレビは、特捜部の取り調べ映像を独自に入手しました。
『違法な』取り調べの実態に、国民の目に初めて触れる映像と、検察関係者への取材で迫ります。
【田渕検事】「なんで嘘ついたの」
【元部下Kさん】「嘘っていうか同僚…」
【田渕検事】「嘘だろ」「嘘をついて、まだ言い訳するなんて!ひどいだろ!」
今回、関西テレビが独自に入手した映像には、大阪地検特捜部が手掛け冤罪を生んだ、巨額横領事件の取り調べの様子が記録されていました。
なぜこのような強引な取り調べをするに至ったのか。
■事件の背景に検察組織の権力構造 特捜部の「文化」
関西テレビは検察関係者らを新たに取材。 明らかになったのは、事件の背景にあった検察組織の権力構造と、脈々と受け継がれてきた特捜部の『ある文化』でした。
【元検事(特別刑事部)西山晴基弁護士】「トップ(部長・主任検事)が決めたストーリーで、トップがこういう(供述)調書を取ってこい、と」
「その調書を取ってくるまでは毎日朝から夜遅くまで、取り調べから帰ってくるな、と」
■21億円の横領事件で逮捕・起訴されたプレサンス元社長 裁判で無罪に
ことの発端は5年前にさかのぼります。
不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍さんは、2019年、21億円の横領事件で逮捕・起訴されました。
山岸さんとしては、マンション用地として魅力的だった学校法人の土地を取得するため、学校の移転費用として必要だった18億円を、学校法人に貸したという認識でした。
しかし特捜部は、山岸さんを横領の共犯者と見立てて、土地の話を山岸さんに持ってきた元部下らを取り調べていました。
山岸さんが捜査段階から一貫して関与を否定する中、大阪地裁で下された判決は「無罪」。
検察はその後、控訴を断念し、判決は確定します。
■「こうやって無理に捏造していくもんなんや」 『冤罪を生んだ捜査の実態』を明らかにするため国家賠償請求訴訟を起こした元社長
【山岸忍さん】「なんでもっと丁寧に捜査してくれなかったんだろうなと、証拠に基づいてやってくれなかったんだろうな、と」
「ドラマとか映画でね、(取り調べの)そういうシーン出てきますよね。こうやって無理に捏造していくもんなんや、と」
無罪判決の後、山岸さんは『冤罪を生んだ捜査の実態』を明らかにするため、国家賠償請求訴訟を起こします。
その裁判の中で大きな問題とされたのが、特捜部が行った山岸さんの元部下に対する取り調べ。
特捜部は客観証拠が少ない事件の中で、元部下から何としても「山岸さんは横領に関わっていた」という供述を引き出す必要がありました。
その過程で『違法な』取り調べが行われていたのです。
■家族のことを持ち出し 大声で怒鳴り続ける検事
最高裁は今年10月、史上初の判断を下します。
検察側におよそ18時間分にわたる映像の開示を命じたのです。
関西テレビは、この映像を独自に入手。これが冤罪を生んだ特捜部の取り調べの実態です。
<最高裁が提出命令 12月6、7日の取り調べ>
【田渕検事】「あなたの顔写真なんてテレビとかで流れてるんだよ!どんな気持ちで奥さんが毎日過ごしていると思う?」
「それでいて、まだこんな弁解続けるのか!」
「あなたにとって何が一番大事なんですか?一番最初に私、聞きましたよね。あなたにとって一番大切なものは何なのかと」
「それでもあなた家族よりも、今回一緒にやった事件の仲間や自分の方が大事なんですか」
「なんなの!答えてよ!あなたにとって何が大事なんですか」
【元部下Kさん】「家族です」
【田渕検事】「家族を守るために、今のあなたがすべきことは何なの」
家族のことを持ち出し、Kさんに対し大声で怒鳴り続ける検事。
■机を叩き怒鳴り続ける検事
さらにその翌日も威圧的で、強引な取り調べは続きます。
主犯格の女性について、Kさんが誤った説明をした場面。
<12月7日取り調べ>
【田渕検事】「どんな功績があるんだよ。どこにあるんですか」
