お弁当界では定番の商品「のり弁」。
お手頃でコスパが良いと人気ですが、最近東京では1000円オーバーの“高級のり弁”が次々に登場しています。
そんな中、関西にも新たな「のり弁」の波が押し寄せてきています。舞台裏を取材しました。
■苦い経験生かし売れ行き好調…老舗の「のり弁」
まず向かったのは、4月にグランドオープンした大阪市北区の阪神梅田本店。
デパ地下では、練り物の老舗『大寅』が満を持してのり弁を発売しました。
お値段は789円(※限定1日60個)。小ぶりの玉ねぎ天、しょうが天、ちくわの磯辺揚げなど練り物がてんこ盛りになっていて、テンションが上がります。
しょうがの練り物を食べて、のりとご飯を口に運ぶと…。
薄田ジュリアキャスター:
「油っぽくないから練り物とご飯を合わせて食べたくなるような、すごく相性のいいお弁当です。今びっくりしたのが、お米がすごくもちもちで、練り物とすごくよく合います」
練り物の老舗が一体なぜ、のり弁を始めたのでしょうか。
大寅蒲鉾 営業課長 柏本憲一さん:
「のりがご飯に油っこさを浸透させないためのクッションになっていると気づいたんですよ。それで、ちょっとまぁまぁ厚みのあるのりを探してきまして、今使っています」
普通の練り物だと大きすぎるので、一口サイズにしたり、練り物の隠し味に使う昆布を佃煮にして添えてみたり、試行錯誤を繰り返して完成したのり弁。
その裏には、かつて駅弁販売に参入した時の苦い経験が生きているそうです。
大寅蒲鉾 柏本さん:
「駅弁は、売り上げとしてはしんどかったですね。他社との競合にも完全に敗北と…」
贅沢さを売りに1000円の弁当も作りましたが、結果を出せず、失意の撤退。
そこで今回のデパ地下ののり弁では、価格を700円台に抑え、200円前後の練り物の「ついで買い」も狙う戦略。かつての駅弁と比べ、5割増しの売れ行きという好調なスタートを切っているそうです。
■ミニストップとローソンストア100で“真逆のコンセプト”
さらに、コンビニにも気になるのり弁が…。
大阪府摂津市のミニストップ摂津鳥飼本町店にあったのは、その名も「ずっしり極!大きくなった海苔弁当」600円。
特徴は、容器からあふれそうなほどのご飯。ハンバーグ、シュウマイなど多彩なおかずに、白身魚だけでなくイカフライも盛り込んだ、ガッツリ系のり弁です。ちなみに1174キロカロリーあります。
一方、大阪市北区のローソンストア100北区本庄西店には、真逆のコンセプトののり弁が…。
薄田キャスター:
「のり弁は…これですね。すごくシンプル。のり磯辺揚弁当、磯辺揚げしか乗ってないですね。おおこれは潔い。216円です」
極限まで無駄を削ぎ落としたのり弁、なぜこんな商品が…。
ローソンストア100 次世代事業本部 林弘昭統括マネジャー:
「磯辺揚げがかわいそうだからです(笑)。磯辺揚げは、のり弁とか他のお弁当の端っこにちょこんと乗っかってるやつですから、あえてメインにして表舞台に立たせてあげて、堂々としてもらいたいなと」
同じシリーズの「ウインナーだけ」や、「ミートボールだけ」のお弁当も含め、累計で約180万食というヒットを記録。企画した林さんの社内評価は、うなぎのぼりだそうです。
■45年以上売れ続ける背景に“たゆまぬ努力”
「あれこれ考えずにのり弁一択」というお客さんも多いのが『ほっかほっか亭』。
のり弁は、1976年に1号店がオープンした時からある商品です。
たっぷりのおかかご飯の上に、のりを乗せ、ちくわの磯辺揚げと、白身魚フライを添える現代の「のり弁スタイル」を確立。
45年以上を経た今でも、人気トップ5に入っています。
安くて人気があるとはいえ、消費者の心を掴み続けるにはたゆまぬ努力もあるそうで…。
ほっかほっか亭総本部 古川千夏商品部課長:
「例えばつい先日も白身魚フライを改良しまして、より柔らかい食感であったり、お魚を美味しく食べてもらえるような切り方を工夫したり、かつお節や漬物というのも少しずつ変えていってます」
実はフライにかけるタルタルソースも、2020年に「マヨしょうゆ」に変えていました。これには社内でも賛否両論があったそうですが、お味は…。
薄田キャスター:
「マヨしょうゆ、すごくよく合う、これはご飯が進みますね。このおかかのしょうゆ味と、きんぴらごぼうのしょうゆ味とか、味に統一感が出たような気がします」
改良を重ねて人気をキープし低価格を実現しているのが、ほっかほっか亭の狙いと言えるではないでしょうか。
■海苔の大森屋は「後乗せスタイル」
のり弁に欠かせない「のり」にこだわる企業が、京都にオープンしたのが…。
薄田キャスター:
「のりの大森屋さんのおむすび専門店、ここですね。おむすびがたくさん並んでいる。うわ~どれも美味しそうですね。具がすごく贅沢」
選べる3種ののりが人気の「おむすび」に負けじと、ヒットを狙っているのが、のり弁。
価格は880円(イートイン)と、関西のり弁業界では高価格帯ですが、その特徴は…。
薄田キャスター:
「実は後でのりを乗せるスタイルになっているんです」
贈答用に使われる最上級の有明産のりを後のせで味わう、のり弁当。そのお味は…。
薄田キャスター:
「のりの旨みがすごく強くて、香りもすごく立つし、食感もパリパリで、おかずがなくてもこれだけでもいけちゃいそうなくらい」
おかかはなく、白米の中にのりの佃煮。まさにのりづくしです。
大森屋 営業企画部 植田宏志次長:
「お米にものりにも具材にも非常にこだわりを持ってやっておりますので、そこはあえて880円という値段設定にさせていただきました。食べていただいたお客様から非常にのりがおいしいという声もいただきましたので、やはりそういった声も集めて、今後の商品開発につなげていきたいです」
身近なお弁当の定番「のり弁」。新たな波は、確実に関西にも来ています。
各社がこだわり抜いたのり弁は、安い以外にも様々な魅力にあふれていました。
(関西テレビ5月31日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)