大阪・関西万博の開催まで残り62日となる中、社会学者の古市憲寿氏が関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」に出演し、万博後の課題について警鐘を鳴らしました。
古市氏は、万博の意義や開催後の利用計画について、独自の視点から分析し、懸念を表明しています。
■万博の意義の変化 「単なるお祭りから街づくりへ」
古市氏は、過去30年間で万博の意義が大きく変化したことを指摘しています。
【古市憲寿さん】「実はこの30年間で万博の常識がガラッと変わった。前回、大阪で行われた万博と違って、この30年間の万博はただのお祭りじゃない。要は万博を通じて、どんな町を作りたいかというレガシー、万博後に何を残せるかを考えて、万博もオリンピックもしましょうというのが、この世界のトレンドになった」
古市氏によれば、現代の万博は単なるイベントではなく、開催地の将来を見据えた街づくりの一環として位置づけられているそうです。
■世界の万博跡地の現状「基本的に栄えてない」
古市氏は、世界各地の万博跡地を取材した経験から、多くの跡地が有効活用されていない現状を指摘しています。
【古市憲寿さん】「私は世界の色々な万博に行ってるんですけど、20カ所ぐらい行ってます。やっぱり半分以上は廃墟になってる。『万博開催しました』はいいけれども、スペインのセビリアにしても、ドイツのハノーファーにしても、イタリアのミラノにしても、やっぱり基本的に栄えてない万博跡地は」
多くの万博跡地が廃墟と化している背景には、立地の問題があるようです。
【古市憲寿さん】「やっぱりすごい街外れに作るじゃないですか。街外れに作って、パビリオンはたくさん建てるんだけど結局、何も残せずに、『都市開発どうしよう』とまいっている所が多い」
古市氏は、大阪・関西万博についても同様の懸念を抱いているようです。
【古市憲寿さん】「だから大阪・関西万博も、僕はそれを一番懸念してて、多分万博にそこそこ人は来ると思うんですよ、始まっちゃったらね。特に関西の人ってうかれやすいじゃないですか?だから始まったら多分みんな行っちゃうんだけど、そこはいいんだけど、じゃあ10月に終わった後に『どうしましょうか』ってことが、あまり考えられてない」
万博期間中の集客には問題がないものの、終了後の跡地利用計画が不十分であることを指摘しています。
■民間事業者から募集するも「順序が逆」
大阪・関西万博の跡地利用計画については、現在民間事業者からの募集が始まっているそうです。
【古市憲寿さん】「一応、跡地利用計画の検討みたいなことを民間事業者から募集して始めてはいる。サーキットにしようとか案はある。でもそれ逆で、本当は万博誘致する段階で、『これを作りたいから万博誘致しましょう』としないといけない」
古市氏は、跡地利用計画を先に考えてから、万博を誘致するべきだったと指摘します。
■理想的な例はロンドンオリンピック 「街を作りたいから税金使った」
古市氏は、理想的な大規模イベントの例として、ロンドンオリンピックを挙げています。
【古市憲寿さん】「だからロンドンオリンピックとかそうで、ロンドンオリンピックでこういう街づくりをしたいからオリンピックを開いた。ただの運動会のためにお金使ったわけじゃなくて、街を作りたいから税金を使った」
ロンドンオリンピックでは、街づくりの計画があってこそのオリンピック開催だったと指摘しています。
■大阪・関西万博の課題:街づくりの視点の欠如
最後に、古市氏は大阪・関西万博の最大の課題として、街づくりの視点が欠如していることを挙げています。
【古市憲寿さん】「でも大阪・関西万博からその観点がほぼなさそうなんで、『大丈夫なの?』というのが僕の懸念」
古市氏は、万博を通じた街づくりという視点が欠けていることに強い懸念を示しています。 大阪・関西万博の成功は、開催期間中の賑わいだけでなく、その後の跡地利用や地域発展にかかっています。 古市氏の指摘を踏まえ、万博終了後を見据えた計画の見直しと、街づくりの視点を取り入れた取り組みが求められそうです。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年2月10日放送)