兵庫県の斎藤元彦知事は3月26日午後の記者会見で、自身のパワハラ問題の調査を行っていた第三者委員会の報告書が公表されてからはじめて見解を示し、「指摘を真摯に受け止める」と述べました。
26日放送の関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」に出演した橋下徹氏は、会見での斎藤知事の発言を受けて、「最悪の権力者」と表現し、権力者による告発者つぶしの危険性を強く訴えました。
■「『真摯に受け止める』という言葉は、聞いておくというだけ」
【橋下徹氏】「最悪の権力者ですね。『真摯に受け止める』という言葉は、聞いておきますという、それだけですよ。斎藤さんが権力者としてもう一度学ぶべきところを学び直さなければいけない」
【橋下徹氏】「第三者委員会には、“単に意見を聞く”ものと、“その意見に従います”という、2つあるんです。これから公益通報制度をしっかり体制整備していく時に、第三者で公益通報を受け付けるんです。民間企業でも、兵庫県も従来それがなかったから、第三者に公益通報を判断してもらうようにする」
【橋下徹氏】「その公益通報に関しては、第三者の意見に知事は従わなきゃいけないんです。兵庫県の作った公益通報窓口に、『これは公益通報です』『ここは直さなきゃいけない』といろんな意見が出てきた時に、斎藤さんが自分の疑惑に関して、あーでもないこーでもないと反論するのは、だめなんです」
【橋下徹氏】「権力者自身に判断させると間違うから、自分の疑惑についてもみ消すことがあるから、絶対に第三者にやってもらうということになるのに、その第三者にたて突いてどうするんですか」
【橋下徹氏】「公益通報窓口の人が『斎藤さんの疑惑、ダメです、アウトです』と言っても、斎藤さんは『真摯に受け止めます』、だけども聞きませんということをこれからもやるということですよ。最悪ですよ」
■「客観的に見てパワハラはパワハラ」
パワハラ認定について、斎藤氏や支持者が勘違いをしていると、橋下氏は指摘します。
【橋下徹氏】「まずパワハラについて、斎藤さんが勘違いしてるのは、厚生労働省の基準にもありますが、パワハラ被害を受けた人がパワハラだと思わなくても、客観的に見てパワハラはパワハラなんです」
【橋下徹氏】「今回、百条委員会のヒアリングに、職員は『パワハラです』とは言ってないんです。だから斎藤さん支持者の人たちは、『パワハラじゃないのに、勝手に第三者委員会が認定した』というのですけど、そもそも被害者がパワハラだと思ったかどうかに関係なく、一般的な基準でパワハラ認定します」
【橋下徹氏】「それから斎藤さんは『司法の場』と言いますが、兵庫県庁の中で人事課がパワハラ処分しているんです。斎藤さん以外の件で、兵庫県の職員がパワハラをやったという申告を受けた時に、司法の場じゃなく、人事課でパワハラ認定しているんです。その処分にみんな従うんです。だから『司法の場』と言うのは違う」
【橋下徹氏】「疑惑を受けた人が告発を見て『うんそうだ、俺が悪かった』とふつう言わないんですよ。『これは違う、あれは違う』と、斎藤さんがまさにそれだった。だから第三者に判断してもらいましょうとなっているのに、今回第三者が出してきた報告書に文句を言っていたら、第三者が公益通報を受け付けて判断するということが全く機能しなくなる」
■斎藤氏が言うべきは「有意義な告発をしていただいてありがとう」だと橋下氏
【橋下徹氏】「僕が一番斎藤さんに言いたいのは、告発者に対して謝罪がないんですよ。『告発ありがとうございました』と。職員との関係にいろいろ問題があったのが、告発があって、これだけ騒動になって、自分が職員との関係で問題あると初めて反省したんですよ。斎藤さんは最初、俺には何も問題ない、何も職員との関係に悪いことはない、これは怪文書だと言った」
【橋下徹氏】「だけど結局、この告発文のおかげで自分の問題点が分かったわけじゃないですか。法律違反どうこうじゃなくて、亡くなった告発者の方に『本当に有意義な告発をしていただいて、ありがとうございます。自分はこのことによって態度を改めることができました』というのが一番ですよ。そこを斎藤さんは一言も言っていない」
斎藤知事は「県政を前に進める」ことで責任を果たすと言っていることに対して、選挙で勝って民意を受けたという考え方を押し通すことの問題点を橋下氏は指摘します。
【橋下徹氏】「法理、法の原則みたいなもの。これは民意で吹っ飛ばすことができません。もしこれがまかり通るのだったら、殺人を犯した人が民意を受けて選挙で通ったら殺人罪無罪になるんですか?なりませんよ」
百条委員会にも、第三者委員会にも、知事をやめさせるような法的な拘束力はなく、仕組み上は知事が続けようと思ったら続けられることについては…。
【橋下徹氏】「だから(議会は)不信任決議ができるわけです。不信任決議の後、斎藤さんは邪道な出直し知事選をやったんです。これは邪道で、法律のたて付けは議会から不信任決議が出てきた時には、議会を解散しなきゃいけないんです」
第三者委員会の報告があり、それについて斎藤知事が受け止めを述べて、さらに知事の会見を受けて議会が再度不信任を突きつけるといったアクションは今後考えられるのでしょうか?
