多くの人が手にしたことがある製品が突然、発火する事故が相次いでいます。
その原因となっているのが、モバイルバッテリーなどに使われる「リチウムイオン電池」。
■『リチウムイオン電池』を使った電動アシスト自転車が炎上
これは、東京消防庁が公開した映像。電動アシスト自転車に乗っていた人が転倒し、荷物に手を伸ばしたその時…オレンジ色の炎が!
もう一度見てみると…転倒した時点ですでに自転車には白い煙が出ていて次第に炎が上がります。ついには爆発したかのように炎上!発火の原因は、電動アシスト自転車の『リチウムイオン電池』です。
モバイルバッテリーなど、充電式の様々な製品に使われている『リチウムイオン電池』。
急速な普及の裏でトラブルが。
激しく炎をあげるモバイルバッテリー。
実際に映画館の座席や職場の事務所、さらには電車内でも発火事故が起きています。
街で聞いてみると皆さんの身近にもリチウムイオン電池が。モバイルバッテリーや電子タバコ、そしてこんな体験談も。
【街の人】「一度電車の中で、モバイルバッテリーみたいなのが焦げて煙が出たみたいなので、(電車が)止まってあれ何があったんだろうと」
【街の人】「充電ができなくなって、すごく発熱して。ちょっと怖いなと思ってやめたのが2回ある」
■リチウムイオン電池の発火による事故件数は急増
リチウムイオン電池の発火による事故件数は、この10年で5倍ほどに急増。年間で397件に。中には火災に発展するケースも…大阪市だけでも去年1年間で45件起きています。
多くの人を巻き込む大事故も。先月、韓国・釜山の空港で離陸前の旅客機が炎上し、乗客乗員176人が脱出。荷物棚にあったモバイルバッテリーから出火したとみられています。
『リチウムイオン電池』の発火にはある特徴が。これは、ビデオカメラ用のバッテリーを充電している倉庫の映像です。
「パン!」と大きな破裂音がしたあと、発火。火を噴いたままのバッテリーが、床に転がりました。そのまま火が消えるかと思いきや…
「バーン!」と先程より大きな爆発音と炎が上がりました。
■「バッテリーの中の電解液は灯油ぐらい燃えやすい物」
火の気のない場所にもかかわらずなぜ突然破裂し発火するのか。NITE=製品評価技術基盤機構の専門家に聞いてみました。
【NITE製品安全広報課 宮川七重課長】「(バッテリーの中には)電解液という電子が行き来するための液があるんですけれど、電解液は実は、灯油ぐらい燃えやすい物と思っていただければ」
バッテリー内部に使われている電解液。宮川さんによると、電解液はジェル状でもともと燃えやすいもの。それが時間と共に劣化したり、異常に温度が上がったりすると、さらに燃えやすいガスが内部に発生し膨張します。
その状態でさらに温度が上がったり、回路がショートするとガスに火が付いてしまうのです。
■「危ないなと思ったら蓋つきの燃えない容器に入れ自治体や製造事業者に連絡」
【記者】「よくモバイルバッテリーとかが膨らんじゃってることがあると思うんですけど。私もきょう持ってきているものがあって」
記者が持参したモバイルバッテリーを見てもらいます。
【製品評価技術基盤機構製品安全広報課 宮川七重課長】「はい、かなり膨らんでますね。こちら、中の電解液が気化してしまってガスがたまって膨れてしまっている。衝撃・圧力・温度に弱いです。デリケートなものだと思っていただければと思います」
危ないなと思ったら、土鍋などの蓋つきの燃えない容器に入れ、自治体や製造事業者に連絡しましょう。
また充電中に発火することが多いので、寝ている間ではなく、起きている時、見守りながら充電するほうがいいということです。
■ごみ処理では火災事故が年に1万1000件以上
深刻な事態に陥っているのがごみ処理の現場です。
環境省が、全国の自治体に調査したところ、(全国1741市町村)『リチウムイオン電池』が原因で発生したごみ処理場などでの火災事故は、年に1万1000件以上。毎日、複数の場所で事故が起きている計算になります。
現場を取材してみると…
【箕面市環境クリーンセンターの職員】「こちらがゴミのプラットホームになります。ゴミの荷下ろしをする場所ですね」
ごみ袋はそのまま粉砕されるのではなく、職員がひとつひとつカッターで破き、中身を確認。出てきたのは…
【箕面市環境クリーンセンターの職員】「これはリチウムイオンですね。ポータブル掃除機ですね。これはリチウムイオンバッテリーですね。(Q今置かれたものは?)これもバッテリーが入ってますよね、充電式ですから」
中からは次々と『リチウムイオン電池』が使われた商品が。粉砕や圧縮する作業の時に発火するおそれがあるため、ひとつひとつ手作業で取り除いているのです。
【箕面市環境クリーンセンターの職員】「これは電子タバコですね。これはモバイルだね。モバイルバッテリーかな。膨れてますもんね」
■箕面市でも「年に5回ほどボヤ騒ぎ」が
前日の作業分と合わせると、箱がいっぱいになるほどごみに紛れていました。しかし、手作業には限界があり、箕面市では年に5回ほどボヤ騒ぎが起きているそうです。
【箕面市環境クリーンセンター 上田一樹さん】「燃えたものも置いているんですけど、こちらになります。怖いですよ。初期消火を行うんですけど、なかなか火が収まらないとかになるとヒヤッとする」
大規模な火災に発展すればごみ処理場が使えなくなる恐れも。
実際に埼玉県では、年明けに火災が起き、回収がストップ。街中にごみがあふれました。
【箕面市環境クリーンセンター 本田敦所長】「人力をかけてリスクを出来るだけ取り除くことは出来ると思うんですけど、ゼロパーセントにすることはどの自治体も難しいのではないかと考えます。燃えるゴミに混入することがないようお願いしたい。分別に関してわからない点がありましたら、市役所にお問い合わせいただければと」
便利なものが突然危険物に…適切に使い、正しく捨てることが必要です。
■自治体ごとに処分方法が違うため、それぞれの自治体に問い合わせを
「リチウムイオン電池」が含まれている製品が突然発火する恐れがあるということです。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「自治体ごとに処分方法が違うんですが、例えば大阪市は、いわゆるモバイルバッテリーなど製品ごとに出せるようになっていて、ガスがたまって膨らんでいるものは、環境事業センターというところに持っていけば回収してもらえます。そこまで行けない人は電話で連絡すれば、回収に来てくれます。 自治体ごとにルールが違うので、それぞれお住まいの自治体に連絡してもらって、どういう回収法があるかを確認して欲しいと思います。
また家電量販店などで回収するボックスがあったり、日本製のメーカーであれば、こちらに送料はかかりますが、メーカーに送れば回収してくれるところもありますね。今、自治体に丸投げになっているので、環境省は統一の基準を作ろうと動いている状態ですね」
よく分からないという方はお住まいの自治体に問い合わせていただけたらと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2025年2月28日放送)