うんと奮発して都心の超一流ホテルのグルメショップで3000円のピラフをテイクアウト。
お会計で「スプーン1本20円です」と言われ、わくわくした気持ちがなんとなく萎えてしまった。
とびきりおいしい高級フルーツ店で手土産のケーキを購入し、お渡し用の手提げ袋をもらおうとしたら、「手提げ袋は1商品につき1枚まで。予備の分は有料になります」と言われた。
底が不安定なエコバッグでケーキの箱を持ち運べということなのか。
2020年のレジ袋有料化以降、紙の手提げ袋の有料化も増えている。
世の中の流れだから仕方がないとしても、せめて超高級店は無料にして欲しいと思ってしまう。
もとの商品代金が高いから、数十円高くしても気にならないというか、分からないだろうし。
「便乗値上げ」「経営が苦しいのか」と思ってしまう私の方がみみっちいのか…。
飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに“高級店のホントの事情”を聞いた。
■スプーンや手提げ袋有料化には理由がある
【飲食店専門経営コンサルタント 成田良爾さん】
手提げの紙袋やカトラリーの有料化は、世界的な企業になるためのブランド戦略です。
「なぜ超一流ホテルでスプーン1本20円なの?」と思うかもしれませんが、企業としては「地球環境を考えています。エコファースト企業ですよ」というアピール、エコやSDGsの取組みの一環なのです。
ですから、有料化した企業は、販売時に「繰り返し使っていただいて大丈夫です。毎回買う必要はありませんよ」という案内をしているところも多いと思います。
優良企業としてのイメージを上げるために、プラスチックごみを減らすという世界的な動きに倣っているのです。
あくまで資源の節約という観点からの有料化であって、経営状態が悪いとか、便乗値上げではありません。
■「環境に配慮」戦略的な企業アピール
こういった傾向は、一部の企業が、レジ袋有料化に伴って、エコバックを作って販売を始めたことからも分かります。
それまでプラスチック製のレジ袋で渡していたものを、有料化するのではなく、わざわざしっかりしたバッグを作って販売した。
「これを繰り返し使って下さいね」として、環境に配慮している企業だとアピールしているのです。
■ケーキ店ではフードロス対策のため製造を抑える傾向
ブランド戦略でいうと、ここ数年でケーキ店を取り巻く状況が変わってきました。
ケーキ店といえばずらりと商品が並んだ華やかなショーケースを思い浮かべる人も多いでしょう。
しかしそれは過去の話になりつつあります。
今は、店頭に並べる数を減らしている店が増えています。
材料費や人件費の高騰を受け、売れ残りを減らすために、中小企業も高級店も、製造個数を慎重に調整し、減らしているのです。
■「予約注文」客は確実に購入でき、店にも良い影響
(Q食べたいケーキが買えないということになりませんか?)
最近は、「確実に手に入れるため」に、普段から予約注文をする人が増えています。
なぜ「確実に」なのかというと、自宅でパーティをするからです。
誕生日や記念日のお祝いを、外食ではなく自宅で行う人が増えました。
コロナや物価高による節約志向などいろんな理由が影響しています。
つまり、製造数を減らしたことで、予約注文が増え、ケーキの価値が高まるという、良い結果につながった例といえます。
もともとケーキは、誕生日やクリスマスに食べたり、贈り物にしたりと、特別感のある食べ物ですから、こうした戦略が良い結果を生んだのかもしれません。
ここ数年、SDGsやエコへの関心が高まり、そしてコロナ禍を経てライフスタイルの変化などで、飲食業界は大きな過度期を迎えています。
日々進化する消費者のニーズに応えながら、どのように進化していくのか期待したいです。
(飲食店専門経営コンサルタント 成田良爾さん)