兵庫県・斎藤元彦知事の疑惑を調査する百条委員会で鋭く質問を重ねていた竹内英明元県議が、18日、自宅で死亡しているのが見つかりました。自殺とみられます。
竹内さんは去年11月、ネット上での激しい誹謗中傷などで議員を辞職していました。
そんな中、NHK党・立花孝志党首は19日にYouTubeで、「竹内元県議は警察に逮捕されるのが怖くて命を絶った」などと発言。
これに対し20日、兵庫県警の村井本部長が立花党首の発言について真っ向から否定し、「明白な虚偽がSNSで拡散されているのは極めて遺憾」と述べました。
その後立花党首は自身のYouTubeで発言が誤りだったと認め、謝罪しています。
22日放送の関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では、橋下徹氏、住田裕子氏2人の弁護士が出演し、「ネットの暴力」の問題について解説しました。
■斎藤知事の疑惑追及の百条委委員へSNSで誹謗中傷
立花党首の誤った発信は竹内元県議が亡くなった後の話ではありますが、県議も辞職の理由として「言葉の暴力」「ネットの暴力」をあげています。
まず百条委員会委員へ、竹内元県議のみならず他の委員に対しても次のような誹謗中傷がありました。
「疑惑をでっちあげ知事を陥れた」
「クーデターを計画した黒幕」
「逃げるな。議員なんか辞めろコノヤロー」
「ほんと腐ってる。人間のクズ中のクズ」
竹内元県議の辞職理由として、百条委員会で次のような内容があげられています。
・「言葉の暴力」「ネットの暴力」が拡散
・妻から「政治の道から退いてほしい」と言われ、家族を守ることを優先し辞職
また同僚の議員は、亡くなる2日前の様子について、
・同じ人と思えないほど憔悴
・顔が見えない集団リンチのような状況にとても怯えていた
・竹内氏が信頼しているかも人からも「本当ですか」と責められ一番つらかった
・こうしたことがまかり通る社会に絶望すると言っていた
このように話しています。
■「政策論では厳しくいっても、人格攻撃はダメ」橋下氏
【橋下徹氏】「誹謗中傷がダメというのはそのとおりですが、例えば地上波テレビでSNSを取り上げて、『SNSの誹謗中傷が悪い』『SNSが悪い』というと、今のようなSNSの方が『また地上波、上から目線だ』と言われると思うんですよ」
【橋下徹氏】「僕は政治家の時に、誹謗中傷なんか連日ですよ。例えば、政策論だったらいいんだけど、『橋下は道頓堀のヘドロと一緒だ』とか『あいつの発言聞くとヘドが出る』と言った人たちがいまだに地上波のコメンテーターで出ていますから。言ったのはテレビではない別のところなんだけど、その本人たちはいまだにテレビのコメンテーターとして出ているわけです」
【橋下徹氏】「何が言いたいかというと、政策論で厳しく言うのは当然。僕は政治家に対しては、かなり厳しいことを言ってもいいと思うんだけど、地上波という影響力のある媒体で、そういうこと(誹謗中傷)を平気で言っていけば、それを聞いている若い人たちが、政治家にそういうことを言ってもいいのかとなると思うんですよ。だから僕は政治に対しての批判は、政策論で厳しく行く時に行くけれど、人格攻撃とかをテレビに出ているコメンテーターがやっちゃいけないと思います」
そういった場合、橋下さんは実際にどう対応していたのでしょうか?
【橋下徹氏】「僕は『アホボケカス』言い返した。一言われたら、百言い返すしかない。しかもその手段はXだけで言い返していましたけど。『橋下は逮捕寸前』ということを、新聞の一面広告に出されてずっとやられていたから。今そこの雑誌相手に裁判の一審では勝ちましたけど。SNSの誹謗中傷は絶対ダメだけど、影響力のあるテレビとか雑誌とか、そういうところでも政治を批判するときに、人格攻撃とかは控えなきゃいけないと思います」
■「悪質なものは刑事事件として処罰しないと一罰百戒にならない」住田弁護士
【住田裕子弁護士】「人格攻撃、それから犯罪になっているものがかなりあるんです。犯罪をにおわせるような強迫行為、場合によっては『自宅まで押しかけるぞ』という業務妨害行為。もうここまでくると誹謗中傷というより、一番違法な犯罪行為として取り締まるべきなんですが、実を言うとオールドメディアのいいところは、放送法とかいろんな形で自制しているんです。ファクトチェックもちゃんと中でした上で、表に出してるんです。そこは私オールドメディアの良さだと思います」
【住田裕子弁護士】「SNSとか新しいメディアに関しては、ファクトチェックしていないし、ある意味で玉石混交だし、誹謗中傷を発信しやすいし、一人の意見でも拡散しやすいんです。ツールを使えば。そういう意味で、本当は小さなものなんだけれども、大量にくるので、慣れていない方にとってその痛み、精神的な痛みというのは計り知れないものがあると思います。ですから誹謗中傷でも、特に悪質なものはしっかりと取り締まり、場合によっては刑事事件として処罰する事を見せないと、一罰百戒にならないと思いますね」
【橋下徹氏】「地上波の方は裏取りをやってるところあるんでしょうけど、斉藤兵庫県知事の時に、僕は告発者つぶしは絶対ダメだと思っていたんですけども、“おねだり” “パワハラ”はかなりあやふやな根拠資料というか、アンケート調査に基づいて、一斉に地上波のメディアが知事を攻撃しにいったというのは、SNSの誹謗中傷にも匹敵するぐらいの状況だったんじゃないのかなと思います」
