いよいよ大阪・関西万博開幕まで2カ月あまり。 大きな課題となっているのが、ネット購入を基本としているチケットの売れ行きです。
背景には「チケットが買いにくい、分かりにくい」という声もある中、実際にどれだけややこしいのか、徹底調査しました。
【機運醸成委員会 松本正義委員長】「もう何でもありやと。必死になってチケットを売る。赤字を出してはいけない。皆さん買ってください、よろしくお願いします」
10日、開かれた大阪・関西万博の機運醸成委員会。 危機感のにじむ発言のワケは…
「チケット売れてない問題」です。 実際に街の人にも聞いてみると…。
(Q.万博に興味は?)
【街の人】「ないねぇ」
(Q.万博行きたい?)
【街の人】「全然興味ないです」
いよいよ開幕まで2カ月だというのに、「万博に行きたい!」と回答した人は、およそ35%と低迷し、チケットの売れ行きが伸び悩んでいます。
2月5日の時点で、販売されたチケットの枚数は、およそ775万枚と目標の半分程度。
■長ーい「行列」は“万博名物” 大阪・関西万博は「並ばない万博」目指す
苦戦の原因の一つとして指摘されているのが、チケット購入の複雑さです。 これまでの万博といえば…。 1970年の大阪万博では見渡す限り、人、人、人。大行列がどこかしこにできています。
そして、直近のドバイ万博でも、人気パビリオンの前には行列が。 長ーい「行列」は“万博名物”のようなものでしたが、大阪・関西万博が打ち出したのは…。
【横山英幸市長】「(万博会場などに)スムーズに入場するための予約システムの導入などにより、“並ばない万博”を目指しています」
■まず必要な万博ID チケット購入と来場予約、パビリオンの観覧は別に予約が必要
「並ばない万博」実現のためチケット購入の基本となるのが、ネットでの販売。 まず、チケットを購入するために必須となるのが、万博IDの登録。 IDの登録が完了すると、ようやくチケットの購入に進むことができます。 さらに、来場日時の予約や、パビリオンの観覧も、別に予約が必要と、とってもややこしい。
■「難しい」「ネット手続きは苦手」な担当者たち 事務総長は「普通の人であればできる」
この状況に各国の担当者からもさまざまな意見が。
【イギリスパビリオン担当者】「チケットを買う時は、何日・何時に万博に着くかを決めないといけない。ロンドンにいる人は今の段階では分からないので、それは難しい」
(Q.チケット購入は難しい?)
【イタリアパビリオン担当者】「私は歳だから(笑)。インターネットの手続きは苦手です」
博覧会国際事務局のトップも改善を求めていますが、協会トップはというと…。
【博覧会協会 石毛博行事務総長】「家族がやっていて、『難しいか』と聞いたら、『いや、まぁできるよ』ということでありましたので、普通の人であればできるんだろうなと」
■本当に「まぁできる」? 大阪の街で実際に調査…声をかけるも断られまくる
ということで、ネットでのチケット購入は、本当に「まぁできる」のか?
街で実情を調査してみることに! 「万博には行きたいけど、チケットはまだ買っていない!」という人にチャレンジしてもらおう!と、声をかけますが…。
【街の人】「そんなん分からへん。使い方、分からへん」
(Q.一緒にやるんでよかったら?)
【街の人】「うーん。今はちょっとごめんなさい」
(Q.一緒に…)
【街の人】「いやいやいや…」
「面倒くさそう」と断られ続け3時間…ようやく協力してくれる人が!
【奈良県在住の男性(88)】「千里(1970年の万博)は、働き盛りやったから子供連れてよくいきましたけどね」
1970年の大阪万博にも足を運んだという、奈良県に住む88歳の男性。 ネット購入にいざ挑戦です!
まずは、「万博ID」の登録から。
(Q.メールアドレスは持っていますか?)
【奈良県在住の男性(88)】「あるけど覚えてない。どうしたらええ?」
記者がお手伝いして、設定画面まではだどり着きましたが…。
【奈良県在住の男性(88)】「プロフィール?」
【記者】「お父さんのお名前とか…」
序盤から苦戦しています。
続いて「パスワードの設定」に移りますが…。
【奈良県在住の男性(88)】「これでよろしいか?」
【記者】「10文字以上じゃないといけなくて、足らない」
【奈良県在住の男性(88)】「足らない」
【奈良県在住の男性(88)】「これでいけるかな?」
【記者】「まだ駄目ですね。大文字と数字と小文字を入れないといけない」
【奈良県在住の男性(88)】「・・・」
開始から15分。なんとか万博IDの登録完了。
【奈良県在住の男性(88)】「(紙に)書かなあかんな」
IDとパスワードを忘れないようメモをしていましたが、紙はポケットへ。なくしそうで心配です。
続いてようやく「チケットの購入」へ。 すると、画面に出てきたのは「ワンタイムパスワード」の文字。
【記者】「メール開いてもらって…あれ?ヤバイ…分からへん。ちょっと待ってください。えーこれ難しい」
レクチャーする記者(25歳)も分からなくなる始末。
【奈良県在住の男性(88)】「すごい手間や!あなたは文句多いから、受け付られませんって出るの違う?」
【記者】「あ!!!」
【奈良県在住の男性(88)】「『完了しました』やな」
30分以上かけてやっとチケットを買うことができました!
※日時予約は別途必要
【奈良県在住の男性(88)】「昔の(万博の)時は、並んだかしらんけど。暑い最中、2時間待ちとかあったけど、まだその方がええわ」
販売不振を打開するため、コンビニなどで「紙チケット」の販売も開始しましたが、周知の遅れからかあまり売れていません。
■「並ばない万博」どころではない…吉村知事が石破首相に直談判
この状況を受けて、先週、協会を通すことなく、大阪府の吉村知事らが訪ねたのは…、石破首相。
【大阪府 吉村洋文知事】「誕生日プレゼントも持ってきまして、万博の大阪メトロの新しい電車のピンバッジを」
鉄道ファンの石破首相の機嫌を大阪メトログッズでとり…。
【大阪府 吉村洋文知事】「当日券の販売ということも、検討すべきだと思っております」
「並ばない万博」どころではなくなったのか、当日券の販売を直談判しました。
“買いにくい”という声や、“当日券”について協会側は、どう受け止めているのか?
10日、万博のチケット販売などを管轄する責任者が取材に応じました。
(Q.「並ばない」コンセプトにはこだわらない?)
【日本国際博覧会協会広報・プロモーション 小林浩史局長】「元々たぶん『できるだけ並ばない』なんですけどね。必ずしもスマホいじったり、コンビニの端末操作も難しいなという方いらっしゃるのも事実。オプションを増やしていく。バランスの問題、あすから全部、当日券ばっかりということにはならない」
街で聞かれた「ネット購入の段階で、日時や入場ゲートの指定は難しい」という声をぶつけると…。 【日本国際博覧会協会広報・プロモーション 小林浩史局長】「そこで分かりにくいかどうかですね。(購入が難しくなっている)ポイントはそこではないかなと思ってる。このボタンは分かりにくくて、何を指しているか分からないとか、(チケット購入の)導線を改善することで、買われる方のストレスは変わるんじゃないか」
ネット購入などの改善に努めるとの答えにとどまりました。 来場者の目線に立ったチケットの販売方法を作り上げ、万博を盛り上げることはできるのでしょうか?
(関西テレビ「newsランナー」2025年2月10日放送)