大阪府岸和田市の前の市長が”女性問題”を巡って、市議会から2度不信任を議決され、失職したことに伴う市長選挙で、新人の佐野英利さん(45)が初当選しました。
敗れた前の市長・永野耕平さんは、「僕から市民への提案というのは、選ばれなかったということ」と述べるとともに、「マスコミの皆さんは、しっかりと公平公正に」、「情報について、しっかりと取捨選択を自分でされるような能力を有権者のみなさんも磨いていかれるといいんだと思います」と主張しました。
なお、得票数は以下の通りです。
佐野英利さん…4万8307票
永野耕平さん…7606票
花野真典さん…4119票
上妻敬二さん…584票
投票率は前回よりも約12ポイント高い、40.03パーセントでした。
■永野前市長が”女性問題”発端に2度の不信任を受け失職したことに伴う選挙
永野前市長は2019年から約1年半にわたり、性的関係を強要したとして大阪府内の女性に損害賠償を求める裁判を起こされ、解決金500万円を支払うことなどで和解しています。
永野前市長は、これまで不倫関係を認めた一方、性加害については「交際関係だった」と否定していました。
なお大阪地裁は和解調書で市長が「優越的な立場にあった」とする異例の所感を示していました。
【大阪地裁の和解調書より】「被告は優越的な立場にあって両者の間には社会的な上下関係が自ずと形成されていたと認めるのが相当である。被告は公人であるとともに配偶者を有する身であることも考慮すると、原告と性的関係を持つことはよくよく自制すべきであったとの非難を免れることはできない」
市議会は、この問題を巡って2度の不信任を可決し、永野前市長は失職。今回の市長選挙に至っていました。
■「一市民として、市政を応援していきたい」
佐野氏の「当選確実」を伝えた一部報道を受けて、6日午後8時半ごろから取材に応じた永野耕平前市長は、次のように述べました。
【永野耕平 前岸和田市長】「当選されたのは佐野さんで、市民のみなさんが佐野さんを選んだということですので、これから佐野さんが市長として、この街をよりよい街へと変えてくれると思いますので、僕もそれを応援したいなと思っています。
僕は立候補したんですけれども、僕から市民への提案というのは、選ばれなかったということなので、残念ではあるんですけれども、しっかりと自分の提案を市民のみなさんにすることができたので、そのことについては感謝したいと思います。
2期7年の間、僕を支えていただいた市民のみなさんもそうですし、岸和田市役所のみなさんにも感謝したいと思います。そして今回の選挙はいろいろな難しさがあって、困難もある中で、多くの仲間がスタートはこちらから誰にもお願いすることなく、申し出があった方にだけ、お手伝いをいただいて選挙戦を進めたんですけれども、多くの仲間が僕のもとに集まってくれて、選挙を戦うことができました。 本当にこの選挙を通じてたくさんの仲間を得たと思いますので、このことについては心から感謝をしたいと思います。
これから佐野さんが4年の任期を務められると思いますので、しっかりとその中で一市民として、市政を応援していきたいと思っております」
また永野前市長は、「自身が『性加害をした』と報道などによって誤解された」という主張をし、時には「性加害」など暴言を吐かれたなどと訴え、選挙戦が難しかったと話しました。
【永野前市長】「(選挙戦で)誤解は解けたんじゃないかなと思いますけどね。誤解は解け切ってはないでしょうけど、今でもまだあのネット上には性加害とかいう人もいますから、抜けきってるわけではないと思いますけれども、僕が生きていくのに充分な誤解は解けたんじゃないかなと思います。 誤解を解く作業と、これまでの実績を伝える作業と、これからの岸和田のあり方について提案する作業を、全て同時でやらないといけないところがあって。 ただ市民にとって関心があるのは、僕の誤解を解くことよりも、『これからの岸和田市がどうなる』、『どういう町であるべきか』っていうことだと僕は思ったので、僕は自分としては、自分の誤解を解く作業よりも市民の皆さんに『こういう街であるべきだ』という話をしていく、それを伝えることの方を優先してやってきたんですね。その結果、ひょっとしたら誤解が十分解けてない部分もあるかもしれないと思いますね」
