大阪の河川敷で不法に野菜などが耕作されるいわゆる『ヤミ畑』。
なんと50年ほど前から存在しているといわれますが、なぜ無くならないのでしょうか。
関西テレビはヤミ畑を直撃取材。不法耕作者が語った驚きの言い分とは…。
3月16日、大阪の淀川で新たに開通した「淀川ゲートウェイ」。京都から大阪湾まで船で移動することが可能になり、万博の会場・夢洲へのクルーズ船の運行など、観光の活性化が期待されています。
【大阪府 吉村洋文知事】「水の魅力があるのが大阪だと思っています。最も重要なキーになるがこの淀川だと思っています」
しかし、その淀川で50年ほど前から続くある問題がありました。
■大阪・淀川河川敷に無許可の“畑”
【河川敷の利用者】「野菜とか作られていると思うんですけど、違法ですよね」
【河川敷の利用者】「何人かおるな。できた作物を顔見知りの人にあげたりしてる」
【河川敷の利用者】「そこの坂降りて行くやんか。そこ入ってったら行けるようになってるわ。(Q.何を作ってる?)何かわからん、向こう行ったら分かるやろ」
地域住民などが話したのは、淀川の河川敷にあるという“畑”の存在。教えられた場所に向かってみると、見えてきたのは「河川法違反」と書かれた国土交通省の看板でした。
さらに進んでみると…。
【記者リポート】「川のすぐ近くですが、柵で囲われた場所があります。中を見てみると、野菜のようなものが栽培されています」
そこで育てられていたのは「大根」、「白菜」。そして「ネギ」のようなもの。
実はこの河川敷で育てられている野菜はすべて不法耕作。いわゆる『ヤミ畑』なのです。
河川敷にあるこちらの場所は国有地。無許可で畑を作ったり、小屋を建てたりするなどの行為は河川法違反にあたります。
国土交通省によると、この周辺で不法耕作が始まったのは約50年前。大阪市旭区にある赤川地区の河川敷では、いまも10人ほどが違法に野菜などを作っているということです。
■「楽しみでやってんねん。年いったら何もすることないからな」
一体、どのような人物が野菜を作っているのか。関西テレビは不法耕作者を直撃取材しました。
【記者】「畑見てもいいですか?」
【不法耕作者A】「なんやったら入場料」
【記者】「お父さんの土地じゃないでしょ。国のでしょう」
【不法耕作者A】「国の土地いうても、わしら25年このままやで」
会社を定年してから河川敷で畑を始めたと話す84歳の男性。
【不法耕作者A】「向こうのあれはニンニク。ホウレンソウやらえんどうの種。(Q.種を買ってきて植えてる?)そうそう。できたら持って帰る」
そもそも違法に耕作している認識はないのでしょうか。
【不法耕作者A】「20何年もこのままでやってるやろ。今さら出ていけ言われても、国交省の土地と分かってても…」
(Q.収入がないから畑をやっている?)
【不法耕作者A】「そうとは限らんけど。楽しみよ、楽しみでやってんねん。みな、年いったら何もすることないからな」
男性のなんとも身勝手な言い分。
■「土いじってたら、体のためにええからな」
もう1人の男性は…。
【不法耕作者B】「はいどうぞ入って。すごいやろ、桃、ビワ、こっちも桃。みんな植えてる。めちゃくちゃおいしいんやから」
今の時期、実はなっていませんでしたが、野菜だけでなく果物まで栽培する、“やりたい放題”です。
(Q.なぜ畑をやろうと思った?)
【不法耕作者B】「ワシの“ツレ“がやってた。今、寝たきりやからな、俺がやってる。(Q.今すぐやめることはない?)今元気ええから、やめられへんやん。土いじってたら、体のためにええからな」
■京都・木津川の不法耕作地には農機具や小屋も
『ヤミ畑』は淀川だけではありません。京都府などで合流している木津川にもありました。
茶畑など一部は私有地に作られた畑ですが、その横には国有地に勝手に作られたヤミ畑があります。
さらに…。
【記者リポート】「こちらには農機具が置かれていて、さらに奥には小屋まで建てられています」
近くで不法耕作している男女に声をかけてみると…。
(Q.許可を取って耕作しているのか?)
