アメリカのトランプ大統領が「24%の相互関税」を打ち出すなか、7日の日経平均株価は一時、歴代3位の下げ幅を記録し、関西の取引市場にも大きな影響が出ました。
関西テレビ「「旬感LIVE とれたてっ!」に出演した元朝日新聞記者でキヤノングローバル戦略研究所・主任研究員の峯村健司さんは「日本最大の大ピンチ」だと指摘しました。
■日本はピンチ このまま追加関税かけられると「大量に職を失う人も」
(Q.日本にとってはピンチ?)
【峯村健司さん】「もう大ピンチだと思います。本当にこのまま追加関税がかけられてしまうと、恐らく一番の日本の主力である自動車にも影響が出る。となってくると、サプライチェーンがすごい自動車があるわけですね。ひょっとしたらこれが長く続くと大量に職を失う人も出てきます。日本の経済も今せっかく上がってきてるのが、また下がりかねないという意味で、私は日本最大の本当に一番の今ピンチにあると思います」
■石破首相とトランプ大統領の電話会談は「不発」
7日夜、石破首相とトランプ大統領と電話会談が行われました。
石破首相は「一方的な関税ではなく、投資の拡大を含め、日米双方の利益になる幅広い協力のあり方を追求すべきではと申し上げた」ということです。
自身のSNSでトランプ大統領は、「日本は貿易でアメリカをひどく粗末に扱ってきた。
彼らは我々の車を買わない」と発信しています。
このやりとりについて、峰村さんは「不発である」と評しました。
【峯村健司さん】「一言で言うと、もう不発です。これは“うまくいかなかった”という見方です。 トランプさんが電話会談終わった後に、すぐ日本に対して『ひどく粗末に扱ってる』と言ってるということは、あんまり満足できる結果じゃなかったと。 やはり石破さんの悪い癖なんですが、『協力のあり方を追求するべきだ』みたいな、上から目線で言うのはトランプさんやっぱり一番嫌がるらしいですね。 そうではなく、もっとポジティブなメッセージを出す。 例えば『こんだけ投資もっとしますよ』とかっていう、大きなパッケージを見せるということで、『この追加関税やめましょう』と持って行ったほうがよかったです」
■USスチールの買収計画が再審査になったのは電話会談のおかげ?
関西テレビ加藤さゆり報道デスクは、最新の情報について「USスチールの買収計画の再審査をトランプ大統領が命じたのは電話会談がきっかけでは?」と指摘します。
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「確かに『日本は何もしてくれないじゃないか』とアメリカ側は思ってるかもしれないんですけれども、1つ、きょう気になるニュースが入ってきています。 ずっともめていたUSスチールの買収問題について、バイデン前大統領はUSスチールの買収の禁止命令を出していたんですけれども、トランプ大統領が買収計画を再審査するように命じています。 これが峰村さんおっしゃったように、電話会談は不発だったとしても、もしかしたら電話会談が何かきっかけで、こういった姿勢を示したのかなとも取れます。その辺りはどうでしょうか?」
【峯村健司さん】「前回の首脳会談の時に、石破首相が『USスチールの買収じゃなくて、投資である』って言ったんですね。 “投資”はトランプさんが一番好きな言葉なんです。 これで少し、ある意味考え直したところはあるんです。だからこそ先ほど電話会談でもこのUSスチールも含めた、『こんなでかい投資やるんだよ』ということによって、この追加関税の圧力は、私は避けられる可能性は充分あると思っています」
「というのは今、トランプ政権が結構、追加関税を打ちまくってて結局、色んな国に報復関税かけられて、ぐちゃぐちゃになっちゃってるわけです。 これって別にトランプさんが望んでるわけじゃなくて、成果がほしいわけなんです。本当は一番『追加関税かけるぞ』って言って、何か成果がほしいのはトランプさんの本音なんですね。 その中でいうとやっぱり、日本は同盟国だから日本から、できれば何か成果がほしいという意味で、USスチールも含めた投資というのは、私は一つの解決策なると思います」
■大谷選手が日本の救世主に?「大谷翔平の話題はアイスブレイクにピッタリ」
さらに峯村さんは「関税を課せられたピンチの日本にとって大谷選手が救世主になるかもしれない」と話します。
【峯村健司さん】「ちょっとばかげたように見えるかもしれないんですが、実は結構重要で、トランプさんって、国、日本国とか中国とかを見るんじゃないんですね。“人で見る”ところがあるんです。 例えば、かつてでいうと、安倍晋三元首相=日本で見たりとか、中国=習近平国家主席と見るんです。人のファクターが重要であると。 大谷さんも1期目のトランプ政権の時に安倍さんから聞いた話なんですけど、安倍さんとトランプさんは「またショウ(大谷さんのこと)が打ったらしいぞ」といった話をよく食事の会の話題になったらしいんですよ。 だから翔平=日本だとトランプさんが刷り込まれた。それが今回、こういういい印象を与えたと、自分にとってもプラスになったというのは、今後のディールにおいて、私は少なくともマイナスにはならないどころか、私はプラスの要素があると思います」
【青木源太キャスター】「関税に関しては、利害が対立していますから、非常に厳しい交渉になるのは目に見えてる中で、最初のあいさつだけでも和やかな雰囲気になればそれはいいですよね」
【峯村健司さん】「そうですね、アイスブレイクっていうんですけど、しゃべるときに最初軽く話題を振って和やかにして、交渉するのが大事なんですけど、そこで言うと大谷翔平話は、これがガツッと刺さって和やかになる可能性はあると思いますし、そこに石破さんが近々訪米した時でも、いい話題になると思います」
■トランプチームはPRがめちゃくちゃうまい ドジャースの人気にもあやかる
日本時間の8日、ドジャースの選手たちがホワイトハウスを表敬訪問し、大谷翔平選手とトランプ大統領の2ショット映像が届きました。
トランプさん自身、本当はドジャースよりはヤンキースファンだって聞いたんですけど…。
【峯村健司さん】「おっしゃる通りです。めちゃくちゃ超ヤンキースファンなんです。なんですけど、とにかくトランプチームPRがめちゃくちゃうまいんですね。使えるものは何でも使うと。 例えば、大統領選中もマクドナルドの制服を着たり、ゴミ収集車やったりとか、ああいうのものすごくうまいんですね。だからこそ今回、最も今人気のあるドジャースの人気にあやかるというところが、すごく大きいと思います」
この後の関税の交渉、石破総理がトランプ大統領とどのように相対していくのか、交渉のカードは果たしてあるのかというところ注目したいと思います。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年4月8日放送)