大阪市内全域で路上喫煙が禁止になってから1カ月。
大阪市は「目標とする数の喫煙所を設置できた」としていますが、取材を進めると数字稼ぎにもみえる実態が。
■1カ月前と比較すると並んでいる人の数はあまり変わらず
【記者リポート】「大阪市北区の喫煙所です。お昼の時間帯になり続々と人が訪れていますが、外にあふれ行列ができています」
オフィス街にある喫煙所。昼時になるとこの混雑具合です。中に入ることは諦めているのか、随分手前から吸い始める人も…。
大阪市内全域で路上喫煙が禁止になってから27日でちょうど1カ月。1カ月前と比較すると並んでいる人の数はあまり変わりません。
【喫煙者】「ここはいつも10人以上集まって、吸える場所を探すのが大変」
喫煙所は足りているのか?
【大阪市・横山英幸市長】「350カ所を今現在確保しているところです」
■1軒のパチンコ店で登録されている喫煙所が7カ所?
目標とする喫煙所の数は”達成した”としていますが、市の指定喫煙所に行ってみると…
【記者リポート】「こちら大阪市のマップを見ると、このあたりかなり喫煙所が密集しているように見えるんですが、実際に行ってみると…こちらのパチンコ店で7ヵ所もの喫煙所が登録されています」
1軒のパチンコ店で登録されている喫煙所が7カ所!?
350カ所設置したとされる喫煙所の”からくり”を徹底調査しました!
■指導員による路上喫煙の取り締まりも簡単ではなく…
今月17日、大阪市内で行われていたのは、大阪市の指導員による路上喫煙の取り締まりです。
【大阪市環境局・指導員】「ちょっと嫌なこと言わなあかんねやけど、罰則があってね…1000円いただかなあきませんねん」
【路上喫煙者】「はい、はい」
【大阪市環境局・指導員】「(路上喫煙禁止)知ってはりました?」
【路上喫煙者】「知らんっす」
先月27日の条例改正で、路上喫煙禁止のエリアが市内全域に拡大され、違反者から1000円の過料を徴収しています。しかし、市内全域での取り締まりは簡単ではないようです。道路の向こう側に違反者を見つけても…。
【大阪市環境局・指導員】「信号が…向こうに入っていったな」(赤信号で違反者の近くに行けず)「もう諦めますか、もう無理やな」
■指導員は4倍でも大阪市全域で1日平均わずか7人ほどの徴収
大阪市は指導員の数をこれまでのおよそ4倍に増やしましたが、このおよそ1カ月で過料を徴収できたのは184人。大阪市全域で1日平均わずか7人ほど。
指導員も、もどかしさを感じているといいます。
【大阪市環境局・指導員】「吸いたいところとか欲しいところに喫煙所が建てられないところがあるので、少ないと言われることはあるので。実際、もうちょっと(喫煙所が)あった方がええかなと。遠いと『あそこまで行かなあかんのか?』とかいうことになってしまうので、指導もやりにくい」
現場の指導員は「喫煙所の不足」を指摘しますが、大阪市の横山市長は。
【大阪市・横山英幸市長】「350カ所の(喫煙所の)設置が進められてきたところです。引き続き対策については当然考えていきたい。全てこれで課題解決して『ゴールです』という認識ではありません」
■JR天満駅近くの喫煙所は目立った混雑は見られず
しかし…市が公開している喫煙所のマップを見ると喫煙所がない”空白地帯”があちこちに。果たして、喫煙所は適正に配置されているのでしょうか。
まず市内中心部の2カ所の喫煙所を取材。JR天満駅近くの喫煙所を見てみると…
【記者リポ】「JR天満駅から徒歩3分のこちらの喫煙所。外に並ぶほど混んではいません」
目立った混雑は見られず、中のスペースにも余裕があります。
【喫煙者】「天満駅にもありますし、扇町公園に2カ所あるから、おかげさんで今はありがたい状態」
■本町駅近くにある喫煙所は正午からの1時間で160人を超える人
一方、大阪メトロ・本町駅近くにある喫煙所では…
【記者リポ】「昼の12時半ですが喫煙所の中は満員で外でタバコを吸っている人がいます。あちらの男性2人組は公園のフェンスに腰かけて電子タバコを吸っています」
喫煙所に入りきらない人が公園や道路でタバコを吸う事態に。
この喫煙所が設置されている公園で美化活動を行う男性は…
【阿波座東町会長 小野雄二郎さん】「体操しながら見てんねや。あそこ吸うてるやろ。向こうも吸うてる。多いときは25人くらいいてると思うわ」