【不法耕作の男女】「…」
(Qどうしてやっているのか?)
【不法耕作の男女】「(理由は)何もないよ。ただ昔から作っているから、やっているだけ」
「長年やってきたから、今も続けている」と話す70代の2人。なぜ続けているのか改めて問うと…
【不法耕作の男性】「何もせんとほったらかしておいたら、1年もしないうちに(荒れて)やぶになるやろ。それよりはこうして、きれいにしておいたら、ええんと違うか?」
■国交省は“自主撤去”を粘り強く指導続けてきた
国土交通省によると、国が管理する一級河川での不法耕作は、全国で795件確認されています(2024年3月)。
どうして『ヤミ畑』は放置されているのか。淀川や木津川を管理する河川事務所は…。
【国交省 淀川河川事務所担当者】「河川管理者としては、自主撤去を行うように粘り強く指導を続けてきたところではあります。ただ指導によって実際に撤去される方もいるが、新たに始めてしまう方もいて、イタチごっこが続いている」
(Q.いわゆる強制退去みたいな手続きは難しい?)
【国交省 淀川河川事務所担当者】「(強制退去は)河川管理上の重大な支障があって緊急的に是正する必要がある場合に行うものです。個人の財産に対して、本人の意思に反して、行政が勝手に処分してしまうということになりますので、そういった行為に対しては慎重な対応が求められている」
定期的に取締りを行う河川事務所。しかし…。
【不法耕作者】「(国交省の職員に対して)またようけ連れとるな。子分がようけおるなあ」
【国交省職員】「やめてくれと言いに来てるんで、わかってほしい、やめてほしい」
【不法耕作者】「わしらも年は、年やからな」
【国交省職員】「とりあえずやめてほしいという話で来てるので」
【不法耕作者】「なんとか考えましょうかね」
【国交省職員】「何とかじゃなくて真剣に考えて。頼むわ」
■増水時「トラクターや農機具が流れて下流で被害を及ぼす可能性」
『ヤミ畑』の横行が続くとどのようなリスクがあるのか、専門家に聞きました。
【摂南大学都市環境工学科 石田裕子教授】「川は普段は穏やかですけれども、木津川も淀川もですね、大雨とか台風の場合には、増水して、いわゆる普段陸地になっている部分まで水が漬かる。例えばトラクターとか農機具とかも一緒に流れて、下流で被害を及ぼしてしまう可能性はある」
50年ほど続く不法耕作者との“イタチごっこ”は、いつまで続くのでしょうか…。
■災害時にリスク 焼き畑で火事が広がるリスクも
取締りも難しい状況があるようです。ただ不法耕作は災害時などにリスクがあると専門家も指摘しています。
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「農機具が流れて、人にあたったりしたら、本当に大変なことになります。VTRに出てきた方がやっているか分かりませんが、“焼き畑”をやっていると、河川敷は茂みも多いので、大変な火事になるリスクもはらんでるいると真剣に考えてほしいです」
全国的にも問題になっているということです。
【共同通信社編集委員太田昌克さん】「河川をなぜ国有地化しているかといったら、やはり災害に備えてバッファー(緩衝地帯)の意味があるわけです。そこに畑を作られて、国は財産権の侵害ということに慎重にならざるを得ないのだけれども、これだけ災害が起きていて、氾濫も起きるわけですから、法改正を考えた方がいいかもしれません」
現状は『ヤミ畑』での耕作は、河川法違反で「1年以下の懲役または50万以下の罰金」になる恐れがあるということです。
やめるようにしていただきたいと思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年3月17日放送)