兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑を調べる百条委員会の非公開の音声データなどを維新の県議がNHK党の立花党首に提供した問題。
これまでにも維新をめぐっては、斎藤知事のパワハラ疑惑、さらに岸和田市では、女性との性的関係を巡る問題が維新に所属していた永野市長に浮上し、維新に関わる問題は枚挙にいとまがない状態となっています。
関西テレビは維新の創設メンバー、松井一郎元代表を単独取材。松井氏は、なぜ維新は変わってしまったのか、その思いを語りました。
■「一連の問題、登場人物すべてが一般の住民の感覚とズレている」
Q音声データを提供したという一連の問題についてどう受け止めているか。
【松井一郎元代表】「一連の問題の登場人物すべてが一般の住民の感覚とズレていると思う。元県民局長さんが内部告発したということだけど、内部通報にあたるかの見解が別れている。この時点で元県民局長さんが全く行政の仕組みを知らないならまだ理解できるけど、元県民局長さんは僕と同い年ですよ。長い間兵庫県の中で仕事してきた幹部でもあった、人事もやっていた。元県民局長さんは内部通報の仕組みを熟知している。その中で法律家でも見解が別れる手法をとった。これがまず一つの『ズレ』」
「仕組みを熟知している人なんだから、正式な手続きを経て、県の正式な窓口に内部通報すれば、内部通報者として守られる対応になるのに、正式な窓口に通報する前に怪文書と言われるものをメディアに撒いた。まずここがなぜ?と。内部通報も両方やれば、斎藤知事は手続きにのっとって通報者守らなければならない。なぜ経験豊富な公務員がこのようなことをやったのか分からない」
「斎藤知事は怪文書を『嘘八百だ』と通報者を特定して処分するわけだけど、斎藤さん自身の感覚もズレていると思う。『嘘八百だ』というなら無視すればいい。それでも名誉棄損されているのなら、法的手続きをとればよかった。内部の調査で通報者を特定するから、通報者が追い詰められていく。『通報された元県民局長さんも服務規律を違反していた。だから処分』というのが斎藤さんの言い分だけど、あと何日かで定年退職するような大ベテランがなぜルールにのっとらずに、そういうことしたのか。公務員としての人生の中であるまじき行為があったわけですよ。それを隠したかったのか、どうなのか」
「斎藤さんに対しての様々なパワハラ疑惑を追及しようと、議会が百条委員会を設置して追及していくけど、ここもズレている。やるならなぜ秘密会にしなければならなかったか。もうオープンでいいじゃない」
■維新県議3人は「どうしても斎藤さんは悪くないというなら離党して、その時点で辞めないと」
【松井一郎元代表】「百条委員会ではまだ答えが出てないのに不信任決議を出した。おかしいじゃない。百条委員会は知事としての資質を問う場であったのに、議会が斎藤さんは県政を混乱させたから不信任だと。混乱のもとにあるパワハラがあるかはっきりさせないと。噂だけで知事を辞めさせるのか。これは政局になってくる」
「斎藤知事のこと応援しましたよ最初は。僕の部下だったし。でも議会からは、斎藤さんは議会との軋轢みたいなものもあったと。橋下さんもそうだったけど改革をしようとすれば、今までのやり方で仕事してきた人からすればやりにくい知事です。できれば辞めさせたいと思うでしょう。だから議会は政局をしかけて、議会の総意として不信任が成立する」
「あの時点での不信任もおかしいけど、全員が不信任に賛成した。不信任に賛成と言った今回の当事者が維新の3人。この人たちが斎藤さんを守ろうとした。じゃあ不信任に反対せえよと。不信任が党の方針だったというなら、維新を辞めればいいじゃない。でも不信任を出した限りは、斎藤さんがおかしいと議員として判断しているから、そこで斎藤さんを応援しようというのもまたおかしい」
「斎藤さんを応援するなら、当時のSNSでも『斎藤さんの未熟さを認めさせて謝罪させて、斎藤さんをもう一度応援すればいい』と言ったけど、兵庫の維新の皆さんはそうは判断しなかった。百条委員会の内部情報も、そもそも秘密会するのがおかしいけど、ルールを守らないと。その情報を立花さんに渡して選挙で立花さんが情報を言って斎藤さんが勝った」