【橋下徹氏】「本来、僕はそうすべきだと思うんですが、兵庫県議会はやりません。へっぴり腰だから。不信任をやって解散されたら、また選挙だとおろおろしている。このままなんとなく進んでいくことを、兵庫県議会議員の多くは望んでいるということを僕は聞いてます。(ある意味知事もそれを分かっていて)このまま県政をお互いに前に進める」
■「通報者を探しに行った。これは絶対やっちゃいけない」と橋下氏
斎藤知事にも問題があり、告発した元県民局長にも問題があった(※元県民局長にも人事データ端末の不正利用などの問題があったと第三者委員会が結論を出している)けれども、斎藤知事の「告発潰し」が一番の問題だと橋下氏は言います。
【橋下徹氏】「斎藤さんの一番悪い問題は、告発を受けた当事者が権力を使って、その告発者を探しに行ったことは明らかに違法だと第三者が言っています。通報者を探しに行った。これは絶対やっちゃいけない。去年3月に『公務員失格』『嘘八百』と言って、あれで告発を潰しにいったら、斎藤さんと職員のコミュニケーション不足の問題点が明らかにならないまま全部伏せられたていたわけなんです。そこが一番問題なんです」
【橋下徹氏】「(いまでも斎藤知事は第三者委員会の報告に)納得いっていなくて、あれは告発じゃない(誹謗中傷性の高い文書という認識に変わりはない)とずっと言っている。それを斎藤さんが判断したらだめなんですよ。これから日本のあらゆる組織において、疑惑を受けたトップが自分で判断しちゃいけないというのが大原則なんです」
第三者委員会の発表があったときに、当事者は必ずそれを受けて反省し、改善をしなければいけないものではないのですか?
【橋下徹氏】「これはルールで決まっているわけじゃないんですよ。意見を聞く第三者委員会と、絶対にその意見に従わなければいけない第三者委員会というのが、2つあるんですが、法律で必ずこうしなさいとなっているわけじゃないです」
【橋下徹氏】「ただ公益通報の問題に関しては、公益通報保護法とか指針というところで、利害関係のない第三者委員会に判断をまかせなさいと法律でなっている。今回の斉藤さんの件に関しては、僕は第三者委員会の意見に絶対に従わなければいけないと思います」
■「権力を認めてしまったら、本当に怖い社会になります」と橋下氏
最後に橋下氏は、告発潰しををするような権力の使い方を認めると、「本当に怖い社会になる」と警鐘を鳴らしました。
【橋下徹氏】「告発者に対する対応というところで、県民のみなさんには考えてもらわなきゃいけない。県民の皆さんは生活に関わらないからどちらでもいい、政策をちゃんとやってくれる斎藤さんでいいと思うかも分からない」
【橋下徹氏】「なぜ僕がこれだけしつこく言っているかというと、こういう権力を認めてしまったら、本当に怖い社会になります。(絶対的な権力者がいる諸外国の例を見ると)権力者が疑惑を受けた時に、告発したやつをみんな潰しにいくんですよ。権力を使おうと思ったらできるんですよ」
【橋下徹氏】「比べたら良くないかもしれませんが、30~40年前は結構緩かった飲酒運転に対して、世の中みんなでダメだと言って改められた。権力の使い方については言い続けなきゃいけないです」
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年3月26日放送)