大手脱毛サロン「ミュゼプラチナム」が先月、全店舗の一時休業を発表しました。
取材に応じた従業員は、給料の未払いや、新入社員が放置される現状に怒りの声をあげています。
■会社から告げられた突然の“退職勧奨”
【ミュゼプラチナム運営会社 高橋英樹社長】「考えた結果、まずはMPH1(運営会社)側が、会社都合で皆さま、全員に対して、退社を推奨させていただいて」
3月31日に開かれた従業員向けの説明会。
そこで社長が突然告げたのは、会社都合の退職“退職勧奨”でした。
■休業の3カ月前から無給
ミュゼプラチナムでおよそ9年間、勤務するAさん。2月まで商業施設に入る店舗で働いていました。
【Aさん(約9年勤務)】「施術や、お客さまと話すること自体は好きなので、やりがいを感じていた」
しかし、その後突然、4月20日までのおよそ1カ月間、全ての店舗を一時休業すると知らされたのです。
ミュゼプラチナムに一体、何があったのか。
Aさんが同僚とともに訴えたのは、ずさんな会社の実態でした。
【Bさん(約3年勤務)】「12月は本来は、20万近く振り込まれるはずが、11万。半額ぐらいしか振り込まれていなくて。年末年始過ぎても払っていただいてなくて」
【Cさん(約6年勤務】「会社の未払いがあって、もう無理だなと思って一人暮らしをやめた。今までの日常が送れていない」
従業員たちがまず口にしたのは給料が支払われていないこと。
休業となるおよそ3カ月前からすでに給料が払われず、「無給」で働いていたというのです。
■「皆さんにも責任がある」 従業員に責任転嫁する社長 離職票も届かず
さらに従業員を憤らせたのは、説明会で社長が放ったある言葉でした。
【ミュゼプラチナム運営会社 高橋英樹社長】「皆さんにも、僕にも少なからず、ミュゼプラチナム全体で売り上げが上がらなかった原因があるんじゃないですか?給料って、公務員じゃないので、売り上げからしか給料って払われないです。そこが何かミュゼの方々(従業員)は理解できてない」
従業員に責任を転嫁する社長。こうした社長の態度に怒りの声も。
【従業員】「今やらないければいけないことがあるので…聞いてますか?」
【社長】「聞いてますよ」
【従業員】「人の話を聞く態度っていうのを、改めてもらってもよろしいでしょうか?真摯に向き合っていただくこと可能ですか?」
【社長】「そこはすいませんでした」
【従業員】「『そこは』ではなくて『全て』です」
退職届を提出したAさんですが、受理されているか分からず、失業手当の申請に必要な離職票も届いていません。
【Aさん(約9年勤務)】「“離職票”が届かないこととか、質問というのも、本社とかどこにもつながる手だてがないので声を上げるところがない」
その後、会社は従業員からの問い合わせ窓口として公式LINEを開設しましたが、メッセージを送っても、送っても…定型文の回答ばかりが返信されました。
■運営資金なく 社長は“乗っ取りが原因”と主張
運営会社によると、給料が支払われていない従業員は2500人ほど。
なぜこのような事態になったのか。ミュゼプラチナムの運営会社を取材すると。
【ミュゼプラチナム運営会社 高橋英樹社長】「弊社において重大な乗っ取り事案が発生いたしました。乗っ取った経営者の会社からは、一切の運営資金の提供がなく、従業員への給与に未払い・遅延が発生するなど、会社運営に深刻な影響が及びました」
高橋社長が主張する“乗っ取り”。
それはことし2月のこと。
当時、運営会社の会長を務めていた男性が突然、臨時の株主総会を開き、当時の社長や全役員を解任。
そして、新しい社長を招き入れたといいます。
その後、争った裁判で旧経営陣の地位が認められ、3月31日付で高橋社長が就任。
しかし、社長になるまでのおよそ2カ月の間、運営資金の提供がなかったため、給料が払えない状況となったというのです。
(Q.“乗っ取り”といわれる事案が起きなかったら、給料の未払いや休業は起きなかった?)
【ミュゼプラチナム運営会社 高橋英樹社長】「起きなかったです。“乗っ取り”がなければ、会社の資金は十分にありました」
「乗っ取りが給料を支払えない原因」だと主張した社長。
■「システムエラーで返金できない。客をだますようなことをする会社」
しかし、従業員からは去年から業績悪化の“予兆”はあったという証言が。
【Aさん(約9年勤務)】「施術で使うローションやジェルがなかなか届かなくなってきて、ギリギリの中で、お客さまに迷惑がかからないよう工夫しながらやってきた」
【Bさん(約3年勤務)】「本当に心苦しいんですけど、システムエラーで(返金が)できない状態って言えと指示。お客さまも私たちのことを信じて契約してくれた。だますようなことを、この会社するんだ」
■新入社員は“自宅待機” 「入社が白紙化されて腹が立つ」
そして「会社から放置されている」と話すのは、すでに働いていた従業員だけではありません。
【新入社員(4月入社予定)】「3月25日に急に連絡があり、休業のことを聞きました」
入社に向け準備も進めていましたが、会社から告げられたのは“自宅待機”でした。
【新入社員(4月入社予定)】「自宅待機中は、休業手当を月額賃金の6割支払うと説明がありましたが、いまだに詳細の手続きについて連絡がありません。楽しみにしていたのに、入社はほぼ白紙化されて腹が立つ。これからどうしたらいいのか分からない」
■契約している客にも広がる不安 「簡単に、雑に思ってる」
全国に180店舗以上を展開し、およそ450万人の会員がいるミュゼプラチナム。
契約していた客にも衝撃が広がっています。
【約7万円のローンが残っている女性(30代)】「支払総額が52万2200円」
30代の女性は、5年前に「全身脱毛通い放題」のコースを契約。
現在も7万円ほどのローンが残っていて、解約しようと問い合わせ窓口に何度も連絡しましたが…。
【電話音声】「おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめになっておかけ直しください」
【約7万円のローンが残っている女性(30代)】「切れちゃいました」
電話もつながらず、問い合わせのメールにも返事がなく、今もお金が返ってくるのか不安な日々を過ごしています。
【約7万円のローンが残っている女性(30代)】「今後も行けないんだろうなって思ったら、何のために支払ってるんだろう。私たちのことすごい簡単に、雑に思ってるなって思いました。正直」
■業界全体に広がる問題 昨年の倒産件数は16件
大手脱毛サロンが巻き起こした今回の問題。
しかし、こうしたトラブルは業界全体に広がっています。
東京商工リサーチによると、脱毛サロンの倒産件数は昨年度16件と過去最多に。
なぜ、倒産件数が増えているのか?