「今回リークした3人、みなさんそれぞれ言い訳してます。言い訳は自己弁護だと思う。そしてもう一つ大きな筋違いが、みなさんメディア。『斎藤憎し』みたいなところが当時あった。『斎藤=極悪人』みたいな報じ方だった。誤ったメディア情報で、兵庫県民の皆さんが斎藤知事はおかしいという風潮が作られたから、すべてが自己都合で動いたんじゃないのと」
「立花さんが二馬力選挙と言われているけど、選挙は自分が当選するために出るもの。立花さんに情報提供していた人たちも、立花さんは発信力があるということだけど、自分たちも政治家なんだから。普通のメディアなら情報源を守るけど、立花さんは政党の代表だから、情報を持ってきた人の実名を出す。今回の問題の登場人物全員筋違いですよ。全員が反省すべきだと思います」
■今の維新は「古い政治の体質がしみ込んでしまった。残念で仕方ない」
Q維新の県議らが立花氏に情報提供したということについての問題性についてどう考えているのか。
【松井一郎元代表】「秘密会だと言いながら人の口に戸は立てられない。秘密会にしようと決めたのがおかしい。だから情報が人づてに出てくる。皆さんがその人づてをメディアとして流すから、県民の皆さんは何が正しいか分からなくなる。秘密会じゃなくオープンでやればいい。ただプライバシーのことがあるなら、議事録でその部分だけ黒塗りすればいいじゃない。でもそれをやらなかったことが一番の問題だと思う」
「その時点で僕らが作った時の維新とは違うよね。僕や橋下さんのときはどんな会議でもすべてメディアが入っていた。クローズで物事を決めることはなかった。これは有権者、住民の皆さんにすべて見てもらおうと。その部分が、維新の会が変わってしまったところ。もう一度原点に立ち返って、すべて情報はオープンにしなさいと。世の中のスタンダード、世の中の皆さんの感覚に沿った行動をしないと」
「僕や橋下さんが『維新の会』を創ったというのは、政治の世界で世の中の感覚とずれすぎてるから、今から15年前に新しい政党を立ち上げた。それが15年経ったら『政治というのは水面下でものを動かしていくものだ』なんていう古い政治の体質がしみ込んでしまった。残念で仕方ない」
「だから維新という組織に対して厳しいご意見をいただいていると思う。当初、維新という組織をつくった精神を吉村さんが指導するべきだと思う。吉村さんもその時に民間人として、政治の感覚がおかしいと我々の公募に応じて来たんだから、その感覚を失ってるんじゃないのと思う」
■「ガバナンスというのは、組織の中で愛されると共に恐れられるのも必要」
Qなぜ維新は変わってしまったのか。
【松井一郎元代表】「吉村さんは頑張ってるんだけど、恐れられてないんじゃないか。慣れ合いみたいなものが、執行部と特別党員の間にあるんじゃないか。吉村さんは知事でもあるから、知事の仕事をしながら党の代表という、僕も橋下さんもやってきたことだけど精神力、体力もいる」
「そんな中で組織も大きくなってきたから、ガバナンスも効いてない。ガバナンスというのは、組織の中で愛されると共に恐れられるの必要だと思う。吉村さん一人で無理だから今の新しい執行部、特に要となる幹事長が党全体の力不足、まだそれだけの人を束ねられる実力が備わっていない。難しいけど。執行部の一員で役職に就けば、そこはどれだけ血ヘド吐いてもやり切らないと。その覚悟が薄いのかな」
「僕や橋下さんのときは政治の世界でこれで生きるか死ぬかみたいな、当時の大阪と言ったら、自公民で仕切っていてそこと対抗するわけだから。政治家としてのすべてをかけてやっていた。それが長く15年ほど続いてくるなかで、漫然ととんがり続けなくても、生存していけるんじゃないのという甘さがあるんじゃない」
■「候補者選びは僕の責任もある」
Q維新の候補者選びについてどう考えているか。
【松井一郎元代表】「これは僕の責任もあると思います。2011年に公募してきた最初のメンバーは本気で大阪を変えようとして志を持って集まってきた。その時に公募してきたのが吉村さんや横山さん(大阪市長)。維新スピリットが染みついているメンバーだけど、それを地方選挙でいうと15年、19年、23年やっていく中で大阪のみならずどうしても広がっていくわけ。でも最初の熱量は薄れていく。すべて全員僕が面接できるか、物理的に無理。僕が直接面接したのは11年のメンバーのみ、組織で公募を選んでいくから直接会えていない人が圧倒的に多い」
