「大阪城3つ分」の金額に驚愕 繊維の街・船場でレトロビルを訪ねる お笑いコンビではない『調査団』の貴重な歴史の舞台へ【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2024年07月19日
【兵動さん】「今回は大阪・船場です。繊維の街ですね。昔行かせていただきました。横に通っているのが中央大通りです。今日は船場からスタートです」
■「アーノルド?」写っている人たちは誰?
兵動さん、写真を見るなり…。
【兵動さん】「関空(関西国際空港)に行かないとあかんのかな…」
海外に行く必要があると思ったようです。
これは1932年(昭和7年)に大阪市中央区で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
実はこの写真、歴史の教科書に登場する人々が写っているんです。
【兵動さん】「えぇ?この中に歴史の教科書に出てくる人物?分かります?まぁ外国の方ですね。誰や?部屋の雰囲気で言ったら、昭和7年やったら洋館か、ホテルか。これは難しいぞ!」
それでは聞き込み開始です。早速、若い女性を見つけました。
【兵動さん】「暑いね、お姉さん。どこに行ってたの?」
【街の人】「仕事で、今お昼なんです」
【兵動さん】「遅いお昼やな。言える範囲で、何のお仕事をしているの?」
【街の人】「アプリ作ってまして」
【兵動さん】「今(時)の仕事や!アプリ作ってるの」
アプリを作っているという女性に写真を見てもらいます。
【兵動さん】「これね、昔の写真と同じところから写真撮りたいんやけど。昭和7年の写真やから誰も生まれてないねんけど。何かで見たことある?教科書に出てくる人が写っているらしいねんけど」
【街の人】「えー、分からない」
【兵動さん】「この方は見たことありそうやなみたいな顔の人、1人だけ挙げてくれへん?」
すると、写っているうちの1人を指さしてくれました。
【兵動さん】「想像で名前もちょうだい」
【街の人】「…アーノルド?」
さらに別の男性にも声をかけてみます。
【兵動さん】「今お忙しい?暑い中、いいですか?こんな写真見たことあります?」
【街の人】「あれじゃないですか。あそこの、何会館って言ったっけ。昔からの古い建物あります。真っすぐ行って、三休橋筋を北の方へ行ったら。(Q.歩いて行けば分かる?)分かると思いますよ。そこだけ異質に古い」
【兵動さん】「へぇ!この写真の中に、教科書に出てくる人が写っているっていいますねん。さっき会ったお姉さんに聞いたら、『この人かな、見たことありそう』(と言っていた)。で、大体、感覚で『アーノルド』っていう名前じゃないかと。どうですか?」
【街の人】「(写真の人物をさし)なんかこの人は、新聞とかで見たような…」
【兵動さん】「えらい男前。感覚で名前つけてもらっていいですか?」
【街の人】「そうやね、ジョージかな」
【兵動さん】「ジョージいただきました。ありがとうございました」
男性と別れて歩き出すと、外国人の男性2人を見つけ、声をかけてみることに。
【兵動さん】「ジャパニーズ?OK?(写真を見せて)誰か分かりますか?」
【街の人】「全員アメリカ人に見えるね。何年の写真?」
【兵動さん】「1932年」
【街の人】「戦前の写真だね。トルーマンか誰かかな…」
【兵動さん】「トルーマン?」
【街の人】「トルーマンって昔の米大統領」
【兵動さん】「どれが大統領?(写真の人物をそれぞれさして)トルーマン?トルーマン?トルーマン?」
【街の人】「おもしろいやつやな!」
【兵動さん】「センキュー!」
ここまで「アーノルド」「ジョージ」、そしてこの中に「トルーマン」がいるのでは?などと、何の根拠もない意見が出てきましたが…さらに聞き込みを続けます。
■界隈には趣ある“レトロビル”が点在
【兵動さん】「『丼池(どぶいけ)ストリート 船場』。このコーナーでも結構、寄らせていただいている。ここは古いお店とかたくさんあるから、こっち(丼池筋に)行ってみよう」
歩いて行くと、見覚えのあるお店がありました。
【兵動さん】「ここ前、寄らせてもらったな。ここは昔すごく生地屋さんでいっぱいやったって言って」
以前も取材した生地店です。お店の人に声をかけてみると…。
【兵動さん】「すいません、前に寄らせていただいたんですけど…」
【ANABUKI 穴吹和昌さん】「また来はったんですか。写真のやつちゃいますのん」
【兵動さん】「そうそうそう。厄介者みたいに!この前はいろいろ教えていただいてありがとうございました。すいません、何回も」
過去の取材を覚えてくれていた穴吹さんに、今回も写真を見てもらいます。
【兵動さん】「これね、昭和7年(の写真)ですねん」
【ANABUKI 穴吹和昌さん(48)】「これまたすごい写真ですね。うちのビルも大正10年とか、もっと前かな。リノベーションして、きれいにして。最近、有形文化財になったとこです」
【兵動さん】「え!ここ有形文化財になってんの!?」
驚いた兵動さん、店の外に出てビルの外観を見上げてみます。
【兵動さん】「ほんまや、めっちゃきれいになってる!窓ガラスとか。見上げてみないと分からんな。いつも小銭探して下向いて歩いているけど、あかん。上を向いて歩きましょう、皆さん。すごい建物やった」
登録有形文化財に登録されたばかりという、1922年(大正11年)築の「丼池繊維会館」というビル。