実際に正午からの1時間で2つの喫煙所を比較してみると…天満駅付近の喫煙所は利用者が34人だったのに対し、本町駅付近の喫煙所は周りで路上喫煙している人も含めると160人を超える人が。
なぜ人が密集するのか普段この喫煙所を利用している人に聞くと…
【喫煙者】「ここしかないので、みんないろんなところから集まってる」
■350カ所のうち100カ所以上がパチンコ店にある喫煙所
マップを見てみると、オフィス街で人が多いにも関わらず、この場所の西側には喫煙所はゼロ。必要な場所に喫煙所が配置されているとは言えない現状です。
さらに取材を進めると大阪市が確保したとする”350か所”という数字にもからくりが‥‥
【記者リポ】「市のマップを見ると密集しているように見えるが行ってみると、一つのパチンコ店に7か所の喫煙所が登録されていて…あちらの商店街の中のパチンコ店でも7か所の喫煙所が登録されています」
大阪市が確保した350カ所のうち100カ所以上がパチンコ店にある喫煙所なんです。数字稼ぎにも見える現状に横山市長は…
【大阪市・横山市長】「数字をごまかしているつもりはなくて提供いただいているカ所数を公表しているだけ。適切な場所に適切に配置できるように対策を進めていきたい」
■土地の所有者にとって駐車場として貸した方が利益が大きい
一方、喫煙所を増やそうとしてもすぐには増やせない現状も。
【クラート 吉田功社長】「大変でした。まずは場所探しですね。相手としては採算があわないので」
喫煙所の設置などを行う会社の吉田さんがこの日、訪れたのは大阪市内の不動産会社。
【ミキホーム 池田光男代表】「いろいろ回ったけどオーナーは魅力がないということで要望が通らなかったのが現実です」
喫煙所の設置について相談するも、土地を貸してくれる人は少ないようです。というのも、大阪市は上限1000万円の設置費用のほか、維持管理費として年間上限で144万円を補助。しかし、土地の所有者にとっては、駐車場として貸した方が利益が大きく、喫煙所を設置するメリットがあまりないといいます。
【ミキホーム池田光男代表】「コインパーキング提供するだけで1区画最低でも7万円くらい。中心部外であれば提供者が現れますけど、そんなとこに出しても仕方ないからね。メインのところ作っていくなら(補助金を)あげてあげないと」
吸う人も吸わない人も快適に過ごすために…継続した行政の支援が求められます。
■4月からさらに減る「喫煙可能飲食店」菊地弁護士「たばこたしなむ幸せも守って」と指摘
取り締まりを行う指導員も喫煙所が足りていないことに頭を悩ませている現状ですが、大阪府ではさらに喫煙の規制について今後厳しくなります。
大阪府内の飲食店では現在、客席面積100平方メートル超えの飲食店は原則屋内禁煙となっていますが、4月からは、そのおよそ3分の1となる、30平方メートルを超える飲食店でも屋内禁煙となります。
大阪市では路上喫煙が禁止されている上に喫煙できる飲食店の数も減ることになります。
この状況にコメンテーターの菊地幸夫弁護士は次のように指摘します。
【菊地幸夫弁護士】「私は吸わないので、煙が少なくなることはうれしいですけど、いまは社会の中でたばこを吸う方のほうが少数者なんでしょうね。社会の少数者をどう守っていくかは、その社会の人権維持の精神の現れなんですよね。
少数者だから、いい加減に扱っていいっていうことではない。きちんとたばこをたしなむ幸せは、他の人に迷惑をかけない範囲で、味わうようにしていただきたいですね」
■JR福島駅周辺の喫煙所はわずか3カ所 うち2カ所は「店舗利用者のみ」
規制が強化されるということは、店外で喫煙しないといけないケースが増えそうですが、取材をする中で課題も浮き彫りになっています。
例えば飲食店がひしめくJR福島駅付近は、飲食店もかなり多い地域ですが、駅から徒歩10分圏内に大阪市が公開している喫煙所はわずか3か所のみで、うち2か所は店舗利用者に限られています。
こうした現状から、路上喫煙者はさらに増えてしまうのでは、という指摘もあります。
大阪市の横山市長は、「1カ月経って、喫煙所のニーズがどのエリアに必要なのかということを的確に把握して対応していきたい」と話しています。 今後の対応が注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」2025年2月27日放送)