2月20日、異例の形で提出された公職選挙法の改正案。
その背景にあるのは兵庫県知事選をきっかけに問題となったいわゆる『2馬力選挙』です。
20日午前、自民党・立憲民主党など、与野党が共同で提出した法案。
【自民党 逢沢一郎選挙制度調査会長】「特に立憲民主党さんに大変ご努力いただいて。(この時期の協力は)かなり異例なことと理解しています」
予算編成で対立しがちな与野党が、異例の協力に踏み切ったのは、あの問題に対する強い“危機感”の表れでした。
■「当選を目的としない選挙」NHK党・立花党首が臨んだ異例の選挙戦
【NHKから国民を守る党・立花孝志党首(2024年10月)】「当選を目的としない選挙に、今回は臨ませていただいています」
去年秋の兵庫県知事選挙。斎藤知事の疑惑が争点となった選挙戦で、NHKから国民を守る党の立花党首が、自身には投票せずに斎藤知事を応援するよう呼びかけるという選挙戦を展開。
いわゆる『2馬力選挙』と呼ばれ、問題となっています。
2月27日告示の千葉県知事選挙でも、NHK党の立花党首が現職の熊谷俊人知事を応援するため出馬すると公表したのに対し、熊谷知事は拒否。
「2馬力選挙」は現行法で禁止されていないものの、本来の選挙のあり方とは異なると各方面から指摘されています。
■兵庫・斎藤知事、石破首相、維新・吉村代表の問題意識は…
選挙で当選した斎藤知事は「2馬力選挙」について、次のように繰り返し答えています。
【兵庫県・斎藤元彦知事】「(選挙では)他の候補のことというよりも、自分自身が何ができるかを懸命にさせていただいた」
(Q.この状況はおかしいと感じなかった?)
【兵庫県・斎藤元彦知事】「本当に毎日毎日、自分が何ができるかを必死でやっていたのが告示後の17日間でした」
選挙制度自体を揺るがしかねないこの事態に京都府知事や滋賀県知事など19人の有志の知事は、「選挙の公平性が損なわれている」として、国に対して対応を求める「緊急アピール」を実施。 さらに石破首相は…。
【石破茂首相(2月4日)】「2馬力の選挙にしても、どう考えてもおかしい」
そして大阪府・吉村知事は…。
【大阪府・吉村洋文知事(2月17日)】「他人を選挙で当選させるために出馬するのは、おかしいなと思いますね」
■「ポスターの品位、2馬力」に与野党共通の危機感
このような動きを受けて異例といえる与野党団結が実現したのです。
【自民党 逢沢一郎選挙制度調査会長】「ポスターの品位保持。昨今のいわゆる2馬力問題。与野党共通の危機感を持っている、国民の皆様は大変な心配をしておられる」
20日に提出された公職選挙法改正案の中身は次のようになっています。
「選挙ポスターにおいて特定の人物を中傷したり、営利目的の内容を掲載することを規制」 さらに付則には、他の候補の当選を目的に立候補する、いわゆる「2馬力」を念頭にした対策も記載されました。
さらに20日午後の国会では、兵庫県の選挙管理委員長が参考人として出席。去年の知事選挙について有権者から「2馬力選挙は法律上問題があるのではないか」との指摘が多く寄せられたと明かした上で、一刻も早い法整備を訴えました。
【兵庫県選挙管理委員会・永田秀一委員長】「兵庫県だけの一過性の問題ではないんじゃないかなと思う。国の法的な形でかっちりと決めていただかないと、私どもではどうすることもできない」
公職選挙法改正案は来週、審議入りする予定です。
■「ポスター」「2馬力」公職選挙法改正案
与野党が提出した公職選挙法改正案の内容をまとめます。
まずポスターについて、特定の人物への中傷など、不適切なポスターを規制するといった内容が盛り込まれました。
そして去年の兵庫県知事選挙で見られたような他の候補の当選目的で立候補する、いわゆる「2馬力選挙」について、今後必要な措置を講じるといった記載がされました。
20日の国会では、兵庫県選管の永田委員長が、「2馬力選挙の規制は、県の条例では限界がある。法律的に禁止してほしい」と発言しました。
■「選挙カーも運動員も2倍になるのはおかしい。規制は必要」菊地弁護士
改正案が出されましたが、実行性はどうなのでしょうか。
【菊地幸夫弁護士】「日本の選挙では、お金のあるなしで差が出ないよう配慮するのが、一つ中心的なものです。お金にものを言わせて、たくさんの運動員や宣伝カーをつぎ込むというのはだめです。例えば、宣伝カーは1人1台。運動員になって報酬を払って使える人の人数も決まっているわけです」
【菊地幸夫弁護士】「ところが”2馬力”でやっちゃうと、立候補者の他にもう一人応援する人がいて、選挙カーは2台、運動員の人も2倍というようなことになると、それはおかしいんじゃないか。法律の規定を潜脱する(くぐり抜ける)ことになって、やはり規制は当然必要なんだろうと思います」
こういった議論が進んでいる背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「今回の公職選挙の改正、まずポスター問題です。夏には参議院選挙もあるので、そこまでに問題を解決しないといけないいうのが、そもそもの出発点だったんです」
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「ポスターのことを検討している途中で、『2馬力』の話が出てきた。これも規制しないといけないという話ですが、こっちはまだ今からどういう法律の立て付けするか議論をして、今国会中に間に合うかどうかというスケジュール感ですが、何とかしないといけないという思いは国会にもあります」
今の時代に合わせたルール作りがこれから急がれます 。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年2月20日放送)