そんな味わい深い建物に注目していると、お店の先代の方が写真をじっくりと見てくれていました。
【兵動さん】「ずっと見ていただいている」
【ANABUKI 穴吹和昌さん(48)】「こんな広いところは(ここには)ないんですよね。結構この本町(エリア周辺)でレトロビルというのが多くて、南に行けば『大阪農林会館』、こっち(北)の方に行ったら『綿業会館』とか、『船場ビルディング』もありますわ」
【兵動さん】「じゃあ結構、その当時からのビルが建っているということ?」
【ANABUKI 先代 穴吹和夫さん(76)】「会議するようなのは向こうやろな」
【ANABUKI 穴吹和昌さん(48)】「(店の前の通りが)丼池筋というんですけど、そのもう一つ横にね、三休橋筋っていうのがある」
【兵動さん】「まずそこ目指して行くのがいいかもしれない。分かりました」
というわけで、まずは三休橋筋を北へ歩き、レトロビルを訪ねてみます。
【兵動さん】「あー、なるほどな。ちょっと(レトロな)空気感が出てきたね」
■兵動さんが驚いた「大阪城天守閣3つ分」とは?
ひときわ趣のあるビルを見つけました。
【兵動さん】「すごいね。うわー。『一般社団法人 日本綿業倶楽部』。ちょっと行ってみようか?入れるのかな、一般の人も」
と、恐る恐るドアに手をかけて中を覗いてみますが…。
【兵動さん】「(すぐにドアを閉じて)無理ちゃう?すごい重厚感あるよ」
と、言いながらも中に入って行く兵動さん。しばらくすると戻ってきました。
【兵動さん】「受付の方、めちゃくちゃ優しかった。良かった、良かった。すごいよ。空気感が」
中に入ってみると、確かにどことなく厳かな空気が漂っています。
【兵動さん】「あんまり大きい声出したらあかん空気ないですか?」
専務理事の槙島さんが対応してくれました。
【兵動さん】「(写真を)見て、こちらかどうかって、どう思われます?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「私ども(ここ)で撮られた写真でございます。(Q.間違いない?)はい」
【兵動さん】「この中にね、教科書に出てくるくらい歴史的に有名な方が何人か写っていると」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「特にお一人、お名前を言えばすぐに分かるような方がいらっしゃって」
【兵動さん】「(その方を)指さしてもらっていいですか?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「(写真を指さし)この方です」
【兵動さん】「(この人のことは)誰も言えへんかったな。どなたですか?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「リットン調査団ってご存知ですか?あの…コンビじゃなくて」
ベテランお笑いコンビ…ではない方の、「リットン調査団」。
【兵動さん】「コンビしか知らん。藤原兄さんと水野兄さんのリットン調査団」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「…ではなくてですね。昭和6年に起きた満州事変の後に、当時の国際連盟が派遣した『リットン調査団』の団長のリットン卿(きょう)でございます」
満州事変のきっかけとなった柳条湖事件を調査するため、国際連盟から派遣されたのが「リットン調査団」。
アメリカから中国大陸の事件現場へ向かう前に、ここ「綿業会館」へ立ち寄り、日本の有力者と面談を行なっていたのです。
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「私ども『日本綿業倶楽部』といいまして、会員制の社交倶楽部でございまして、その運営をする会館という形になります」
【兵動さん】「社交倶楽部っていうのは、そういう業界の人たちがいろいろお話したりとかするような場所ということですか」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「そうです」
【兵動さん】「(銅像をさし)建てた方がこの方ですか?」
目の前に銅像が設置されていますが、この方は…。
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「現在の『東洋紡株式会社』の当時の専務取締役の岡 常夫さまという方で、『繊維業界の人間が集まれる場所を造れないか』というご意思がありまして、当時のお金で100万円。今の貨幣価値に直しますと、50億円を一人でご寄付された」
【兵動さん】「えぇ!?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「さらに(繊維)業界から50万円を募って、トータル150万円(現在の価値で約75億円)で、この土地と建物と調度品を揃えています。分かりやすくいうと、今の大阪城の天守閣、あれが同じ昭和6年にできているんです。あちらはお城(天守閣)の部分が47万円(当時)だったそうです。ですから、土地もありますけれども、ざっと(大阪城の天守閣)3つ分くらいのお金をかけてこの館ができあがったんです」
【兵動さん】「大阪城×3や」
■館内には装飾の豪華な会員食堂や貴賓室が
会員食堂と呼ばれているお部屋に案内していただきました。
