和歌山県紀の川市で、小学5年の男の子が殺害された事件から10年。
父親は「受刑者の本心を知りたい」と、今でも戦い続けています。
和歌山県紀の川市に住む森田悦雄さん(76)。10年前、この場所で息子の都史君(当時11歳)が、近くに住んでいた男に刃物で何度も切り付けられ命を奪われました。
森田さんは今でも気持ちの整理がつかず、納骨ができていません。
【都史君の父・森田悦雄さん】「これからまだまだ戦いは続くと思うので。(都史君が)『これやったらいいよ」と決まったら、お父さんは納骨する気持ちはあるから」
■息子を殺害し服役中の男からの賠償「1円も入っていないし…」
逮捕された中村桜洲受刑者(32)は、懲役16年の判決を受け服役していて、民事裁判では約4400万円の賠償を命じられました。
森田さんには、葬儀や弁護士費用などの負担がかさみ、その支払いは7年間続きました。
【森田悦雄さん(2023年)】「(賠償金は)1円も入っていないし、一言の謝罪もないです」
さらに、支払われていない賠償金はあと3年で“時効”となり、受け取る権利がなくなってしまうのです。
■「心情等伝達制度」で息子を殺された父が受刑者に気持ち伝える
受刑者は事件についてどう思っているのか…。森田さんは国の制度を使って気持ちを伝えることを決めました。
「心情等伝達制度」は、刑務官が遺族や被害者の思いを対面で聞き取って受刑者に伝え、その時の反応や答えなどを書面にして返す制度です。
去年10月、受刑者からきたのは意外な「返事」でした。
【中村受刑者からの「返事」(心情等伝達結果通知書)】「謝罪の意思はあります。謝罪の手紙を書いて、親に送ります。慰謝料の支払いの意思もあります。支払い計画は、親と相談します」
「毎年2月5日は、被害者に手を合わせています。すみませんでした」
「返事」には、謝罪の言葉と、賠償金を支払う意思が書かれていました。
■受刑者の本心を知れるまで何度でも思いを伝える
【森田悦雄さん】「最初はいいなと思ったんですけど。その(謝罪の)方向に向いていてくれたら、私らも少しは…と思いながら、2、3日考えていたんです。『あまり素直すぎるやん』と思いながら。こんな気持ちほんまにあるんかなと」
この返事から4カ月以上たった今、受刑者からは何の動きもありません。
不信感がつのった森田さんは1月、再び制度を使うことに。
受刑者の本心を知れるまで何度でも思いを伝えると決めています。
(Q.2回目でもし(中村受刑者の)本心が知れなかったら、どうしますか?)
【森田悦雄さん】「3回目もするつもりです。納得できる答えじゃなかったら、3回目も4回目も、この制度がある限りは、ずっとやるつもりでいます」
■「こんなこと許されない。法制度含めて変えなきゃ」遺族への賠償をジャーナリストは指摘
「受刑者の本心を知りたい」という遺族の思いがあります。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】「当然でしょう。何の罪があるんですか。それとやっぱりお金を払いなさいという民事訴訟の結論が出ているんだけれども、受刑者本人や受刑者の家族が払わなければ、止まっちゃうわけです。国家賠償じゃないけど、国が肩代わりするとか、仕組みを変えないと、結局何もしないでいたら、受刑者側が有利になっちゃう。こんなこと許されないと思います。僕は法制度含めて変えなきゃいけないと思います」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年2月5日放送)