「一度バッジを付けたら居心地良いからね。地方議員と言っても、年収1000万円から1000万円弱、安くても7、800万円あるんじゃないの。維新の看板でそれが手に入る。今度は自分のバッジをいかに維持していくかということになり、当初の志はどこかに置き忘れる。国会議員も一緒。国会議員、政治家の身分にメス入れないと変わらない」
■「維新は結党から15年経って悪い政治の集団の感覚になった」
Q斎藤知事をめぐる問題や岸和田市長の女性問題など、維新において様々な問題が相次いでいる状況についてはどう思うか。
【松井一郎元代表】「残念やね、でも僕にも責任があるわけだから。今のメンバーは直接僕が会ったわけじゃないけど、僕の時代に公認した人もいる。吉村さんは今頑張ってやってるけど、吉村さんに申し訳ないけど、もう一度結党した2010年の志や熱量を伝えてもらいたい。でないと多分もうせっかく応援してくれた人たちを裏切ることになるのかな」
Q兵庫維新の県議に志や熱量などそういうものはあったのか。
【松井一郎元代表】「それはもうズレてるよ。結党のときの精神の熱量は、そもそもその人たちは我々が結党したときにはいないけど、維新スピリッツといわれるものが薄れているというか、自分のポジション、自分が政治家であるために動いてしまっている。維新は政治の世界が民間の感覚とズレているから、僕と橋下さんでおかしいよねって創った。それが15年経って悪い政治の集団の感覚に。熱量が足りないし甘えとるね。政治家としてのポジション、保身やね」
■「吉村さん一人にコントロールさせるというのは人間ですから限界がある」
Q吉村さんの今回の問題への対応についてはどう思うか。
【松井一郎元代表】「僕や橋下さんは創業したから、元々失うものもなかったから、それを引き継いでくれると遠慮があると思うよ。組織を上手にまとめようと。僕らは上手にまとめようなんて思ってなかった。吉村さんは今苦労していると思う」
「吉村さんが言葉足らずの部分で、情報を県民に隠すのではなくて伝えたいという意味での『思いは分かる』ならいいんだけど、当該の3名が起こした行動の『思いが分かる』というのはズレてるよね」
(※吉村代表は3人の県議が立花氏に情報提供した問題について、3人の県議の「思いは分かる」と発言)
「吉村さんをサポートする執行部がすべて『吉村頼り』じゃなくて、吉村さんが言いにくいことは執行部でやらないと。吉村さんが矢面に立って一人でやっているというのは吉村さんにとって厳しい環境になってるなと」
Q組織がどんどん大きくなっているからこその吉村さんの苦労なのか。
【松井一郎元代表】「まあそうやろね。吉村さんにすると、2011年に一緒に公募してきたメンバーを守っていきたい。僕や橋下さんは、維新は政策を実現する道具だから 、守りたいなんて一言も言ったことはなかった。そこの感覚は、我々と吉村さんが同じ感覚でというのは無理がある。そういう中で頑張ってくれてるので、サポートする人たちがもっと前に出ないと。吉村さん一人にコントロールさせるというのは人間ですから限界があるんじゃないの」
■「保身なく政策実現して議員バッジにこだわらない、最初の思いを思い出してほしい」
Q維新はどうあるべき、どう変わっていくべきなのか。
【松井一郎元代表】「保身なく、やればいいのよ。一番最初のときにポジションに就きたかったわけじゃない。大阪をなんとかしたいとみんな参加した。吉村さんにしても横山さんにしても、知事でありたい市長でありたいと思っていないと思う。でも組織の中には、自分が議員でありたい、市長でありたいと保身の塊になってる人がいる。だから保身なく政策実現して、議員バッジにこだわらない、そういう最初の思いを思い出してほしい」
Q橋下さんが兵庫維新解散すべきだと言っていたことについてどう思うか。
【松井一郎元代表】「兵庫維新は解散できへんやないの。どうやって解散させるの。だから組織としてもう一度出直せと思う」