■「マスコミは公平公正に 市民は情報の取捨選択能力を磨いていかれるといい」
そしてマスメディアや情報の受け手である市民に対して、次のように述べました。
【永野前市長】「マスコミの皆さんは、しっかりと公平公正に正しい情報を精査して、生の情報を切り取ったり、編集したりして出さざるを得ないっていうのはよく分かるので、それは仕方ないと思いますけれども、その際には公平公正であるかとか、誰かの人生を潰すものではないかとか、そういうことをマスコミのみなさんは考えて、お仕事されるべきだと思いますね。 そして最後に市民のみなさんは、だんだんと変わってきてますけども、もともとはこの戦後の日本っていうのは、情報は新聞やテレビで得ていたっていうことなんですけれども、これからの時代、情報が新聞やテレビだけではなくて、SNSやその他のインターネットの媒体からも得られるようになっています。 そういう情報について、しっかりと取捨選択を自分でされるような能力を、有権者のみなさんもどんどんレベルアップして磨いていかれるといいんだと思います」
■当選の新人・佐野氏「私は決して一人で市政を進めることはしません」
一方、初当選を果たした新人で郵便局長の佐野英利さんは、6日午後8時すぎ、当選の喜びを語りました。
【岸和田市長選挙で当選 佐野英利さん】「今回の選挙戦、岸和田を日本一子育て支援が充実したまちにしたい。そして、日本一スポーツのまち・岸和田を掲げ、走り抜いてまいりました。 またこれまで私は国会議員の秘書6年間、そして郵便局長として15年間働いてまいりました。たくさんの地域の方々の声を聞き、課題解決に向けて、向き合ってまいりました。 これまでの経験をしっかりと、この岸和田の未来のために注いでいきたいと思っております。
また今回の選挙戦の中でたくさんの市民の皆様と握手させていただき、市民のみなさまの声を聞かせていただいた中で、岸和田市に対する強い思いを改めて感じることができました。
また今回新しい形で、個人演説会・タウンミーティングという形で約30回以上開催させていただきました。各校区の課題が本当に山積している、この課題解決に向けて私は市民のみなさまの声を大切にし、そして市議会のみなさまとそして市の職員のみなさまと協力しながら、着実に一歩ずつ少しずつ前に確実に進めてまいります。 また今日が本当のスタートです。
私は決して一人で市政を進めることはしません。市民のみなさまの声を大切にしながら、しっかりと耳を傾け進めてまいります。 これからたくさんの試練があると思いますが、みなさまにお支えいただきながら、市民のみなさまと一緒に、新しい市民のみなさまと、新しい胸を張って子供たちにつないでいける岸和田市をつくっていきたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます」
■市議から「色々厳しいこと言うけども、岸和田市のために頑張ろう」
そして佐野さんは市議会と協調して市政を進める考えを示しました。
【岸和田市長選挙で当選 佐野さん】「いろいろな政策を掲げてやっていくに当たっては、市議会のみなさまの協力も必ず必要になってきますし、ご意見も聞きながら。まず先には市民のみなさまの声に耳を傾けて」
(Q.市議会は各会派ごとに考えが違うと思うが?)
【岸和田市長選挙で当選 佐野さん】「市議会の方も、おそらく全てのみなさまが岸和田市をよくしようという思いで、市議会出てはると思いますので、その部分についてはやはり、私も岸和田市がよくなればという思いですので、一致する部分っていうのは一致させていったりするし、政党が違うのはよくわかるんですけども」
(Q政治家の経験がないことが不安視されると思うが?)
【岸和田市長選挙で当選 佐野さん】「今回の選挙においては、市議会の方が、ほとんどの方がご支援いただいて、またその中で今日も声かけて頂いたんですけども、『一緒に頑張ろう』と。『成長するために、色々厳しいこと言うけども、岸和田市のために頑張ろう』と、お声掛けをいただいたので、本当に一緒になって岸和田市をよくしていくということで、やっていきたいと思っています」
また佐野さんは、市長に就任後、早い段階で「市長倫理条例」の制定を目指すほか、市内の24の小学校区すべてで最低でも年に1度はタウンミーティングを開き、課題解決に向けた話し合いをしたいと述べました。