【元部下Kさん】「ちょっと今、勘違いしました」
【田渕検事】「なめんじゃないよ!」(机をぶったたく) 「いい加減なこと言っちゃダメだろ!なんでそんないい加減な説明するんですか!」
【元部下Kさん】「そこは勘違いしてました」
【田渕検事】「勘違い?違うでしょ、場当たり的な弁解をしているだけじゃないか!」
机を叩き、怒鳴り続ける検事。 このような取り調べは、およそ50分間にわたって続くこともありました。
■『特捜部という場所はブラックボックスだ』と元検事
この異様な取り調べを生む背景には、いったい何があるのか。
大阪地検の元検事は『特捜部という場所はブラックボックスだ』と証言しました。
【元大阪地検検事 大泉まどか弁護士】「普通に刑事部で捜査して身からすると、そんな取り調べするなんてあり得ないなっていうのが率直な感想ですね」
「私たちの世代が検察庁に入庁したときにはもうそういう取り調べは、一切NGなものとして教育されてきましたし、(被疑者の)権利を少しでも侵害の恐れがあるような調べは全部チェックされて、指導されるっていうような状況だったので」
「(特捜部は)どんな場所か全くわからない。どんなふうに捜査してるのか、何が行われているのか。(検察)内部にいても全くわからないっていう場所ではあるから。その特殊性、特捜の特殊性っていうのは、間違いなく絡んでくるんだろうなとは予想はしてます」
■トップが決めたストーリー「この調書が作れるまで取り調べはずっとしろ」 ヤメ検弁護士が明かす「検察の文化」
さらに、『特捜部』に準ずる組織として地方都市に置かれる『特別刑事部』で捜査の経験がある西山弁護士は、その独特の文化を明かしました。
【元検事(特別刑事部)西山晴基弁護士】「特捜部、特別刑事部の特徴ではあるんですけど、トップ(部長・主任検事)が決めたストーリーで、トップが『こういう(供述)調書を取ってこい』と」
「その調書を取ってくるまでは毎日朝から夜遅くまで、取り調べから帰ってくるな、と」
「実際に特別刑事部にいたときに、この調書作れるまでは取り調べはずっとしろ。逆に、君が聞いたこの話のままでは、このままでは調書つくるな、と」
■検事自身も、身体的・精神的に追い詰められていく中 取り調べがエスカレート
特捜部は部長や主任検事をトップとする明確な上下関係の中で、一般の検事にチームの『駒』としての役割を求めるといいます。
【元検事(特別刑事部)西山晴基弁護士】「自分の取り調べが終わっていても、他の検事は取り調べをしているから、夜遅くなってもみんな帰れない」
「要はある意味、検察官自身も拘束されているような環境を作られて、解散命令っていうんですけど、解散命令が出るまで帰れない」
「もうどんな手段を使ってでも、この調書を取るためには話しをさせなきゃいけない」
検事自身も、身体的・精神的に追い詰められていく中で結果として取り調べがエスカレートしていくという実情があったのです。
■地検特捜部は「山岸の逮捕は無理」という判断 異様な取り調べの裏側に 検察組織のトップ「最高検」からの指示
そして、関西テレビはプレサンス事件の捜査にかかわっていた検察関係者にも独自に接触。
取材に対し、なぜ特捜部があのような取り調べをしてまで山岸さん逮捕にこだわったのか、その裏側を初めて明かしました。
【プレサンス事件の捜査にかかわった検察関係者】「主犯格の女性らを逮捕する段階では、大阪地検特捜部としては山岸の逮捕は無理、という判断だった」
「しかし、最高検察庁から『この事件で一番得をしているのは山岸だ。山岸まで行くべきだ』と話があり、特捜部で再検討した」
「方針は変わり、山岸逮捕までたどり着くべく、その材料を得るために元部下らから改めて話を聞くようになった」
明らかになったのは検察組織のトップ、最高検からの指示。
組織の絶対的な権力図の中で、特捜部は何としても山岸さんを逮捕しなければいけなくなりました。
その中で起きたのが、山岸さんの関与をKさんに認めさせようとする、あの取り調べだったのです。
