8日放送の関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」に、安倍元首相の番記者・岩田明子氏、アメリカ大統領選を現地取材した立岩陽一郎氏というともに元NHK記者が出演。
1月20日に就任を控えたトランプ次期大統領とどう向き合っていくべきなのか、「石破外交」について解説した。
同盟国として関係を構築したい石破首相は去年11月、トランプ氏に会談を申し込むも、「会談はいずれの国とも行わない」との理由で断られていた。
しかしトランプ氏は、フランス・マクロン大統領やカナダ・トルドー首相と会談し、イタリア・メローニ首相とは、映画まで一緒に鑑賞したという。
さらに昨年末には安倍元首相の妻・昭惠氏と夕食会を開き、同じ日には、ソフトバンクグループの孫正義氏とも会談。
こうした状況の中で、トランプ氏は会見で「石破氏に会いたいと思っている」と意欲を示し、大統領就任前の会談についても、「日本側が望む場合にはあり得る」との姿勢を見せていたが、実現せず。
石破首相は「最もふさわしい時期に、ふさわしい形で実現するように調整している」と話している。
■トランプ氏には「民主主義が好きか嫌いか」ではなく「強いリーダーか」が重要
まず元NHKの2人は、「2025年の石破外交」についてテーマを提示した。
【岩田明子氏】「戦略性の無さ」
【立岩陽一郎氏】「トランプは”ストロングマン”が好き!!」
第一次トランプ政権の初期にアメリカにいたという立岩氏は、「トランプ氏は、世界のリーダーを見る時、民主主義が嫌いとか好きとかじゃなくて、強い人間が好き」と解説する。
具体例として、イスラエルのネタニヤフ首相、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩委員長などが挙げられた。一方で、ドイツの前首相メルケル氏に対しては否定的だったという。
石破首相に関しては「好きか嫌いかというより、魅力がない。理屈をこねるイメージが強い」と指摘した。
そのうえで「安倍元首相は逆ですよね。背も高いし、政治的基盤も強い。トランプ氏にとって親近感を抱きやすい人だったんでしょう」と述べた。
■安倍元首相の「ガチガチの戦略」
続いて岩田氏も「トランプ氏の”ストロングマン好き”」について言及した。
【ジャーナリスト 岩田明子氏】「北朝鮮の金正恩氏について、トランプ氏は当初『ロケットマン』と呼んだ。それから『リトル・ロケットマン』とも呼んだ。 しかし会ったあとは、『バースデーカードをもらった』とか、『手紙をもらった。この美しい手紙を見ろ』とか安倍元首相に見せるぐらい、自慢するぐらい”ストロングマン”が好きなんだなと思った」
そして、石破首相がそんなトランプ氏と向き合う中で、「戦略性の無さを感じる。安倍元首相はガチガチに戦略を練って行った」と指摘した。
【岩田氏】「トランプ氏に会ったとき、『北朝鮮はどんな国?金正恩は天才なの? 狂ってるの?』と聞かれた。『”世界のトップになる男”がこんなことを聞くのか』と安倍元首相は思ったそうだが、『いい質問ですね』と言って、自身が北朝鮮を訪問したときのことを詳細にブリーフィングしたそうです。
トップから聞けたということで、トランプ氏は、『いいことを聞いた。これから北朝鮮外交はシンゾー(安倍元首相)に聞くよ』となった」
さらに、日本企業が「アメリカの工場でこれだけの雇用を生んでいる」
など、アメリカ経済への貢献をまとめた「マップ」を提示するなど、トランプ氏の関心事である経済や雇用に焦点を当てたアプローチも効果的だったという。
■石破首相の課題と「人間関係」の重要性
こうした上で、岩田氏が石破首相の「戦略性のなさ」を感じたのは、トランプ氏との会談実現に向けた一連の動きだという。
【岩田氏】「最初は(石破首相が)『会いたい、会いたい』って言って、日程調整して、結局だめだったとなって、『今度は2月でいい。就任後でいい』となって、会いたいのか、会いたくないのかもわからないと。
私は強行日程でも行った方がよかったし、戦略的にやるのであれば、安倍昭惠氏が訪米した後に、しれっと電話かけたらどうだったかと思う。『招き入れてくれてありがとう。お土産もらいましたよ』って電話してたらどうだったかなって」
■新たな外交戦略の提案
一方、立岩氏はすぐに会談すべきか、という質問には「微妙だ」と答えた。
【立岩氏】「トランプさんって、私が見ている範囲でいうと、あんまり人情味ないんですよ。自分にとってメリットがあるかどうかってものすごい見る人だから、同盟っていうものに懐疑的で、日本は同盟国の親しいパートナーの首相が行くとなるが、トランプ氏がそういうふうに見てくれるかは、慎重になった方がいい」
■石破首相とトランプ氏の会談実現 カギを握るのは首相と「犬猿の仲」麻生氏か
果たしてトランプ氏と石破首相の会談は実現するのか。
カギを握るのは、石破首相と「犬猿の仲」とされる自民党の麻生太郎最高顧問だ。
麻生氏は去年4月、再選を見越してトランプ氏と会談している。
石破首相も6日に出演した番組で「そういう方々の知恵や経験、人脈は最大限に生かすのが日本のため。私がお願いして行っていただくことも十分ある」と発言していた。
これについて岩田氏は…
【岩田氏】「首相経験者に特使を頼むのはありうることですが、麻生氏は(石破首相にとって)いわゆる政敵になりますから、実際に頼むかというと、ありとあらゆる手を尽くすということになれば『特使として行ってください』というのはありうると思います。
麻生氏も安倍内閣の時にペンス副大統領と会ったり、安倍元首相とトランプ氏の会談に同席したりしていて、トランプ氏のやり方はよくわかっていますが、アドバイスできると思いますが、本当にこれがポイントだよということを教えるか、ですよね」
このように述べて、石破氏の自民党内での人間関係を懸念した。
それでは麻生氏と関係性のいい高市早苗氏が首相になっていれば、トランプ氏との関係もまた違っていたのだろうか。
【岩田氏】「違ったのではないでしょうか。また自民党の茂木前幹事長は、『タフネゴシエーター』ということで、トランプ氏の覚えがめでたいですので、こうした人たちが周りを固めていたら、展開が違っていて、政権が安定していると思えば向き合い方も変わってくるでしょうから」
■立岩氏提言「石破首相の最側近の直で話せる政治家を駐米大使に」
トランプ氏との関係をめぐって、立岩氏は斬新な提案を行った。
【立岩氏】「私は駐米大使を、石破さんの最側近の政治家を特別任用して、行かせるべきです。ワシントンにいる大使が常に首相と直に話ができる人間で、なおかつ役人ではない、これがホワイトハウスには効く。石破首相がトランプさんと直でやり取りをするためだけの、政治家を直で送る」
このように提案し、適任だとする人物像について、岸田前首相の政権で官房副長官を務めた、木原誠二氏を例に挙げた。
【立岩氏】「若くて、やりとりができて、しかも国務省とかの顔色を見ずに、ホワイトハウスをしっかりと(交渉を)やれる。そうすれば日本の外交も変わりますよ」
トランプ氏の大統領就任を間近に控え、石破首相の今後の外交がさらに注目される段階がやってきている。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!2025年1月8日放送)