食卓に欠かすことの出来ない「キャベツ」。
すでにスーパーでびっくりした人もいるのではないでしょうか。平年の3倍以上の値段になっていて、いま異常事態となっています。
■お好み焼きが高級食品!?
大阪・名物「お好み焼き」。
そのお好み焼きの「ある食材」がピンチに…。
【お好み・鉄板焼き まるみ 松井萌店主】「2カ月前に比べると2、3割高くなっているなと…。量を減らしてしまうと、味や見栄えが変わってしまって、代々引き継がれてる味は崩れてしまうので、私はそこはしたくない」
大阪の天満で半世紀近く営業するお好み焼き店で、店主が嘆くワケ。 それはお好み焼きにとって欠かすことの出来ない“キャベツ”です。
【お好み・鉄板焼き まるみ 松井萌店主】「お好み焼きが高級食品というか、高級な食べ物の部類になっていくのかなと考えている」
キャベツに一体何が起きているのか。
■スーパーではキャベツが1玉500円超 “キャベツ”は我慢で“カット野菜”が人気
8日朝、東大阪市のスーパーをのぞいてみると…。
【記者リポート】「スーパーでもキャベツの価格は高騰していて、食卓を直撃しています」
7日、総務省が発表した調査によると、12月下旬のキャベツの全国平均価格は、1キロあたり453円!平年の同じ時期に比べるとなんと3倍以上に…。
こちらのお店でも、1玉500円を超えています。
【買い物客】「高いわな~…いつもやったら丸いまんま買うけど、高いから半分で…。この値段(半玉)で1個かえたのに、倍になっている」
【買い物客】「めちゃくちゃ高すぎて、食べられないです。“高級”過ぎて。(息子は)高校3年生で、すっごい食べるので『我慢してな』って言って。給料も上がれば高くても頑張れるけど、給料そのままで高くなってるので、ちょっと難しい」
そして、キャベツを諦めるお客さんの姿も…。
【キャベツ→レタスに変更した買い物客】「(キャベツは)半分の量で250円で、レタスは1玉で298円なんで、こっちかなって…きょうは我慢ですね」
高くなったキャベツは我慢する一方で、カット野菜の売り上げは3倍ほど伸びているそうです。
【万代 農産部 西村昌也部長】「お買い求めやすくなるよう、半切カット、4分の1カット、カット野菜などの売り場を拡大している。(キャベツは)年間通して必要な野菜なので、どんなに高くなっても、企業努力で価格を抑えながら販売している」
■仕入れ値は3倍から4倍…追い打ちをかける“質の低下”
キャベツの価格高騰…影響を受けるのはお好み焼きだけではありません。
シーズンまっただ中のお鍋。
ぷりっぷりのモツが入った「もつ鍋」にもキャベツがたくさん使われていますよね。
こちらの店では冬のシーズンの1日に使うキャベツは“30玉”以上!
仕入れ価格は去年の同じ時期と比べると、3倍から4倍とのことです。
【もつ鍋やま本 山本龍之介店主】「10~11月に(1玉)800円から980円、1000円弱くらいの値段が一番高いイメージ。12月の間で600円くらいまで来て、このまま下がるかなと思っていたら、また800円ぐらいまで来てる感じ」
さらに、頭を悩ませるのは「価格」だけはないようで。
【もつ鍋やま本 山本龍之介店主】「(見た目は)ほとんど一緒のキャベツなんですけど、重さが全然違う。今、高いけど物がよくなくて、見た目では分からないけど、持っても軽い。こっちの方が密度が詰まっている分、パツっとして硬い。こっちは柔らかい。横から見ても全然違う。今はこっち(柔らかい)が多くて、こっち(密度が詰まっている)を探すのが難しい」
キャベツの“価格高騰”に加え、“質の低下”。
■キャベツの生産地を取材 「例年の仕上がりとは違う」と生産者
今、生産現場は何が起きているのでしょうか。
大阪府泉佐野市にある農園。
甲子園球場4個分という広大な敷地では今、キャベツの収穫作業に追われています。
ここで育てているのは「松波キャベツ」という品種。みずみずしくて芯まで甘いのが特徴で、1日に収穫する数はなんと、およそ8000玉。
しかし仕上がりは、いつもの年とは違うようです。
【射手矢農園 射手矢康之社長】「本来は(1玉)4.5キロぐらいのやつがゴロゴロ入っていて、鉄コンテナ1つの中に、70玉から80玉ぐらいしか入らないけど、ことしは150玉くらい入る」
(Q.サイズが小さい?)