【兵動さん】「うわ!すごいね」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「こちらは1900年初頭のアメリカのホテルとかお屋敷のホールをイメージして造られた、会員食堂と呼ばれるお部屋です。特徴は天井の装飾なんかを見ていただきますと、漆喰と寄木細工でできた“ミューラル・デコレーション”と呼ばれる細工がされていて、非常に豪華に造られています」
【兵動さん】「この天井は当時のまま?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「そのままです」
【兵動さん】「きれいに残っているな~!」
意匠を凝らした細工が美しい天井はまさに豪華絢爛。
さらに、螺旋階段を降りて地下へ行くと、会員が普段使用するバーやグリルがあります。
そして3階には…。
【兵動さん】「おいおいおい…。わぁ…。ここはまたすごいですね。昔の映画に出てくるような」
3階の「特別室(貴賓室)」の扉が開いた瞬間、驚嘆の声を上げる兵動さん。中央に大きなテーブルが置かれた、ヨーロッパテイストのお部屋です。
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「こちらは18世紀のイギリス様式、“クィーン・アン(アン女王)スタイル”という様式で造られているお部屋です。戦前は大阪に皇室の方とか、VIPの方が来られた時にこちらにお招きしてお話していた、そんなお部屋ですね」
【兵動さん】「『ゴッドファーザー』座ってそうな…分からんけど。ちょっと…記念に座っても…」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「ちょっとこのお部屋の家具は…」
【兵動さん】「触れないの?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「はい。家具自体も重要文化財の一つで」
【兵動さん】「これ(いす)も重要文化財なの?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「これもそうなんです」
【兵動さん】「危な…!座ろうとしてた。聞いて良かった」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「こちらはちょっとね、僕らも座ったことがないので」
【兵動さん】「えぇ!一般の方で『中を見たい』という方がいた場合は?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「実は第4土曜日に一般の方の見学会を開催しています。各月の第1・2営業日、(毎月)1日、2日にインターネットでお申し込みいただきまして、抽選なんですが、3カ月後の第4土曜日に見学いただけると。見学だけと、お食事つきの見学会もありまして。どちらかというとお食事つきの見学会の方が、人気が高い」
【兵動さん】「食べてみたいなぁ」
館内見学は抽選ですが、見学料金500円(定員40名)で、日本綿業倶楽部のホームページで受け付けています。特に人気の「昼食付見学会」は、見学料込みで4500円(定員40名)。
それでは、いよいよ写真が撮られた部屋を案内してもらいます。
【兵動さん】「あ、思っていたより広い!すごいな、この部屋も。ここは何というお部屋ですか?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「ここは談話室です。17世紀のイギリス様式、“ジャコビアン・スタイル”という様式でできたお部屋です」
【兵動さん】「これは何ですか?」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「こちらは約1000枚のタイルが貼られているんですが、『泰山タイル』というもので、実は日本の京都で焼かれたタイルです。(京都の)東山に泰山製陶所というところが昔ありまして、当時は非常に多く使われたタイル。ただ、これだけの柄が揃ったものはなかなか世の中にないので」
イギリス様式のお部屋ですが、意外にも国内で作られた貴重なタイルが使われていました。
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「私どもも、なぜうちにリットン卿ご一行がお越しになられたかという明確な理由は分からないんですけども、リットン卿はイギリスの方なんですね。(綿業会館は)イギリス(様式)の空間ということもございますし、あと、リットン卿のお父さまがインド総督をされていたんです。こちらに綿(の枝)を飾っていますけども、当時は多くの綿花がインドから輸入されていたということで、そのつながりでお越しいただいたのもあるかなと」
それでは撮影です。
【兵動さん】「はい、チーズ」
【兵動さん】「歴史というものをずっと感じられるというか。(外からは)何の建物だろうと思いますけど」
【日本綿業倶楽部 専務理事 槙島昭彦さん】「非常にシンプルな建物なんですけど、中に入るといろんな様式が(見られる)」
【兵動さん】「皆さん、生で見てください。本当にすごく歴史を感じます。貴重な経験をありがとうございました」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年7月12日放送)