和歌山市の衆議院補欠選挙の演説会場に爆発物を投げ込み、岸田前首相らを殺害しようとした罪などに問われた木村隆二被告(25)に対し、和歌山地方裁判所は懲役10年の判決を言い渡しました。
木村被告は殺意を否認していましたが、和歌山地裁は「多数の人が集まる場で、爆発させることは破片の飛び方によっては人を死傷させることは容易に想像できる」などとして、「爆発物の製造・使用は身体加害目的を伴うものであり、被告人には『未必の殺意』があったと判断した」と述べています。
■「演説会場に爆発物を投げ込み岸田首相らを殺害しようとした」罪などに問われた木村被告
木村被告はおととし4月、和歌山市の演説会場で爆発物を投げ込み、岸田前首相らを殺害しようとしたものの2人に軽傷を負わせるにとどまった、殺人未遂など5つの罪に問われています。
<木村被告が起訴された罪名>
・火薬類取締法違反(自宅で火薬製造、現場で火薬所持)
・爆発物取締罰則違反(爆発物の製造、現場で爆発物所持)
・公職選挙法違反(選挙の妨害)
・殺人未遂
・銃砲刀剣類所持等取締法違反
これまでの裁判で木村被告は「人を害する目的ではないです。殺意はありません」などとして殺意など一部を否認していました。
■争点は「殺意や人を傷つける目的があったかどうか」
争点となったのは、木村被告に「殺意や人を傷つける目的があったかどうか」でした。
裁判の中では爆発物の威力実験を行った専門家が検察側の証人として出廷し、再現実験で爆発した破片が厚さ9ミリのベニヤ板を、貫通したと説明し、木村被告が自作した爆発物には「殺傷能力があると思います」と証言していました。
一方、木村被告は初公判や被告人質問などで動機について、政治家になりたかったが、年齢の要件や供託金の問題で立候補できず、「選挙制度に不満を持っていて、世間の注目を集めたかったからだ」、「関心を集めるにはこういうことをしないとどうしようもないと思った」と説明していました。
そして検察側は「人が死傷する可能性が高い非常に危険な犯行」「民主主義の根幹である選挙制度を揺るがす行為」として、懲役15年を求刑していました。
■和歌山地裁は木村被告に「殺意があった」と判断
そして19日の判決で、和歌山地裁は木村被告に懲役10年の判決を言い渡しました。
木村被告が否認していた殺意については、「爆発物の製造・使用は身体加害目的を伴うものであり、被告人には『未必の殺意』があったと判断した」と述べ、殺意を認定しました。
その理由については、「多数の人が集まる場で、爆発させることは破片の飛び方によっては人を死傷させることは、特別な知識がなくても容易に想像ができる、殺意の認識を欠いていたとは言えない」と指摘しました。
さらに「懲役10年」という刑の重さの理由について、「使用した爆発物はいわゆるパイプ爆弾で、高速に破片が飛散する。複数人が飛散物で死傷する可能性があった。多くの人が集まるところで爆発させた犯行は危険。現職(当時)の総理大臣を狙って不安感を与えた。あえて現職総理(当時)を狙い、計画的な犯行。動機は極めて短絡的」と指摘しました。