神戸市内の美容皮膚科は「業界全体で年々集客が難しくなっている」と話します。
【ソノクリニック土井貴明理事長】「患者1人あたりの広告代は上がってきている。最初はグーグルの検索でコストかけて集客していたが、SNSで集客するようになったが、それも行詰まって過当競争になってきている。広告投入しても来ない。資金繰りが悪くなって、いっぱい(店舗を)展開していると厳しくなる」
脱毛業界に大きな衝撃を与えたミュゼプラチナム。
店舗の再開は4月21日からと説明していますが…。
【ミュゼプラチナム運営会社 高橋英樹社長】「今後、新事業を始める予定で準備を進めています。店舗についても21日以降、順次再開できるよう準備していて、従業員の再就職支援も並行して実施していきます」
果たして、失った信頼を取り戻し、元通りの営業ができるのでしょうか?
■「経営の不透明さを説明しないで『売り上げが悪いのはあなたたちのせい』は到底納得いかない」
従業員に給料が支払われず、新入社員に至っては入社できるかも分からない状況となっている、ミュゼプラチナム。
【安藤優子さん】「(社長が)新しい事業を立ち上げるっておっしゃったじゃないですか。でも既存の従業員に対しては再就職の支援もするって言っていましたが、クビを切るんでしょう?そこがまず矛盾してるのと、これだけの会員数を誇っていて、事前にある程度のお金を払わせるシステムだったわけじゃないですか。じゃあそのお金はどこいったんですかということですよね。
経営の不透明さをきちっと説明もしないで、『売り上げが悪いのはあなたたちのせいじゃないですか、乗っ取られたから』っていうのでは到底納得かないと思います。まず資金的なところをきちんと返還する。それから従業員の未払いのお給料を払うことがまず再生の第一歩なので、そこを無視して再就職の支援というのはないと思います」
■「これから払わなければいけない分は停止できる。クレジット会社に連絡を」と橋下氏
未払い分の給料を従業員に支払うことはできるのでしょうか?
【橋下徹さん】「もちろん請求できるんですが、ただ、会社にお金がなければ戻ってこない。破産した場合には給料分については一定優先権がありますので、ただそれも返って来るかどうか分からない。
それからお客さんでローンが7万円残っている方がVTRでいました。ミュゼプラチナムに連絡をすると、なかなか対応してくれないということだったんですが、カード会社やクレジット会社の方と交渉してください。通常はこれから払わなければいけない分は停止できます。支払い停止の抗弁ができるんですが、これまで払った分はもう返って来ないですが、これから払う分については基本的には拒絶できるので、この会社を相手にするんじゃなく、クレジット会社やローン会社の方に連絡してもらいたいですね」
■過大な広告には注意 大事なのはその場ですぐに契約しないこと
利用者側のトラブルはほかにもあります。
国民生活センターによりますと、脱毛業界全体として、例えば『1回施術をした後に解約をしたら、10万円請求された』、『カウンセリングに来ただけのつもりが高額な契約をすることに至った』、などというトラブルがあります。
医療脱毛を行っているブランクリニックの加藤理事長によりますと、注意すべきポイントは、『広告と異なる金額を提示されたら要注意。悪質なケースでは広告の10倍以上の金額を請求される可能性もある。大事なのはその場ですぐに契約しないこと』だということです。
危うい業者を避けるポイントはどのようなところでしょうか?
【橋下徹さん】「広告を過大にやっているところは、気をつけなきゃいけないですね。この業界は本当に広告費がかかるので。
それから、1回施術をした後に解約をしたら10万円請求されたり、カウンセリングだけのつもりが高額な契約に至ったりというトラブルは、基本的には法律で対応できるようなトラブルです。弁護士をサイトで探すのか、弁護士会の方に相談するのかなどはありますが、法律で解決は一応できます。
途中で解約して10万円請求、これも拒絶はできますし、高額な契約を言われた場合にも契約を拒否できる取り消しがあるんですが、会社側にお金がないと取り戻せないので、なるべく早く対応した方がいいですね。前払いはなるべくやめたほうがいい。都度払いのほうがいい」
安易に契約をしないこと、少しでもおかしいと思ったら、消費生活センターなどに相談するようにしてください。
(関西テレビ「newsランナー」2025年4月9日放送)