先週、大阪府八尾市の住宅で、女の子の遺体が見つかった事件。
死亡したのは18年前とみられ、女の子は長い間、行方不明だったことになります。
誰も把握していない「消えた子供」。その背景には何があるのでしょうか。
■大阪・八尾で見つかったコンクリート詰めの女の子の遺体 なぜ行方不明になっていたのに気づかなかった？
【飯森憲幸容疑者】「小さい子が入っています。コンクリートに子供を入れました」
死体遺棄の疑いで逮捕された飯森憲幸容疑者（41）。
遺体は、大阪府八尾市にある飯森容疑者の父親の家で見つかりました。
警察によると遺体は、身長およそ110センチの子供で、巨大な金属のケースの中で、横向きに寝かされコンクリート詰めに。ミイラ化していたということです。
一体この子は、誰なのか？
【飯森憲幸容疑者】「遺体はいなくなった姉の娘で7歳ぐらい。十数年前にコンクリート詰めにした」
こう供述している飯森容疑者。
司法解剖の結果、遺体は推定6歳から7歳の女の子で、2007年頃に亡くなったとみられます。
身元はまだ特定できていません。
女の子が忽然と姿を消し、長年、行方不明になっていたことになりますが、なぜ表面化しなかったのでしょうか。
■「国や行政の調査が甘い」と専門家の指摘
日本では、1961年以降、義務教育を受ける年齢の子供が、学校に来ているかなどを確認する調査を毎年実施。
住民票があるにもかかわらず、1年以上所在が確認できない子供は、「居所不明児」として集計され、行政にも把握されます。
女の子が亡くなったとみられる時期、2007年の居所不明児は全国でおよそ200人。
この問題に詳しい専門家は、「当時は国や行政の調査が甘かった」と指摘します。
【居所不明児の問題に詳しいジャーナリスト 石川結貴さん】「2007年という時点でいえば、ほとんど何もされてなかったと思いますね。おじいちゃんの所にいるとか、実家に帰ったとかと言われれば、『あ、そうですか』でそれで終わりっていうね。しっかり計上されていたとしても、その後いなくなった子供は、誰がどうやって捜すのかとかは、全くの空白のまま」
また、「居所不明児」として集計された子供は、住民票を異動しないまま、別の場所で生活している場合が多く、行政側が、「行方不明になっている」という危機感をあまり持っていないのも実情です。
■かつての「居所不明児」が語る 「社会に見つけてもらえていたら人生変わっていた」
しかし、中には深刻な事態に陥っているケースも。
【居所不明児だった 君塚龍二さん(28)】「しょうゆで味付けした水とか…空腹なんで、何かしら味がついてるものが飲みたかった。（自分の）爪とか皮とか食べてましたね」
君塚龍二さんはかつて「居所不明児」でした。
小学1年の時に両親が離婚。君塚さんを引き取った父は、生活能力がなく、「車上生活」が始まったのです。
【君塚龍二さん】「頑張って拾った小銭で食べ物を買ったりとか、釣りをして魚をとったりですね。日々何して生きようかなと思っていた気がしますね。やっぱり学校に通いたいという感じですね」
小学校には、入学から半年間ほどしか通えず。
突然、学校に来なくなった自分を、探しに来る人は誰もいませんでした。
【君塚龍二さん】「『居所不明児』にとって一番困るのは、周りの大人との接点が一切ないので、相談するという選択肢が一切ないんですね」
そんな生活を4年ほど送ったある日、父親が脳梗塞で倒れたことをきっかけに、君塚さんは保護されました。
【君塚龍二さん】「（父親が倒れて）半年後に施設に入った。早く社会に見つけてもらえていたら、人生変わっていたんだろうなと」
居所不明児などの「消えた子供」について、社会の注目が集まったのはその後でした。
■事件化で居所が分かることも…
2014年、神奈川県厚木市のアパートから、死後7年以上がたった男の子（当時5歳）の遺体が見つかりました。
発見のきっかけは、その年、中学生になるはずの男の子が入学せず、児童相談所が警察に相談したことでした。
こういった事件が相次ぎ、「居所不明児」などの所在の確認の必要性が認識されるように。
今年度の調査では、全国で74人の子供の居所が不明となっています。
■誰にも把握されない「消えた子供」がもっと何倍もいるのかも
しかし、専門家は、「実態はこれ以上に深刻だ」と指摘します。
【居所不明児の問題に詳しいジャーナリスト 石川結貴さん】「義務教育期間を終えた15歳、16歳の子供が所在不明になっていても、74人という数字には含まれていない。それが消えた子供の数全てではない」
また、行政に居住実態がないと判断され子供の住民票が消された場合、調査対象にはなりません。
誰にも把握されていない、いわば「消えた子供」が他にも複数いる可能性があるのです。
【居所不明児の問題に詳しいジャーナリスト 石川結貴さん】「八尾のケースが（調査で）見つからなくて、闇に埋もれてた可能性も大いにあると思うと、背景にはもっともっと何倍も（同じようなケースが）あるかもしれないというほうに考えるべきだと思うんですよね」
（関西テレビ「newsランナー」2025年3月5日放送）