【住田裕子弁護士】「百条委という場でしっかり調査することになれば、それはそれでいいので、場を移した事は良かったと思いますね。ところがその百条委員会で一生懸命追及していた方が、こういうことになった(亡くなった)としたら、百条委の存在意義もちょっと心配になってきますよね」
■立花孝志氏の発言を県警トップが否定 立花氏に捜査が及ぶ可能性も
竹内元県議が亡くなった後、立花孝志氏の言動が波紋を呼んでいます。
立花氏は19日YouTubeチャンネルで、「竹内元県議は何らかの犯罪で任意の取り調べを受けていたことは間違いない。1月20日に逮捕すると県警は考えていたそうだが、それを苦に命を絶ったという情報が入っている」と配信をしました。
これに対して兵庫県警の本部長が否定し、立花氏はこれを受けて、「間違いでございました。これについては訂正させていただきます。そして謝罪をさせていただきます」とYouTubeチャンネルで発信しました。
【住田裕子弁護士】「この発信について、今回、県警本部長が『虚偽である。事実無根である』とはっきり断定を公的な場でされたんです。びっくりしました。捜査機関が被疑者の調べをしたとかしないとか、参考人をどうしたと言うわけないんですよ。捜査の秘密ですから。異例も異例、前提になった困るぐらいのことなんです」
【住田裕子弁護士】「事実無根だと言ったことは、逆に言うと虚偽事実であるということを公的に確定させた上で、私は『死者の名誉毀損罪』という条文が頭によぎりました。しかも県警本部長がやる時には、恐らく検察と協議した上でやっているはずなんですね。そうすると立花氏はいろんな形で告訴・告発を受けていますけれども、これもう一つ合わせ技になってくる可能性があるかなというような予感がしましたね」
“合わせ技”というのは、立花氏に捜査が及んでくるかもしれないということですか?
【住田裕子弁護士】「(県警本部長が)そこまで断定するというのは、虚偽の事実を言ったことは、死者に対する誹謗中傷という構成要件の一部に当てはまる(犯罪が成立する可能性がある)と言ったように私は感じました」
【橋下徹氏】「今の住田さんのコメントも僕は表現の自由の中だと思うんですが、住田さんも捜査が及ぶかも分からないと、捜査機関の動きを予測するわけじゃないですか。立花さんも同じだと思うんですよ。それは捜査機関が動いているかも分からない。僕が政治家の時だっていろんなコメンテーターが僕に対して、『捜査が及ぶかも』と言っていました」
【住田裕子弁護士】「全然前提が違うのは、捜査機関が言うことと、全く預かり知らない素人がいうこと。事実のファクトチェックができるかどうかですよ。捜査機関が言うときは、それは事実なんです。普通言わないのに、『これは虚偽です』って言い切ったことは大きいんです。(県議への取り調べを)やったかやっていないか、一番知っているのは捜査機関ですから。それを断定したんですよ」
【橋下徹氏】「やっぱりコメンテーターの方もよく気をつけなきゃいけないのは、捜査機関の動きとか、逮捕されるかも分からないってことを安易に言う人たちも多いですよ、政治家に対して。そこは自制するのか、表現の自由で守るというのか。立花さんは今回、間違ったことを言ったから反省しましたし、謝罪もしています」
【橋下徹氏】「メディアの方が間違うこともあるわけでしょ。それで名誉毀損になったとしても、今の法律上は賠償金だけ払って、謝罪をしなくてもいい建前になっているんですよ。だから僕が裁判で勝ったとしても、謝罪なんか誰もやらないです、メディアは」
【橋下徹氏】「(SNSの誹謗中傷)全体を見て正して行く方向性は、僕は大賛成なんだけど、それは立花さんとかSNSとか、そういうところを超えて、地上波も我々コメンテーターも、全部含めて考えなきゃいけないと思うんです」
■いかに法整備していくべきなのか
【青木源太キャスター】「誹謗中傷はSNSを見れば簡単に目に付くところにありますが、簡単に責任を追及できるシステムがまだできていないというのが、法整備上も、プラットフォーム側にもあると僕は思うんです」
【橋下徹氏】「全部の誹謗中傷をパトロールするなんて非現実的。やるのはたった一つで、最後は賠償金。名誉毀損が成立した時の賠償金が低すぎるんですよ」
【住田裕子弁護士】「個人賠償が低いのは、やっぱり真偽不明なものと、確度が高いものがあるから。新聞だったら信用するだろう、テレビだったら信用するだろう、そこでうそだったら賠償金が高くなるんです。SNSとか賠償金の金額が違うのはそれだけ信用度が違うということなんです」
【住田裕子弁護士】「ですけど、SNSは信用度が低いけれど、これだけ拡散して言葉の暴力として、集中的・集団的にくるのであれば、賠償金の金額を高くするというのは、これはありだと思いますね」
【橋下徹氏】「僕は33万だったもん、SNSでの誹謗中傷。新聞・雑誌も200万とか」
【青木源太キャスター】「受けた損害や、誹謗中傷によって亡くなる人がいることを考えたら、やはりもっと厳しくしないといけないですね」
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2025年1月22日放送)
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