斎藤知事をめぐる疑惑について調査を続けてきた百条委員会が、結果を公表しました。
関西テレビ神戸支局の鈴村菜央記者が解説します。
■斎藤知事7つの疑惑 おねだり行為とパワハラは「一定の事実は確認された」
まず、4日、最後の百条委員会が行われましたが、斎藤知事のパワハラ疑惑などについて、次のような調査結果が出ました。
<斎藤知事「7疑惑」百条委の判断は?>
1.副知事が理事長急逝の原因:ストレス与えたとも推察も、命を縮めたとは言い難い
2.知事選で“事前運動”:認定できず
3.次回知事選への投票依頼:認定できず
4.物品の“おねだり行為”:「個人で消費」と捉えられても仕方ない
5.パーティー券の購入依頼:一部事実であるも「利益供与」なし
6.優勝パレードめぐる不正:一定の事実は記載。虚偽とは言えず
7.職員へのパワハラ:パワハラと言っても過言ではない不適切なもの
今回の調査で注目されたのは、“おねだり行為”と職員へのパワハラについてです。
いわゆる“おねだり行為”については、「贈答品のPR等なく、個人で消費したと捉えられても仕方ない」
職員へのパワハラについては、「強い叱責は事実。パワハラ行為と言っても過言ではない」
“おねだり行為”と職員へのパワハラについては、一定の“事実は確認”されたということです。
ただ、職員へのパワハラについては、「疑惑の認定は司法の場に」という結果になりました。
なぜこのような結果になったのでしょうか?
【鈴村菜央記者】「調査の限界があったのではないかと言えます。百条委員会というものは、そもそもパワハラなどを認定する場ではなく、そういった行為がパワハラと言っても過言ではないという行為を、いかに改善するかを知事に求めていくという場であると、百条委の奥谷委員長から説明がありました。その結果、司法の見解を断定しないという形を取ったと思います」
「また実際に斎藤知事が去年11月に再選をしてから、委員会で証言をする人も、温度感を弱めたということが議会関係者から話がありました。認定と言い切れるほどの客観的な証拠も、なかなか集めるのが難しいところもあって、今回の結論に至ったのではないかと考えられます」
■現在も違法状態が継続している“公益通報”への対応
またこの7つの疑惑とは別に、「公益通報」への対応はどうだったのかも議論されていて、次のような見解になりました。
<公益通報への対応>
・文書は外部公益通報の可能性が高い
・事実確認より通報者特定を優先した、いわゆる“告発者探し”を優先
以上より、現在も違法状態が継続か、という結論に至っています。
この結論に至るまでに、どのような経緯があったのでしょうか。
【鈴村菜央記者】「公益通報の専門家などを参考人として、百条委員会に呼んで話を聞くという形が取られました。実際に専門家の中でも意見が分かれる点もあったことに加えて、どこまで法的な部分を百条委員会で認定してもいいものかという議論はありました。最終的には複数の専門家の意見を統合した結果、今回の結論に至ったと考えられます」
■「公益通報の要件は満たす」と大泉まどか弁護士 「即座に判断は難しい」とも
公益通報については現在も違法状態が続いているという調査結果について、番組コメンテーターの大泉まどか弁護士は「公益通報の要件は、満たしてる可能性が高い」「難しいところ」との見解を示しました。
【大泉まどか弁護士】「今の情報を、現時点で全体を見たときに、その文書が公益通報の要件を満たしますかというと、満たしてる可能性が高いんじゃないかとは思います。今は」
(Q.知事が文書を受け取ったときにどう感じたかというと?)
【大泉まどか弁護士】「『いかにも告発文書です』という、きっちりした形態の証拠が付いたようなものでない文章がきた時に、いろんな情報があって、『これは公益通報だ』って即座に判断して動けるのか。そこはちょっと考えないといけないと思う。ただ知事としてはそのアンテナはやっぱり張っておいたほうがよかったっていうのは、あると思います。ただちょっと難しいところかなと思いますね」
告発の対象に知事も含まれていたという状況について、大阪大学大学院の安田洋祐教授は「個人的な考え」と断りを入れたうえで、次のように話しました。
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「仮にこの事後的な調査をへて、事実無根だったことが明らかになったとしても、当時の時点でいうと斉藤知事本人が告発対象なので、誰か自分とは異なる人たちで、そういった調査委員会を立ち上げて、一応調べてもらって、やっぱり事実無根の可能性が高いと。したがって『これは公益通報に当たらない』という判断を、本人ではないところでしていれば、ここまで問題大きくならなかったのかなと思います」
■百条委を辞任した維新2議員の影響は 「斎藤知事支持の姿勢が一変」
百条委員会の調査がまとまりましたが、直前には維新の2人の委員が辞任する事態となりました。報告書に影響はあったのでしょうか?
【鈴村菜央記者】「まず維新をめぐっては、報告書の素案の段階で、実はパワハラ疑惑などについては、“認定は困難”などといった、いわゆる反対意見に近いような意見が付け加えられていましたが、それが一連の問題を受けて数日間でそれが削除されるということが起きました」
【鈴村菜央記者】「もともと維新は、『百条委員会とはまた別の第三者委員会というところで調査した上で、百条委員会を設置するべきではないか』という、百条委員会設置すら当初反対していました。さらには告発文も、“いわゆる告発としては認識していない”という形で、いわば斎藤知事を支持するような形であり、ずっとその姿勢を続けていた中で、この数日で変えたのはかなり大きな動きでした」
(関西テレビ「newsランナー」2025年3月4日放送)