「小さい、ほんで軽いし」
「松波キャベツ」は通常、スーパーなどで売られているキャベツよりも3倍以上の大きさですが、今シーズンは育ちが悪く、小ぶりのサイズも多いそうです。
しかし、取引企業とは「キャベツの重さ」で契約をしているため、出荷するキャベツの数は“いつもの年の倍”となっているのです。
さらに…。
【射手矢農園 射手矢康之社長】「これ草を植えてたわけじゃないんです」
(Q.キャベツがあった?)
「あったわけです。でもキャベツが枯れて、草が生えている状況ですね」
【射手矢農園 射手矢康之社長】「農家として、やっぱり1年に1回しか作らないわけですけど、夏場暑い時期から、ああいう(大変な)思いをして作ったものが、この状況になるのは本当、辛いですよね」
■「原因は去年の異常気象」と専門家は指摘 茨城県では2000玉以上の窃盗事件が発生
なぜキャベツが育たないのか? 専門家は去年の異常気象を指摘します。
【農業ジャーナリスト 松平尚也さん】「基本的には夏と秋の(気温が)高温。収穫期(12月)の低温と水不足というのが、根本的な原因かと思います。関東中心に干ばつとも言われる、1カ月ぐらい雨が降らないような状況が続き、生育不良が出て、全国的にキャベツが品薄になっている」
この記録的な価格の高騰を受けてか…12月、茨城県内の複数の農家で合わせて2000玉以上のキャベツが盗まれるという事件も発生しています。
当たり前のように食卓に並んでいたキャベツ。価格高騰はいつまで続くのでしょうか。
■キャベツ価格の高騰はいつまで続く?
キャベツの価格の平年比は、およそ3.3倍に跳ね上がっているという状況です。
キャベツの高騰はいつまで続くのか。農業ジャーナリストの松平尚也さんに伺いました。
【農業ジャーナリスト松平尚也さん】「今月いっぱいは高い状況が続く見通し。2月以降、安定出荷できれば価格回復も。指定野菜のキャベツは、安定供給の体制があるが、気候が出荷に大きな影響が出る」
(※指定野菜…消費量が多い野菜を国が指定。出荷の安定を図るために集団産地として形成することが必要な生産地域(指定産地)を定め、生産・出荷を計画的に推進するなどしている。)
■安定供給の体制「産地リレー出荷」も 気候変動の影響で…
安定供給の体制は、「産地リレー出荷」というものです。
大阪の例ですが、冬から春にかけては愛知と兵庫で生産したものが、夏頃には群馬と長野で生産したものが仕入れられ、1年を通して、同じ量が供給できるようになっています。
気候変動があると、生育がうまくできなくなり、供給が滞る可能性があります。
■ジャーナリスト鈴木氏「税金をつぎ込んででも安定して供給する方法を」
安定供給を実現するためには、国による補助金も一つの案ではないかとジャーナリストの鈴木哲夫さんが指摘します。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】「国としてどんな環境でも作り続けられるように、農家にちゃんと補助をしていくとか、(農作物が)余ってもいいから税金をかけてでも、うまく作り続ける体制を作ることをやらないと。税金をつぎ込んででも安定して供給する方法を考えなければいけません」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年1月8日放送)