フジテレビは27日、およそ40年にわたって経営に関わってきた、日枝久氏の退任や22人いた取締役を半分以下の10人とするなど、経営体制の刷新を発表しました。
これについて関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では、エンターテインメント業界に詳しい河西邦剛弁護士が出演。
まもなく今月末に結果がまとめられる第三者委員会について、「中居氏は守秘義務が原因で答えられないのでは」と指摘しました。
一方で、トラブル後のフジテレビの対応が問題視されたため、スポンサーの回復は「第三者委員会の結果が出た上で、どうやって再発防止策なり、組織改革なりをやっていくかがポイント」と解説しました。
■フジテレビ・親会社は大幅な経営人の刷新を発表
フジテレビ問題について、「経営陣の大幅刷新について、フジテレビの狙いは」、「今月末に結果が公表される予定の第三者委員会の調査に、中居正広氏が応じているのか」この2つのポイントを取り上げました。
フジテレビが27日開いた取締役会後には、以下のようなことが明らかになりました。
<親会社 フジ・メディア・ホールディングスの経営陣刷新>
・取締役を17人から新任の6人を含む11人に削減。
・女性取締役の比率を3割以上に。
・取締役の平均年齢は71.2歳→61.6歳に。
<フジテレビの経営陣刷新>
・取締役を22人から新任の6人を含む10人に削減。
・女性取締役の比率を3割以上に。
・取締役の平均年齢は67.3歳→59.5歳に。
そして長年フジテレビの経営を担ってきた日枝取締役相談役の退任も公表されました。
■「フジテレビの狙いは企業風土の刷新のPR」
経営陣の刷新・日枝氏の退任について、エンターテインメント業界に詳しい河西邦剛弁護士は、「フジテレビの狙いは企業風土の刷新のPR」だと指摘します。
【河西邦剛弁護士】「フジテレビ側の狙いとしては、スポンサー離れの原因となっている企業風土の刷新、これをPRしたかったのかなとは思います。
そしてこの企業風土の根本にあるのが、日枝氏なんだというふうに世の中から一部思われているわけですね。なので、ここについて刷新感をアピールしたかったということかと思います。
ではなぜこの時期かというところになってくるかと思うんですね。1月のタイミングで港前社長が退任するタイミングで日枝氏も退任すればよかったのではないかという意見もあります。
ここについては、港前社長が退任した後も、スポンサー離れが継続したこと、スポンサーが返ってこなかったこと、そして6月の株主総会のタイミングで日枝氏が再任されない可能性が出てきたこと。これらが相まってこの時期に退任を発表したのかなと思います」
現状、フジテレビのスポンサー離れは続いていますが、今後はどうなるのでしょうか。
【河西邦剛弁護士】「実際企業の中でも、今回日枝さんがやめただけでは、スポンサーの回復について判断できないと明言している企業もあるんですね。今後は第三者委員会の発表の内容、そしてそれに対するフジテレビ側の対応・記者会見、この辺りが相まってスポンサー側に判断されていくと思います。
仮にそれでも戻ってこないとなると、今回の人事案についてすら、6月の株主総会において、株主から承認されない、そういった可能性すらが出てくるかと思いますね」
■中居さんは守秘義務で「話せない」か 調査すべきは「フジテレビ側の問題」とも
そして、今月末に第三者委員会の調査結果が提出されますが、中居さんは調査に応じているのかという点です。
【河西邦剛弁護士】「調査の注目点はやはり、『中居さんトラブルへの聞き取り』ということになってくるかと思います。実際、第三者委員会が『中居さんトラブル』について、中居さん自身に聞いていくというところ。
ここについて、中居さんご自身が『答えたい』となったとしても、女性側との間で『守秘義務』がありますので、この守秘義務をもとに女性側の方が、『中居さんにも答えて欲しくありません』となった場合には、中居さんが『答えたい』となっても、第三者委員会の方は調査ができないという結果になるかとは思います」
「他方で、大きな問題というのは、この『中居さんトラブル』の報告を受けた会社側の対応ということになってきますので、ここについては社員の方々に聞き取ることによって調査ができるんじゃないかなと思いますね」
「今回のスポンサー離れの一連の原因・ポイントというのは、中居さんが女性トラブルを起こしたことではなくて、この後のフジテレビ側の対応にあるわけですね。
それはある意味、個人の人権を無視してキャスティングし続けたことの疑惑であったりとか、それに関連して特番を発注していることであったりとか、そういったフジテレビ側の問題が主に問題点なってきているので、ここについては十分な調査ができるかと思います」
■第三者委調査は「企業風土の問題とできるか」が焦点
年明けにこの問題が大きく報じられてから、調査結果の報告と提出が3月末ということになっていますが、この短いスパンで調べられるものなのでしょうか。
【河西邦剛弁護士】「かなりスピーディーに調査をしています。時間がない中で最大のポイントは何か、これは一言で言うと、今回のトラブルの原因を『港前社長の個人の責任にするのか』、それとも『企業風土全体』=『フジテレビそしてフジ・メディア・ホールディングス全体の内容に踏み込めるかどうか。これが大きなポイントになってきます。
