おととし、和歌山市の選挙の演説会場で自作の爆発物を投げ込み、岸田前首相らを殺害しようとした罪などに問われている木村隆二被告(25)の裁判員裁判で、被告人質問が行われています。
木村被告はこれまでの「殺意はありません」と殺人未遂罪について、殺意を否認しています。
■動機は選挙制度に不満も注目されず「関心を集めるため」
木村被告は事件を起こした動機について、選挙に立候補するための年齢や供託金などの制度について不満があり、国を相手に民事裁判を起こしたものの、注目されていなかったことから、「関心を集めるため」と説明しました。
木村被告は、選挙に立候補する年齢の制限があることや、供託金が必要であることから、2022年7月の参議院議員選挙に立候補できなかったのは不当だとして、国を相手に民事裁判を起こし、2022年11月に1審の神戸地裁で訴えを棄却され、事件後に敗訴が確定しています。
■狙いは「岸田さん」 計画は事件前年の12月から
木村被告は、弁護側の質問で、「爆弾を作っている時はどういう計画だった?誰を狙うかを考えていた?」と聞かれ、「当時の岸田さんです」と答え、事件で狙っていたのは岸田前首相だったと明かしました。
また、事件をいつから起こそうと思っていたのか、という質問に対しては、「2022年12月頃だったと思う」と答えていて、事件の4カ月前から計画を始めたことがわかりました。
■自作の爆発物を実験し「あまり危険は感じなかった」
木村被告は、事件を起こす前に自作の爆発物を山の中で爆発させる実験を行っていて、それについての弁護側が質問しました。
【木村被告の弁護側】「実験の結果どう感じた?」
【木村被告】「上にとんだだけなので、あまり危険は感じなかった」
【弁護側】「人がいるところですると、どうなると思った?」
【木村被告】「投げると煙がたくさん出るので、逃げるだろうと」
また弁護側は、「着火から爆発まで1分かかっている」ことについて質問しました。
【弁護側】「1分ぐらいで爆発してるが、短くできるか?」
【木村被告】「導火線を短くしたらできる」
【弁護側】「なぜ1分もかかる導火線にしたのか?」
【木村被告】「大きな音を出すためで、1分すればだれでも逃げられると考えた」
■「総理大臣という有名な人のそばで、大きな音を出すと私に注目されると思った」
そして、弁護人の「爆発物を爆発させただけでは、あなたの政治的主張は伝わらないのでは?」という質問に、木村被告は次のように答えました。
【木村被告】「総理大臣という有名な人のそばで、大きな音を出すと私に注目されると思った。その時、私は(選挙制度について国と)裁判をしていたので。ケガをさせるつもりではなかったのですが、結果としてケガをさせてしまって申し訳なかったです」
事件では2人が軽傷を負っています。
さらに「計画しているときに、逮捕は想定していたか?」という質問に木村被告は、「はい。逮捕されると思っていました」と罪に問われることを想定していたと明かしました。