「森友公文書改ざん問題」めぐり 財務省職員の妻が「財務省から地検特捜部に提出された書類」の開示を求めた裁判 大阪高裁が「不開示とした国の決定」取り消し命じる 国の主張認め「不開示」の1審判決を破棄 2025年02月03日
「夫が自ら死を選んだ真相を知りたい」。
森友学園の公文書改ざん問題をめぐり、自殺した財務省職員・赤木俊夫さん(当時54歳)の妻・雅子さんが、国に対し、捜査の過程で検察に提出した文書の開示を求めた裁判の控訴審判決で、大阪高裁は30日、国側の主張を認めた1審判決を取り消し、文書を「不開示とした国の決定」を取り消すよう命じました。
赤木さんの妻・雅子さんは、法廷で弁護士に握手を求められ、勝ったことに気付き、涙を流していました。 そして弁護士とがっちり手を握りながら、涙を流しながら、判決を聞いていました。
■「犯罪行為をしてしまった、僕は犯罪者なんだ、内閣が吹っ飛ぶようなことをしてしまったんや」と語っていた赤木俊夫さん
大阪府豊中市の国有地が8億円以上値引きして学校法人「森友学園」に売却され、財務省が関連する公文書を改ざん・破棄するという前代未聞の事態。
俊夫さんは、この改ざん作業を強いられ、うつ病を発症して自ら命を絶っていました。
妻・赤木雅子さんは、夫の様子をこう振り返ります。
【赤木雅子さん】「『犯罪行為をしてしまった、僕は犯罪者なんだ、内閣が吹っ飛ぶようなことをしてしまったんや』とは言っていたので。『死ぬ。死ぬ。もう僕は死ぬんだ』ってことばっかり言って」
■改ざんは当時の理財局長・佐川宣寿氏が「方向性決定づけた」も 「いつ・誰が・どのような」指示を出したのかは未解明
財務省は調査報告書で当時の理財局長・佐川宣寿氏が「改ざんの方向性を決定づけた」と結論付けましたが、「いつ・誰が・どのような」指示を出して、改ざんが進んでいったのか、その詳細は今もなお明らかになっていません。
こうした状況で、妻・雅子さんは真実を知ろうと2つの民事裁判を起こしました。
そのうちの1つ、国と佐川氏に対し損害賠償を求める裁判では、国が訴えを認める「認諾」をして裁判が終結し、残る佐川氏との裁判は現在、最高裁へ上告しています。
■「地検特捜部に財務省が任意で提出したとみられる書類の開示を求める」裁判とは
もう1つが一連の経緯を捜査していた大阪地検特捜部に対し、財務省が任意で提出したとみられる書類の開示を求める裁判です。
俊夫さんが亡くなったあと、雅子さんが財務省の職員とのやり取りを録音していたデータでは、次のようなことが語られていました。
【音声データ】「検察に対して文書を提出する際に、赤木さんから相談を受けて。これまでの過去の経緯、東京からどういう指示を受けて、どういう修正があって、前後、きれいにきちんとまとめておられた。それ以外にも、例えば、データとかあったとは思うんですけど、普通に隠さず、全部(検察に)出てますから」
■国に求めても「『捜査に支障がある』と『有るか無いか』も明かさず」 裁判も1審は国の主張を認める
雅子さんは、財務省と近畿財務局に対し、検察に任意で提出したとみられる書類の開示を求めましたが、返ってきたのは「不開示決定」。
「捜査に支障がある」として、国はそうした文書が有るか無いかも明かしませんでした。
そこで雅子さんは、国に対し、この「不開示決定」を取り消すよう求めて裁判を起こしましたが、1審では(大阪地裁・徳地淳裁判長)国の主張を全面的に認め、雅子さんは控訴していました。
■「文書を不開示取り消すよう命じる判決」 妻・雅子さんは涙を流しながら判決を聞く
そして30日、大阪高等裁判所は1審の判決を取り消し、文書を「不開示とした国の決定」を取り消すよう命じました。
判決で大阪高裁(牧賢二裁判長)は、国側が主張してきた「捜査に支障がある」という主張について、「国有地の売却に関する事件の財務省に対する捜査は、2019年8月に不起訴処分がなされており、その時点で捜査は終結しているから、不開示決定がなされた2021年8月、10月時点で、捜査などに支障を及ぼすおそれがあるということはできない」と指摘。
さらに「同種の事件の将来の捜査への影響」についても、「捜査機関が改ざん等の対象となった文書自体やその前後の文書を証拠として取得しようとするのは一般的」、「同種の事件の捜査であっても、事案や提出を求められる個人や組織によって、文書の種類や名称、作成時期などは多種多様で、ほかの同種事案にも通用する法則性を見出すのは困難」などと指摘し、「捜査に支障を及ぼすおそれは認められない」と判断しています。
■「勝つんじゃないかと思っていた。『勝った』と伝えたい」
赤木さんの妻・雅子さんは、法廷で弁護士に握手を求められ、勝ったことに気付き、涙を流していました。 そして弁護士とがっちり手を握りながら、涙を流しながら、判決を聞いていました。
閉廷後には取材に応じ、次のように述べました。
【赤木雅子さん】「夫が亡くなって時間が経ったが、2020年3月に裁判始めてから一度も勝ったことがないので、どんな感覚かと思っていたが、(代理人弁護士の)生越(照幸)先生が手を握ってくれて、苦労が報われた気がします。 ただ、これから色んなことがあるので、喜んでばかりもいられないです。苦しいことも楽しいことも、記者や友達に励ましてもらいながらやってきました。
上告はとにかくしないでほしいです。朝、起きた時に、今日勝つんじゃないかと思っていました。『勝つよ』と伝えてきたので、『勝った』と伝えたいです。 とにかく(代理人弁護士の)先生方に一生懸命やってもらってたけど、分からないことも多くて、先生と対立したこともあったので、でも信じてやってきてよかったです。先生に感謝を感じました」