■法廷で初めて流れた「恫喝」取り調べ映像「認めましょう。認めましょう。認めてください。認めなきゃいけません」 憔悴する元部下Kさん
<12月8日 取り調べ>
【田渕検事】「なんで嘘ついたの」
【元部下Kさん】「嘘っていうか同僚…」
(机ぶったたく)
【田渕検事】「嘘だろ」 「なんだその悪びれもしない顔は!悪いと思ってるのか!思ってるのか!悪いと思ってるんですか」
「家族に誓って、良心に誓って嘘をつかないって言ったのに。嘘をついて、まだ言い訳するなんて、ひどいだろ。ひどすぎるじゃないか」
「何でですか、答えなさい」
【元部下Kさん】「事実は実際に何も変えて言っているわけではない」
【田渕検事】「変えてるじゃないか」 「思いっきり変えてるだろうが」
【元部下Kさん】「変えて…」
【田渕検事】「変えてんだろ!」
【元部下Kさん】「自分の考えで…」
【田渕検事】「変えてるじゃないか!いい加減にしなさい!」 「認めましょう。認めましょう。認めてください。認めなきゃいけません」
この日の取り調べは、暴言や罵倒がもっとも激しく、Kさんは見るからに憔悴していきます。
<12月9日 取り調べ>
【田渕検事】「端からあなたは社長を騙しにかかっていたってことになるんだけど、そんなことする?普通」
【元部下Kさん】「しないですよね、普通は」
【田渕検事】「なんで、そんなことしたの。それ何か理由があります?それはもう自分の手柄が欲しいあまりですか。そうだとしたらあなたは、プレサンスの評判を貶めた大罪人ですよ」
「今回の風評被害とか受けて、会社が非常な営業損害を受けたとか、株価が下がったとかいうことを受けたとしたら、あなたはその損害を賠償できます?」
「10億、20億じゃすまないですよね。それを背負う覚悟で今、話をしていますか」
この取り調べの翌日、Kさんは検察側のストーリーに沿った山岸さんの関与を認める供述をし、供述調書がとられました。
■「最高検の指示があった事件のプレッシャーと、いい結果を出したいという功名心はあったはず」と事件の捜査に関わった検察関係者
事件の捜査に関わった検察関係者は取り調べについて、こう振り返ります。
「田渕検事は東京が本拠地の検事。いずれ東京に帰るという中で、最高検の指示があった事件のプレッシャーと、いい結果を出したいという功名心はあったはず」
「このような取り調べが行われていることは、部長を含め、特捜部内では把握していた」
そして20日、この取り調べ映像が法廷で公開されました。
■「検察官一人の個人の問題じゃないと思う。組織改革していただかないといけない」
20日、大阪地裁で開かれた国家賠償請求訴訟。
法廷では、18時間分ある取り調べのうち恫喝的な部分を含むおよそ25分間の映像が流れました。
そして山岸さんの弁護士はこうした異常な取り調べが説得だと言えないことは一目瞭然だと指摘しました。
【プレサンスコーポレーション元社長・山岸忍さん】「きょう皆さん映像を見て頂いたかと思いますけれど驚かれた方もいらっしゃると思います」
「あの取り調べは特捜部内でも共有されているはずなんです」
「だけどあれを見て問題視しないという特捜部という組織、田渕検察官一人の個人の問題じゃないと思うんですね。やっぱり組織改革していただかないと」
■「失敗したら腹切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ。検察なめんなよ」
ついに国民の厳しい目にさらされることになった大阪地検特捜部の取り調べ。
検事は取り調べの中で、Kさんにこう告げています。
<12月8日 取り調べ>
【田渕検事】「失敗したら腹切らなきゃいけないんだよ」
「命かけてるんだよ。検察なめんなよ」
「あなたたちみたいに金かけてるんじゃねえんだ」
「金なんかよりも大事な命と人の人生をこっちは天秤にかけて仕事しているんだよ」
山岸さんの人生を狂わせ、冤罪を生んだ今、検察のあり方そのものが問われています。
(関西テレビ記者 赤穂雄大)