仮に『港前社長が様々な報告をしなかったこと、個人の問題です』と留めた場合には、これはもしかしたら世の中は納得しないっていう可能性が出てくるかと思いますし、さらに調査を続ける必要性すら出てくるかと思いますね」
■芸能記者 中居さん自身への調査は「聞こえてこない」
芸能記者の中西正男さんは、中居さんへの調査について、次のように話しました。
【芸能記者 中西正男さん】「僕が各所に聞く限り、中居さんが第三者委員会からの問いに答えたとか、それに答えようとしてるっていうことは、僕が知る限りは一切今のところは感じたことはないです。
引退するまでのところやったら、今後のこととか、引退の仕方とか引退の発表の仕方につとかについて、そういうことの専門家みたいな人の話を聞こうとしてるなんて話も引退するまではちょっと聞こえてくるところありましたけど。
引退をされてから本当にそのあたりのところが一切聞こえてこないし、少なくとも僕の知る限り、第三者委員会と話をしているって話を僕は聞かないですけどね」
■第三者委に守秘義務があっても 中居氏が「話せるか」は女性側にかかっている
第三者委員会が調査をするときに、委員会の調査メンバーも、守秘義務を負って調査する中で、調査メンバーが「ほかの人に言いません」と言っても、中居さんが自分で結んでいる守秘義務がある場合は、「話せない」ということもあり得るのでしょうか。
【河西邦剛弁護士】「第三者委員会の守秘義務というのと、中居さんが負っている守秘義務は全く別物になります。中居さんが話せるかどうかについては、完全に女性側の判断ということになってきますし。
話す先の相手が第三者委員会であろうが、守秘義務を負っていようが、女性側が「話して欲しくありません」となった場合には、中居さんが話せないということになってきます」
「守秘義務のポイントは2つになります。1つは中居さんと女性本人にしか、及ばないということ。そして守秘義務を結んだ後についてのみ及ぶということです。周りの人たちについては、守秘義務が及ばないので、例えば週刊誌に話をするっていうことはこれは、守秘義務の問題には抵触してこないとなります」
河西弁護士は守秘義務が中居氏にとって「裏目に出ている」と指摘します。
【河西邦剛弁護士】「中居さんとの関係では、守秘義務が裏目に出ている可能性があるんですね。1月9日の中居さんの発表においても、『事実と異なる発表がある』って明確におっしゃっていたんですね。
でもそれに対しても、否定できない。守秘義務があるから。第三者委員会の調査についても本当は違うことがあるから、言いたいとなっても、守秘義務があるから、女性側の承認がなければ言えない。
そうなってくると、中居さんとしても、非常に厳しい状況、本当のことが言えないって状況になりますし、認識について思っていることが言えないってことになりますし、第三者委員会としても中居さんからの調査ができないということなってきますね」
■株主が「223億円減収」について港前社長・日枝氏ら旧経営陣に請求の可能性も
第三者委員会の報告書というのは、「何が起きたか」というところまでなのか、「今後こういうふうに変えていくべき」というところ、踏み込んだ改善案まで含めて、発表するものなのでしょうか。
【河西邦剛弁護士】「一般的には3段階になっています。まず『どういったことがあったのか』という事実認定、2つ目としてその原因の分析、そして3つ目として、その対策。こういったところが示されていくという流れになっていきますね」
【河西邦剛弁護士】「法的なところから見ていくと、かなり深刻な事態にもなっていまして、一番のポイントは誰が責任をとるのか。その責任というのは、『233億円の広告収入の減収』っていう、株主からしたらものすごい損害が出てるってふうに言えるわけですね。
ここについて、いわゆる株主代表訴訟といって、株主の方が旧経営者陣、例えば港前社長であったりとか、日枝氏であったりに対して、『責任をとってください』と言っていくという可能性がまずあるかと思います。
株主が233億円の減収について、『自分の株の価値が下がったじゃないか』とか『会社に損失を生じさせたじゃないか』と言って、元役員たちに対して訴えを提起していくってことはあるかもしれません」
■フジテレビが中居さんに賠償を求めることは「現実的に不可能」
フジテレビ側が中居さんに損害賠償を請求するということはあるのでしょうか。
【河西邦剛弁護士】「中居さんサイドに対して請求するというのは、現実的に不可能ですし、有り得ないところです。なぜかというと、中居さんがトラブルを起こしたことによって生じた損害ではなくって、その後のフジテレビの対応によって生じた損害であると考えることができるからですね。
例えば1月17日のカメラを入れない記者会見の後にスポンサーが一気に減っていきました。時系列から見ても、中居さんがトラブルを起こしたことが、この『233億円の減収』の原因とは評価されないと思うんですね」
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2025年3月28日放送)